2013年8月14日
10日の土曜日、高知県四万十市と山梨県甲府市で、40.7度と今年の最高気温を記録した(8月11日現在
※1)。両市以外にも、山梨県甲州市で40.5度、群馬県館林市でも40.1度と40度越え記録し、西日本を中心に猛暑となった。聞いただけで汗が滴り落ちそうだ。ところが意外な事に、40度を超えたのは、今年に入って初めてで実に6年ぶりの事だという。40度と言えば、体温ならば生き死に関わる“高熱”だ。体力のない子供や浪人にとっては、危険極まりない気温である。「暑さ寒さも彼岸まで」と言われる秋の彼岸(9月20日〜26日)までまだ40日近くもあるのだから、考えただけでもゾッとする。ここの所毎日気にして見ているテレビの週間天気予報では、有難くない事に、ここ金沢でも連日30度越えを予報している。
しかし、今の天気予報は有難いものである。晴れや雨などの空模様から、降水確率や最高・最低気温なども予報してくれる。しかも、その日や翌日の時間毎の予報に加え、1週間先までの毎日の予報を、中々の精度で的中させている。したがって、天気予報を良く聴いて、万全の予防対策を怠らなければ、基本的に夏場の熱中症も避けられる。熱中症を甘くみたり、自分の体力を過信したりして天気予報を無視すると、とんでもないことになってしまう。それ位、今の天気予報は当たる確率が高い。
ところが、以前の天気予報は、中々的中率が上がらず、外れることが多かった。しかし、気象に関わる技術者たちの努力によって、高精度の観測機器が開発・配備されたり、これまでの大量の観測データを高性能コンピューターなどで解析したりすることにより、格段の進歩を遂げた。ただ、どんなに科学技術が発達したとしても、予報には “限界”がある。気象と切っても切り離せない“海”や“大地”の事も、“空”の事も、まだ知らない事ばかりなのだから、“限界”があっても、ある意味仕方がないことである。
この“限界”、人間の手で作られたどんな機械や仕組みにも、そして自然界の万物にも、必ず在る。ましてや、人間が自由にコントロール出来ない自然現象を今の状態から予測する、となれば尚更である。ただ、その限界を正しく理解して、上手く利用することが、賢い知恵だと言える。車に代表される機械などは、皆そうやって使っている。先日、「誤報」と報じられた「緊急地震速報」もそんなシステムの一つであるのに、どちらかと言えば、間違いばかりがクローズアップされて、上手く使われているように思えない。
6年ぶりの40度越えを記録した日の2日前、8日の16時56分ごろ、気象庁は、「奈良県でマグニチュード7.8、最大震度7の地震が発生した。九州から関東にかけて34都府県に震度4以上の揺れが襲う」と緊急地震速報を出した。私の携帯にもメールが入った。しかし、入ったメールが「奈良県地方、最大震度5強」と小さめに出ていたことに加え、メールを受けた場所が東北地方だったこと、続報メールが無かったこともあって、その後の様子は知らないままだった。夜のニュースで誤報であったことを知ったのだが、たまたま、次の日地震防災関連のセミナーに参加していて、講師からその話題が出た。
講師の話だと、NHKテレビでは高校野球の中継中に緊急地震速報関連のニュースを流しているのに、予報された地震の震源域に近い甲子園では何事も無かったかのようにプレイを続けていて、その違和感が何とも言えなかったという。セミナー出席者の中にもテレビを観ていた人がいて、「観ていてどうでした?」との講師の質問に、同じような事を答えていた。もしテレビを観ていたら、私も同じように感じただろう。地震防災関連のセミナーだから、地震防災に関する意識の高い人ばかりであることは確かだが、少し考えれば、誰もが同じ思いを抱く筈だ。
3.11からまだ2年と5ヶ月しか経っていないのに、「想定外を無くせ!」の掛け声は、既に掛け声倒れに終わってしまっているらしい。緊急地震速報には、「直下型地震では、震源地に近い所は間に合わない」という“限界”は確かにある。しかし、激しい揺れが到達する前に“揺れの大きさ”や“到達時間”を知ることが出来れば、時間に応じた予防行動がとれる。予防行動がとれれば、それだけ助かる人が増える筈である。ましてや、甲子園球場の様な所で、実際に震度6弱以上の揺れに前触れなく襲われたら、パニックになることは必至である。
「想定外を無くす!」という意味では、今回の様な状況――試合中に大きな揺れに襲われる――は想定されている筈で、「試合を中断する」とか「観客へアナウンスする」とかの行動が取られてしかるべきなのに、一切なかったようだ。という事は、誤報ではなく、実際地震が起こり大きな被害が出たならば、また「想定外の…」の逃げ口上が使われることになる。
緊急地震速報は、「できる限り早く地震が起こったことを知らせる」に主眼を置いているため、今の科学技術の粋を集めたシステムであっても、誤差や誤報という限界がまだ残されている。しかし、例えそう言った限界があったとしても、利用すべきだと考える。もし仮に、今回の様な誤報であったとしても、実戦さながらの訓練が出来た、とプラス思考で捉えるべきだ。その上で、改善点が見つかれば、こんなに素晴らしい訓練は無い。
そんな視点で今回の事を振り返ると、報道関係の姿勢も嘆かわしい限りである。テレビも新聞も気象庁の誤報ばかりを取り上げ、何事も無かったかの様に試合を続けたことで見えてきた甲子園球場の、或いは主催者の地震防災に対する課題を少しも取り上げていない。これが今の“報道の限界”なのかもしれない(最近この限界がどんどん低下しているのが気きになるところ)。限界を理解して利用する、是非緊急地震速報もそうあってほしいものである。
※1. 8月12日、四万十市で観測史上最高気温となる41.0度を観測した。
【文責:知取気亭主人】
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