2013年10月3日
球団創設9年目の楽天が、見事ペナントレースを制し、今シーズンのパ・リーグ優勝を決めた。楽天は、打撃の神様と言われた川上哲治氏や400勝投手の金田正一氏が活躍していた頃から野球ファンだった私が、球団の合併や名前の変更などを除いて、創設の時から知ることとなった初めての球団である。球団創設の頃のドタバタもあって、最初は“寄せ集め集団”と陰口を叩かれることも多く、“お荷物球団になってしまうのではないか”と心配して見ていたが、これでやっと本当の意味でプロ野球チームの一員になった、と拍手を送っている。創設当初の惨めな姿からは、優勝など到底及びもつかなかったからだ。そんな弱小球団を見事リーグ優勝させた、選手と星野監督、そしてスタッフ全員に「天晴!」である。
2003年から翌2004年にかけて、大阪近鉄バッファローズとオリックス・ブルーウェーブの合併に端を発するプロ野球再編問題の中で、後に逮捕されることになったホリエモンこと、堀江貴文氏が社長を務めていたライブドアの球団創設騒動も加わって、野球ファンをやきもきさせていた時期があった。すったもんだの末、結局、2004年の春、楽天の新規参入が認められることとなり、ここに東北楽天ゴールデンイーグルスが誕生した。そんな生みの苦労とも言うべき難題を乗り越えて誕生したことに加え、地方都市を本拠地にする球団だということもあって、創設以来注目し、加えて心配もし、密かに応援していたのだが…。そんな心配が見事に当たり、ここに来るまでは、とても順風満帆と言えるような道程ではなかった。
初代御監督は中日で打者として活躍した田尾監督だったが、確か、そのシーズンの成績はプロの野球チームとしてかなり恥ずべき成績だった、と記憶している。調べてみると、最終成績は38勝97敗1分(勝率.281)で、ゲーム差は、5位の日本ハムとでさえ25ゲーム差、レギュラーシーズン首位のソフトバンクとはなんと51.5ゲーム差も付けられた、とある。こんなにひどい成績は、他に記憶がない。開幕前から、“寄せ集め集団”と言われ、シーズン半ば頃からは、「100敗するのではないか」と囁かれていたらしい。結局そこまでいかなかったが、リーグのお荷物、と言われても仕方がない成績であることに違いは無い。
翌年、二代目として野村監督を迎え、徐々にではあるが、他チームと対等に戦える力を付けていった。野村監督最終年となった2009年には、初めて、そしてこれまでで唯一のクライマックスシリーズへの進出とAクラスを決めた。しかし、その後は再び低迷は続き、翌年ブラウン監督が1年務めたが成績は振るわず、3.11東日本大震災が発生した2011年に星野監督に引き継がれても、「優勝」の二文字は遠く、この3年間は連続してBクラスに低迷していたのだが…。
球団創設9年目の今年、また星野監督が就任した3年目の今年、遂に優勝という栄冠を掴むことが出来た。振り返ってみれば、マー君の神がかり的な大活躍や新加入の外国人二人の活躍などもあって、投打のかみ合った、素晴らしいチームだった、と言って良いだろう。開幕前の戦力分析で、誰がこのチームの優勝を予想していただろうか。確か、あまたいる野球解説者の中で、3位に予想していた人がいたのを覚えているが、その他は殆どがBクラスだったと記憶している。私も、昨シーズの戦いぶりを見ていると、大リーグに移籍した岩隈の抜けた穴を埋めきらないでいただけに、今年もBクラスかなと悲観的な見方をしていた。加えて、ワールドベースボールクラシック(WBC)でのマー君の不調ぶりを春先に見ていただけに、彼のこれほどまでの活躍も全く予想できなかったのもある。いずれにしても、良い意味で、全く予想を裏切ってくれた。嬉しい限りである。そして、違う意味でも楽天の優勝を喜んでいる。
違う意味とは、地域の活性化だ。昨年のパ・リーグ覇者となった日本ハムファイターズは北海道の札幌市を本拠地とし、今年の楽天は宮城県仙台市を本拠地としている。こういった地方都市を本拠地としている球団が優勝するというのは、とても良いことだ。地方活性化の起爆剤にもなるし、ヒト、モノ、カネ、情報の全てが首都圏に集中する歪を、ひょっとしたら是正するエネルギーを持っているのではないか、と期待もできる。
地方の球団が常に優勝に絡むように強くなれば、まずファンが増えること請け合いだ。そうすれば、必然的に、本拠地周辺では経済活動が活発になる。すると、新たな雇用も生まれることになるだろう。また、地元の子供達にも目の前で夢を与えられるし、若者の地元離れを防ぐことにも繋がるかもしれない。若者が地元に残ってくれれば、私が常々抱いている、「高校までは地元の公共サービスを使って育て、都会の大学に通わせる学費は地方に住む親が出し、やっと親元に帰って地元に税金を落とす年齢になった、と思ったら都会暮らし。だったら、ふる里納税は強制的にせよ!」の過激な思いもしなくて済む。
難しいことは置くとしても、時代劇の中で戦国時代が面白いのは、日本各地に力のある武将が群雄割拠していたからに他ならない。少しでも油断をすると敵国に滅ばされてしまう、そんな緊張感も魅力の一つである。野球もそんなところがなかったら、面白くない。また、同じような視点に立てば、都市間の健全な競争も必要なのだと思う。
そう考えると、楽天の優勝は、仙台や東北の活性化に向けて、格好の起爆剤になったに違いない。勿論、3.11東日本大震災の被災地にとっても、何よりの励みになったことだろう。本当に、楽天優勝おめでとう!
【文責:知取気亭主人】
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ニラ
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