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知取気亭主人の四方山話
 

『伊豆大島の大雨』

 

2013年10月23日

報道されているように、大型で強い勢力の台風26号によってもたらされた大雨で、16日未明、伊豆大島に甚大な被害が発生した。総務省消防庁の発表に依れば、土石流発生から1週間経った23日朝9時現在での被害状況は、死亡した人は29名にも達し、未だ安否の確認できていない行方不明者が18名もいる。小さな島にとっては、物凄い被災率だ。大島町の公式サイトに掲載されているデータに依れば、今年4月1日時点での人口が8,213人だというから、死者・行方不明者は島民の0.6%にも達する。

今回このような痛ましい災害が発生した最大の要因は、16日午前8時20分までに観測された、伊豆大島にとって史上最多と言われる24時間降水量だ。その量は、何と824oだという。気象庁のデータでは、次の図表に示す様に、31年前の台風18号と前線による大雨712oを除けば、今回が如何に突出した降水量だったか良く分かる。

  
気象庁データより作成

ただ、824oという降水量の数値だけでは、この大雨がどれ程凄まじいか、ピンとこない人も多いだろう。そこで、もう少し身近なものに置き換えてみる。計算しやすいように100m2(30坪)の戸建て住宅に住んでいると仮定する。すると、敷地には、たった24時間で

100 × 0.824 = 82.4 (m3:トン)

もの雨が降ったことになる。どこにも流れ出なければ、家全体が0.824m水没したことになるのだが、全てが雨樋を伝い水路を経て川に流れて行くとすれば、川の増水は火を見るよりも明らかだ。

次に、被災地にはどれ程の雨だったか、違う見方もしてみよう。18日の朝日新聞朝刊に依れば、土石流の被害は、幅約950m、長さ約1200m、114万平方メートルに及ぶという。この範囲に降った24時間降水量は、どれ程になるのだろうか。

114 × 10,000 × 0.824 = 939,360 (m3:トン)

凡そ94万トンにもなる。50mプールの容量は、長さ50m、幅22m、深さ1.7mとすると、1,870m3である。すると、24時間で土石流被災範囲に降った雨は、50mプールに換算して、

939,360 ÷ 1,870 = 502.33 (杯)

と凡そ500杯分にもなる。そして、次の計算が示す様に、

24 × 60 ÷ 502 = 2.9 (分)

と3分にも満たない短時間に50mプール1杯分もの量が降ったことになる。それが引っ切り無しに24時間も続くのだから、堪ったものではない。加えて、観測史上最多の24時間降水量を観測したその前後の時間も、強い雨が降っていたのだから…。

こんな風に考えると、今回の災害では発令されなかった「特別警報」だが、各方面から声が上がっているように、運用基準の見直しや柔軟な運用が是非とも必要だ。今回伊豆大島で観測された判別基準となる降水量は、3時間降水量も48時間降水量も、「50年に一度の大雨」という大雨特別警報の指標を大幅に超えていたという。ところが、もう一方の指標である広がりについては、「日本列島を5km四方の格子に分けた場合に、10格子以上該当する(3時間降水量の場合)」が満たしていなかったという。しかし、そもそも面積が91km2しかない伊豆大島は、その指標に該当する筈もなく、どんなに激しい雨だったとしても、端から特別警報は発表される事は無かったのだ。伊豆大島に限らず、島嶼国の日本にはそんな所が一杯ある。また、これだけゲリラ豪雨が頻発している現状を考えれば、「10カ所以上に…」は、ザルで水を掬う様なものではないだろうか。一日も早く改善をしてほしいものである。

もうひとつ、日降水量の1〜20位までのグラフも示しておこう。グラフでは分かりにくいが、今回伊豆大島で観測された24時間降水量824oを超える日降水量が観測されたのは、過去たったの2回しか無い。高知県魚梁瀬の851.5o(2011年7月19日)と奈良県日出岳の844o(1982年8月1日)である。これを見ても、今回の大雨の凄さが分かる。

  
気象庁データより作成

ところが、行方不明者の懸命な捜索がまだ続けられているというのに、今また台風27号が本州に近づきつつあり、被災地が再び大雨に襲われるのではないかと心配されている。更に、台風28号も27号に沿う形で北上することが予想されていて、両台風がどのように影響し合うのか、予想もつかない状況だ。これ以上、被害が拡大しないことを願うばかりである。

【文責:知取気亭主人】

  
こんな空模様になったら要注意

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