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2013年10月30日
日本人のブランド好きには定評がある。バブルが弾ける前の海外旅行で日本人が高級ブランドのバッグを買い漁っていたのはつとに有名で、仲間内では、今でも語り草になっている。その名残なのだろう、金沢辺りでも、ブランド品のバッグを持っている女性を結構見かけることがある。また、女性ばかりではない。男性でも、日本人のブランド志向は強い。女性がバッグならば、男性は差し詰め腕時計だろう。それを裏付ける様に、今年になって、購買マインド復調の兆しなのか高級腕時計を買い求める客が増えている、と暫く前に報じられていた。
ブランド好きは、身に付ける物ばかりでもない。私の好きな酒でも、――私から言わせるとそのブランド好きが災いしているのだが――“たかが酒”に何万円もの値段が付いている銘柄がある。酔っぱらってしまえばどれも同じ酒なのだが、「○○をこの間飲んだが、やっぱり違うね!」と、本当は大して違わないのに、有名な高い酒を飲んだ事を自慢したくなるらしい。かく言う私も、「酔っぱらう為に何万円も出すなんて馬鹿らしい!」と思ってはいるものの、その一方で、「話のタネに一度は飲んでみたい」と密かに思っているのも事実だ。
そんな日本人のブランド好きを逆手に取った商売が、いま世間を騒がしている。阪急阪神ホテルズの食材・産地偽装だ。社長は「意図的な偽装ではない」と記者会見で語っていたが、我々庶民の感覚とは相当ずれている印象を拭えない。利用者の心情に油を注いでいるような記者会見だったが、“倍返し”に会う様な事にならなければいいのだが…。
ところで皆さんは、今回の騒動で報じられている「レッドキャビア」や「とびこ」と聞いて、それがどんな食材か直様分かっただろうか。「クラゲのレッドキャビア添え」のメニュー料理に使われていたのが「レッドキャビア」ではなく実は「とびこ」だったというが、私にはどちらも初めて聞く名前で、何がどう違うのか良く分からない。キャビアは黒っぽい魚卵だ、とばかり思っていたら赤色もある事を知って、それだけでビックリしている。しかも、「キャビア=チョウザメの卵」もバカの一つ覚えの様に信じていたが、「キャビア」と付いていてもチョウザメとは関係のない卵らしく、二度ビックリだ。尤も、ヨーロッパでは魚卵のことを総称して「キャビア」と呼んでいる地域もあるというから、「レッドキャビア」そのものが偽称、と言う事ではないらしい。
では何の卵かと言うと、「レッドキャビア」はマスの卵で、もう一方の「とびこ」はトビウオの卵だという。映像で見る“両者の見た目の色”は似たようなものだが、粒の大きさは随分違っていて、「レッドキャビア」の方が約4ミリもあるのに比べ、「とびこ」は約1.5ミリしかないらしい。約4ミリと言えば、サケの魚卵であるイクラと同じ位の大きさだ。流石親戚である。
そんなことを考えると、この料理を食べた人には申し上げにくいが、これほど大きさが違えば、「レッドキャビア」がサケの親戚であるマスの卵だと知っている人なら、容易に見た目で判別できた筈である。ところが、私も含め殆どの日本人もそうだと思うが、恐らく、皆さん「レッドキャビア」が何の卵か知らなかったのではないだろうか。(多分)一般的にはそんな名前で流通していないのだから、偽装を見破れなくても仕方がないのだ。ただ、偽装をしてしまう最大の要因である“仕入れ値”にも大きな違いがあって、粒の大きさに比例している訳ではないだろうが、「とびこ」の値段は、「レッドキャビア」の1/3程に過ぎないという。これだけの差があれば、誘惑に駆られる筈である。
しかし、粒の大きさは兎も角として、どちらも同じ魚卵なのに、値段の違いほど素材そのものの味も違うものなのだろうか。果たして、「レッドキャビア」は大枚はたいて食べるほどの旨い食材なのだろうか。食べたことが無い庶民の“負け惜しみ”を言わせてもらえば、答えは否だ。
これまでに「素材の間違いを客から指摘された」という報道も無いし、生の卵に最初からハッキリとした味がついているとも考え難い。したがって、食感を除けば、多分、両者に大した違いは無いのだと思う。加えて、今回の料理が、素材の持つ味を生かす調理方法が多い日本料理と比べると、どちらかと言えばソースなどが存在感を示す西洋料理だったことも、素材の違いを分かり難くしていたのだろう。しかし客の“目と舌”を鈍らせた最大の要因は、「…キャビア」という高級食材を食べた、という優越感だったに違いない。また、「一流レストラン」というブランドも、味覚を鈍らせるのに一役も二役も買っていたのだろう。結果的に、そういった優越感をくすぐることに神経を注いだばかりに、偽装に走ってしまったのだろう。
そう考えると、客は馬鹿にされたものである。また、苦労して確立してきた各地の産地ブランドも軽んじられたものである。
「レッドキャビア」以外にも、エビやネギ、ソバや豚肉などもメニューと違う材料や産地の物を使っていたと報じられているが、料理の腕に自慢があるのであれば、さほど食材も産地も選ばないと思うのだが…。
【文責:知取気亭主人】
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カラスウリ
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