2013年11月13日
ぼちぼち雪の便りが届く季節となって来た。ひとしきり掻いた汗とも縁遠くなり、夏の間シャワーで済ませていた入浴も、10月の半ば辺りから湯船に浸かる本来のスタイルに戻している。夏真っ盛りの頃には水風呂に入ったこともあるが、所詮は暑さしのぎに過ぎない。矢張り、今頃から春先までの季節に打って付けの、ノンビリと湯船に浸かり体を温める入り方には、到底敵わない。特に、出張などでビジネスホテルに泊まる時などは、真冬でもシャワーのみで済ませてしまうことが多く、俄然我が家の風呂が恋しくなる。LL〜LLLサイズの体が禍して、それでなくても窮屈なユニットバスは、お湯を張って湯船に浸かる意欲を全く奪ってしまう。その反動もあって、出張から帰り、我が家の湯船に浸かった瞬間、私にとって至福の時を迎えることになる。「日本人で良かった!」を実感する瞬間でもある。勿論、風呂上がりの一杯も…、ではある。
私は大して長風呂好きではないのだが、今頃の季節は、湯の温度を38〜40度に設定していることもあって、5〜10分ほどは湯船に浸かっている。その程度だとのぼせることはない。ただ、余りに気持ちが良くて、たまに浸かったまま眠ってしまうことがある。危険水域に近づいた歳もあってか、余り長く入っていると、以前紹介した「シルバー川柳 誕生日 ローソク吹いて 立ちくらみ」(社団法人全国有料老人ホーム協会+ポプラ社編集部編、株式会社ポプラ社刊)の川柳を真似て、妻が「湯加減どう?」と冗談半分で聞いてくる。「晩度(ばんたび)聞くな わしゃ大丈夫!」と、こちらも冗談半分で返すのだが、眠りたくなるほどの気持ち良さだ。
しかし、寝てしまっては、いつ何時溺れてしまうか分からない。それもあって、湯船に浸かるのを再開した辺りから、眠気を防ぐ方法を探していた。そして、最近良い方法を思い付いた。その方法とは、お湯に浸かりながら、湯に浮かぶ汚れを掬うことだ。防虫ネットが張られた、卓球のラケットほどの大きさの網で、体毛などを掬うのだ。
この作業の良い所は、眠気を遥か彼方に追いやる事が出来るばかりでなく、風呂の湯も綺麗に出来る点だ。加えて、新しい発見もある。発見の一つは、体の汚れを良く洗い落としたつもりでも意外と洗い落とされていない、ということだ。私は良く一番風呂に入るのだが、注意して見ると、一番風呂でも結構体毛が浮いている。お湯を張る前の湯船そのものに前の晩の汚れが付いていたのだろう、と思っていたのだが、どうもそうではないらしい。体を洗う前に浸かった時には、掬い取る様な汚れは殆ど無い。ところが、体を洗い流した後に入ると、結構が浮いているのだ。特に、髪の毛が多い。勿論、体を洗っている時には、湯船に蓋をしている。「なんで?」と、妻と娘に投げてみた。すると、間髪入れずに、「洗う順番が悪いよ!」と指摘されてしまった。
私は、まず体を洗い、次に髭剃りと洗顔をする。そして最後に頭を洗うのだが、彼女たちは、「頭が先でしょ!」と口を揃えて異を唱えてきた。汚れは上から順番に洗い落とすのが常套だという。「確かにそうかもしれない」と、次の日、彼女達の言う通り、頭→顔→体の順番で洗い、湯船に浸かってじっくりと観察してみた。
確かに、いつもよりは少ない。しかし、負け惜しみを言わせてもらえば、全く無い訳ではないし、加えてまだ試験回数も少ないから、断言はできないと内心思っている。でも、「体にくっ付いた髪の毛を洗い落とすのに理に叶っているのは、どっちだ?」と問われれば、残念ながら、「上から順番に…」の方にも思えてきた。どうやら、慣れ親しんできた順番を変える時が、ついに訪れたのかもしれない…。
洗う順番はさて置いて、もう一つ新しい発見がある。それは、「私の詳しい観察があったればこそ」なのだが、(多分)白髪は黒髪に比べて単位体積重量(比重)が軽い、という驚くべき(?)事実である。何故、そんなけったいな発見をしたかというと、ロマンスグレイの私は白と黒、両方の頭髪を供給できるのに加え、両者の漂い方に違いが有ることに気が付いたからだ。驚いたことに、白髪はほぼ100%浮いているのに、一方の黒髪は、水中を漂っているものが半分近くもある。同じ頭髪なのに、である。
ネットで調べたり、娘が美容院に行った時に聞いてもらったりしたところ、色素が抜けた分軽くなっているのではないか、との意見を得た。私も、多分そうだと思う。ただ、結論付けるのに、少々不安も残る。それは、水中に漂っている白髪は極めて見つけ難く、本当は黒髪と同じように漂っているのに見つけられないだけではないか、という不安だ。その不安が一層大きくなったのは、孫娘と一緒に風呂に入った時だ。
孫娘に、「お風呂を綺麗にしようね」と言いながら、「トイレのカミサマ」ならぬ「お風呂のカミサマ」の作り話をして、髪の毛を掬わせていた。すると、私がもう無いなと思って終わろうとすると、「おじいちゃんここにも!」と言って、私の手を取り掬わせる。それが、1本や2本ではないのだ。どうやら、私が見逃しているらしい。ただ、未だ水中を漂っている白髪は見つけていないから、「白髪は黒髪より軽い」の私見が覆った訳ではない。訳ではないのだが、揺るぎない確証を得ておきたいと思っている。後、2、3度、「お風呂のカミサマ」の手を煩わせるが、孫娘の眼を借りて確認しておくことにしよう。尤も、“すくう”のも“すくわれる”のも“カミ”だから気にすることはないか!
【文責:知取気亭主人】
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メマツヨイグサ(ツキミソウ)
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