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知取気亭主人の四方山話
 

『不安な審議不足』

 

2013年12月11日

新聞やテレビを賑わしていた特定秘密保護法が、12月6日深夜、参議院でも可決され、とうとう成立した。政府は今臨時国会の会期内に成立させたい何か特別な理由があるのではないか、という穿った見方をしてしまう程、慌てふためく審議だった。特定秘密保護法案が提出されたのが10月25日だったというから、提出から成立までの日数が僅か40日程しかないハイスピードぶりだ。

テレビニュースでもやっていたが、小泉政権の時に解散までして法案を通した郵政民営化と比べると、その審議時間の少なさは際立っている。民主党の海江田代表の記者会見内容から抜粋すると、郵政民営化の衆議院での審議は129時間だったのに、今回の法案の衆議院での審議は、たった45時間50分で強行採決が行われたという。僅か3分の1程だ。なぜこんなに急ぐ必要があったのだろうか。そうしなければいけない理由は何だったのだろうか。

しかも、法案に反対するデモが各地で起こり、ジャーナリストや弁護士などが反対声明を出すなど、広く国民がその審議に注視していた法案だったのに、衆議院の採決は見た目で大勢を判断する起立方式で行われたため、各国会議員が意思表示した夫々の賛否の記録が残らないのだという。そんな軽い法案ではないのに、随分手軽な方法で採決したものである。何か引っ掛かる。

一方の参議院は、記名投票で行われたため、賛成や反対、或いは棄権などの個々の投票行動が明らかになっていて、新聞にも議員一人ひとりの名前と共に投票行為が記載されている。庶民の感覚としては、「重要法案の審議であれば記名投票が当然の事で、採決の内容(最低でも賛成○○人、反対××人、欠席△△人など)を記録として残すべきだ」と思うのだが、国会ではそういった事は決められていないのだろうか。もしそうだとしたら、国会運営は庶民の感覚と随分ずれている、という事になるのだが…。

ところで、国家・国民のことを考えれば、法律そのものは、外交上、或いは防衛上、実際必要なのかもしれない。とは言うものの、現行制度ではどうしてダメなのかも、実のところ良く分からない。ただ、仮に必要だとしても、十分な時間を掛けて審議してもらいたかったし、多くの国民が抱いている不安や懸念を払拭するような、丁寧な説明がもっと必要だったと感じている。衆・参両院の国会での審議も、国民への説明も決して十分ではなかったし、その拙速ぶりは、逆に多くの国民の懸念を増幅させる結果になってしまったのではないだろうか。

また、反対する人たちが心配している“キナ臭さ”を助長するような発言が、与党幹部の口から出てしまい、抱いていた懸念は益々強くなってしまった感がある。テレビや新聞で度々報道されている、自民党の石破幹事長の、「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらない」との発言だ。少し皮肉を言わせてもらえば、選挙の度に繰り返される選挙カーでの絶叫戦術は、それこそ選挙の度に庶民が被害者になっていて、政治家の十八番だと思っていた。しかし、それが「テロ行為とその本質においてあまり変わらない」となると、ボリュームを上げて名前を連呼する候補者は、成立したこの法律で取り締まられることになるのだろうか。

それは冗談だが、反対意見に対し、「反対デモばかりしていると法律で取り締まり対象となる凶悪犯と同一視をするよ」と脅かしているようなもので、頂けない。石破氏の真意はそんな所にない、と願ってはいる。しかし、国会審議の短さや国民への説明不足を考えると、どうしても穿った見方をしてしまう。

気になって、8日の新聞に掲載されていた法律の全文に目を通してみた。難しくて、正直良く分からない。しかし、第二章の「特定秘密の指定等」を読むと、良く言われているように、特定秘密としての“指定の有効期間”が、行政機関の長の裁量で「5年を超えない範囲」からスタートして5年毎に延長することを繰り返し、最長30年まで指定延長することができ、それ以降も内閣の承認を得た場合には最長60年まで延長できると書かれていて、余りの長さに驚いてしまう。保護された秘密に関わった人が存命中に公開されるからこそ間違った事は出来ない、襟を正して国家・国民の為に働くのだ、と考えれば、30年程度が限度ではないだろうか。そして、秘密保護法のアンチテーゼとしての情報公開が揃って初めて、車の両輪として働くのではないか、と思っている。

この法律は今月中にも公布され、公布から1年以内に施行されることになる。この1年の間に、安倍首相には是非とも、多くの国民が抱く懸念を払拭できるよう、時間を掛けて丁寧な説明をしてもらいたい。そして、心配している“キナ臭さ”が杞憂に過ぎない事を証明して欲しいものである。

【文責:知取気亭主人】

  
満天星

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