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知取気亭主人の四方山話
 

『今年もご愛読ありがとうございました』

 

2013年12月25日

11年目の今年も、何とか無事に、一年締めの四方山話を迎える事が出来た。毎年のことではあるが、365日もあるのに、一年はあっと言う間に過ぎてしまう。しかし、時の進み具合に比べると、3.11東日本大震災の被災地復興の歩みは、何とも遅い。あの衝撃的な日から早くも2年9ヶ月が過ぎたというのに、まだ27万7609人もが避難生活を余儀なくされている(11月時点、12月4日復興庁発表)。また、これまでに総務省消防庁がまとめた死者は1万8703人、行方不明者は未だに2674人にも上る。しかし、腹立たしい事に時間だけは確実に過ぎ、早くも3回目の冬を迎えている。被災地では、希望を持って新年を迎えられる人が増えてきているのだろうか。心配だ。被災者の皆さんに一日も早く平穏な生活が戻ってくることを、願ってやまない。

ところで、一年を振り返ってみると、今年もいろいろなことがあった年であった。明るい話題では、富士山の世界文化遺産と和食の世界無形文化遺産への登録や2020年のオリンピック・パラリンピックを東京に招致できたこと、そして被災地の人々を勇気付けた楽天の優勝が印象に残っている。一方、暗いニュースとしては、伊豆大島に代表される大雨災害やフィリピンを襲った台風30号による未曾有の被害が、悲しい記憶として刻まれている。また、食材偽装や猪瀬都知事の5千万円疑惑に端を発した辞任騒動は、国民を呆れせている。

そこで、これまでと同様、一年間書き綴った「四方山話」を紐解き、印象深い出来事を拙い狂歌で振り返ってみたい。

三本の 矢の行き先は 不透明 四月(はる)に当たるか 倍返しの的

昨年暮れに政権に返り咲いた安倍首相は、「三本の矢」と称する経済政策を打ち出した。第一が大胆な「金融緩和」、第二の矢が機動的な「財政出動」、そして第三の矢が「成長戦略」だ。アベノミクスと呼ばれるようになったこの政策により、対米ドル80円前後の超円高で推移していた為替レートも105円の声が聞こえて来るほどの円安に振れ、一部業種に偏っているきらいもあるものの、多くの企業で業績改善が見られているらしい。更に、この一年で、閉塞感に苛まれていた消費者マインドも随分と改善されたようだ。それもあって、高級腕時計など高額商品の売れ行きも好調らしく、政府の狙い通り、法人税などの税収も久し振りに増えてい るという。ただ、対GDP比214%まで積み上がった公的債務問題の解決も喫緊の課題であるのに加え、来年4月に訪れる消費税増税がどのように影響するか、増税後もこの好調さが続くのか続かないのか、不透明感は拭えない。

10月1日、安倍首相は、来年(2014年)4月に、消費税率の現行5%から8%へ引き上げを決定した。年明け3月までは土地や住宅、或いは車など高額商品の駆け込み需要が見込まれるが、4月以降にその反動がどの程度出るのか不透明で、市場は固唾をのんで見守っている。これまでの好景気観を一気に吹き飛ばしてしまう様な、“倍返し”の的を当てなければいいのだが…。

ブランドに 優越感を くすぐられ 鈍る味覚に 緩む懐

下げるなら ドサクサ紛れ 今でしょう 我も我もと 偽装の謝罪

今年は、阪急阪神ホテルズの食材・産地偽装問題を発端に、全国の有名レストランで食材偽装が発覚し、謝罪が相次いだ。阪急阪神ホテルズ以外の謝罪は、ドサクサ紛れに公にしてしまえ、の感が強い。これまでに「素材の間違いを客から指摘された」という報道も無いから、多分最初は内部告発から始まったのだと思うが、同じような偽装が日本全国に蔓延していたとは驚きだ。

偽装が蔓延している背景には、日本人のブランド好きが根底にあるのだと思う。ブランド好きが持つ優越感をチョッとくすぐる、それが偽装に繋がったのだろう。例えば、「レッドキャビア」に偽装されたトビウオの卵の「とびこ」は、見た目の大きさが随分と小さいらしいが、食べた人は誰も気づかなかった節がある。思うに、客の“目と舌”を鈍らせた最大の要因は、「…キャビア」という高級食材を食べた、という優越感だったに違いない。また、「一流レストラン」というブランドも、味覚を鈍らせるのに一役も二役も買っていたのだろう。結果的に、そういった優越感をくすぐり財布の紐を緩めることに神経を注いだばかりに、偽装に走ってしまったのだと思う。

そう考えると、客は馬鹿にされたものである。また、苦労して確立してきた各地の産地ブランドも軽んじられたものである。

人が 神を従え 日本 し嬉しと みちのくの(そら)

球団創設9年目の楽天が、セリーグの覇者巨人を破り、見事プロ野球日本一に輝いた。選手と星野仙一監督、そしてスタッフ全員に「天晴!」である。

球団創設1年目の成績は、38勝97敗1分(勝率.281)で、ゲーム差は、5位の日本ハムとでさえ25ゲーム差、レギュラーシーズン首位のソフトバンクとはなんと51.5ゲーム差も付けられた。開幕前から、“寄せ集め集団”と言われ、シーズン半ば頃からは、「100敗するのではないか」と囁かれていたらしい。結局そこまでいかなかったが、リーグのお荷物、と言われても仕方がない成績であることに違いは無かった。

そんな球団が、創設9年目の今年、遂に日本一という栄冠を掴んだ。開幕前の前評判は高くなかったが、振り返ってみれば、「神様、仏様、田中様」と呼ばれたマー君の大活躍や新加入の外国人二人の活躍などもあって、投打のかみ合った素晴らしいチームだった、と言って良いだろう。また、楽天の優勝は、仙台や東北の活性化に向けて、格好の起爆剤になったに違いない。勿論、3.11東日本大震災の被災地にとっても、何よりの励みになったことだろう。諦めないで頑張れば夢は実現できる、を被災地の人達に実践して見せた、それが星野楽天の最大の功績なのかもしれない。楽天日本一おめでとう!

階段を 五輪招致で 駆け上り 五千疑惑で 知事転げ落ち

生活が 不安と借りた 五千万 そんな都知事じゃ 都民が不安

昨年の暮れ、唐突に知事辞職と国政復帰を表明した石原慎太郎氏から後継指名を受け、12月16日の都知事選に立候補した猪瀬氏は、次点に330万票以上の大差をつけ、史上最多の433万票を超える支持を得て、見事初当選を果たした。ところが、その圧倒的な勝利によって芽生えたのか、少しずつ傲慢さが顔を出す様になり、僅か一年で都知事の座を明け渡すことになってしまった。

アルゼンチンで9月7日に開かれた国際オリンピック委員会総会では、高円宮妃の爽やかな挨拶、佐藤真海さんと滝川クリステルさんの見事なプレゼンテーションなど、女性陣の活躍もあって、見事五輪招致を成功させた。一時東京にとってマイナスの風となった猪瀬知事の舌禍を、五輪招致チーム全員の力で見事払拭してしまった感がある。さてこれからが正念場、と思っていたが、猪瀬氏の絶頂期はここまでだった。

徳洲会からの5千万円疑惑が持ち上がると、答弁は二転三転して、「5千万円は、自分の生活が不安で借りた」などと奇想天外な答弁まで飛び出し、都民や国民を呆れさせた。5千万円は自分のカバンに入ると実演までして見せたが、テレビで放映されているその姿を見ていて、これが400万票を超える支持を受けた知事の姿か、と悲しくなってしまった。「ミカドの肖像」や「昭和16年夏の敗戦」など、彼の小説を愛読していただけに、残念でならない。

今年も何とか年末を迎えることができました。これも一重に拙い文章にお付き合い下さる皆様のご声援・ご愛読の賜物、と深く感謝しております。本当にありがとうございました。皆様にとって迎える年が素晴らしい一年になりますように、そしていさぼう会員皆様のご多幸とご健勝を祈念して、四方山話2013年の締めと致します。

【文責:知取気亭主人】

  
読者の皆さんに幸運が舞い込みますように!

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