2014年1月22日
先々週の日曜日と先週の土曜日、孫娘と一緒に、懐かしい映像を楽しんだ。楽しませてもらったのは、レンタルビデオショップから借りてきたDVDで、その映像を観たのは凡そ30年程振りにもなる。ショップの棚に並んだ20巻を大幅に超えるシリーズの中から、孫娘が喜びそうな話が収録されたDVDを捜し出し、2枚だけ借りてきた。現代的なアニメを観始めている彼女がどんな風に受け止めるかな、と気になっていたのだが、余程面白かったとみえ、一度観た筈なのに「また観たい!」とせがまれ、結局2回も観る事となった。
収録されていたのは、我が家の子供達が小さかった頃に、民放テレビで放映されていた子供向け番組だ。そのほのぼのとした内容から、当時のテレビ番組の中では、親として安心して観せられる数少ない番組のひとつだった。多分、読者の中にも楽しんだ人が沢山いるに違いない。番組のタイトルを聞けば、「ああ、あれか!」と声が出るだろう。タイトルを「まんが 日本昔ばなし」という。
市原悦子と常田富士男の独特な語りと可愛らしいタッチの漫画がほのぼのとした感じを醸し出し、我が家の子供達は夢中になって観ていた。毎回日本各地に伝わる昔話が映像化されていたのだが、親でも知らない昔話が結構沢山あって、私も勉強させられたものだった。もとい、「知らない昔話が結構沢山あって」というよりは、「知っている話は極僅かだった」という言い方の方が合っている位、色々な昔話が放映された。
例えば、今回借りてきたDVD2巻に収録されていた話は、1巻目に「桃太郎」と「カチカチ山」と「河童の雨ごい」、それに「ソラ豆の黒いすじ」の4話、別の巻には「ねこの盆踊り」と「にせ本尊」、加えて「雷様と桑の木」と「あとかくしの雷」の4話が収録されていたのだが、私が粗筋をそらんじることが出来るのは、「桃太郎」と「カチカチ山」の2話位のもので、後は観てはいるのかもしれないが全く記憶にない。日本の各地に伝わる昔話の筈なのに、それ位知らない話が多い。
そんなほのぼのとした子供番組が、何時の頃か放送が中止された。何時頃中止されたのか記憶にはない。気が付いたら放映されなくなっていた、という感じで、長い間そんな番組があったことすら忘れていた。ところが、最近孫娘と一緒に子供番組を観る様になって、突然懐かしい「♪坊や良い子だねんねしな 今も昔も…」のテーマ曲が脳裏に浮かんで来た。心豊かな子供に育ってほしいと願っていたからなのか、あの番組を思い出したのだ。
孫娘が良く観ているのは、「ミッキーマウス クラブハウス」や「ピタゴラスイッチ」、「おさるのジョージ」などらしい。たまに一緒に観ることもあるのだが、歳のせいもあってか、どの番組を観ても、「まんが 日本昔ばなし」を子供と一緒に観た時の様な、ほのぼのとした思いが湧いてこない。面白い番組だと思うのだが、何かが違う。何故だろう。子どもだったら確かに興味はそそられると思う。しかし、そう、「ほのぼのとした思い」にさせてくれないのだ。豊かな感受性を育てるには大切な“ほのぼの感”なのだが、物質的には豊かになった今の時代の子供番組に、ゆっくりとした時間の流れと共にある“ほのぼの感”を求めるのは、無理な注文なのかもしれない。
そこで、何とか観せてやれないだろうか、と色々と探してみた。新聞に似た様なタイトルのDVD販売広告が載っていることもあったが、ナレーターが違う。矢張り、「まんが 日本昔ばなし」は、市原悦子と常田富士男のあの独特な語りでないと“ほのぼの感”が出てこない。次に、インターネットで探してみた。すると、直ぐに見つかった。販売品もあればレンタルDVDもある。ただ、買えば結構な値段がする。そこで、レンタルDVDを借りて来たという訳だ。
さて、孫娘の心には、どんな風に映ったのだろうか。観た本数はまだ少ないが、こちらの狙いはある程度成功しているように思える。今まで観た事も無い映像だったせいもあるのだろうが、食い入るように観ているのだ。言葉も発しない。それ程新鮮なのだろう。傍で観ていると、これまで楽しんでいたどんな番組より、集中して観ているように思う。しっかりと孫娘の心をつかんだようだ。
「まんが 日本昔ばなし」には、暴力シーンは殆ど無い。勿論、本当は残酷な内容の話もあるのだが、多くが勧善懲悪を基本に置いた話だ。他人と競争する、“勝った負けた”の勝負の話しも多分少ない。良い事をすれば幸せになり悪い事をすれば懲らしめられる、そんな至極単純なストーリーではあるけれど、人間として凄く大切な倫理観を養うのに、極めて優れた教材だと思っている。これを観て育った子は、多分情緒が安定しているのではないだろうか。
子育てに疲れた若夫婦にもお勧めだ。私が借りたレンタルビデオショップでは、1週間借りて1巻当たり、たった80円だ。2巻借りて160円。これで幼児の心をつかむことが出来、しかも感受性が豊かになり、情緒が安定するのであれば、安い買い物である。親の情緒も安定してくること請け合いだ。大人の息抜きとしても中々のものである。
【文責:知取気亭主人】
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ユリカモメ
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