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知取気亭主人の四方山話
 

『一芸に秀でる』

 

2014年1月29日

「一芸に秀でる」というのは、こういうことを言うのか。そんな驚きをもって聞いたニュースがある。プロ野球のストーブリーグを賑わしている、“マー君ニューヨークヤンキースに入団”のビッグニュースだ。大リーグ行きに関しては昨シーズンが終わった段階からメディアを賑わしていたが、入団決定のニュースが流れると、巷では、「どこの球団に決まったのか」といった事よりも、その巨額の契約金が話題をさらっている。私などは、驚きと共に羨ましさが頭をもたげ、浅ましい事に、その大金の使い道まで心配している。

勿論、大リーグでも存分の活躍をして、今彼の地で活躍している選手達と共に、日本人選手の株をまた大きく上げてくれるものと期待している。また、必ず活躍してくれると信じてもいる。しかし、今暫くは、この巨額契約金のことが頭から離れそうにない。数多くの煩悩に支配されている私にとっては、彼の豊かな才能と共に、どうしてもその破格の契約金が垂涎の的となってしまうのだ。

また、違う視点でとらえると、結果的に彼を手放すことになった日本のプロ野球関係者にとっては、一個人にそれだけの契約金を払えるヤンキース球団のその豊富な財力と、「年間20億円を超す契約金を7年間払い続けても元が取れる」と踏んだ大リーグの集客力などが、垂涎の的になっているに違いない。更に、このマー君移籍問題で見えてくる、スポーツビジネスに於ける日米の差、つまり青息吐息の経営団体が多い日本に比べ、プロスポーツが魅力あるビジネスとして成り立っているアメリカの現状は、他のプロスポーツ関係者にとっても、羨望の的だろう。それだけ、破格の契約金なのだ。

彼の契約金に関しては、これまで積み重ねてきた実績と楽天を優勝に導いた昨年の大活躍を背景に、当初から「100億円を超える金額が提示されるだろう」と噂されていた。100億円でも凄い金額だと思っていたが、決まったのはそれを大幅に上回るもので、7年契約で1億5500万ドル、日本円にして凡そ161億円にもなるという。こうなると、もう私の想像の域を超えている。無理矢理想像するならば、庶民にとっての夢であるジャンボ宝くじの1等賞金を1億円だとすると、この1等が一度に161本分も当たった勘定になる。そんなことは天地がひっくり返っても起こり得ない。しかし、彼は、そのとんでもない金額を、右腕一本で稼ぎ出したのだから凄い。

要らぬお世話の計算をさせてもらえば、年平均約23億円にもなる。ネットで調べたところに依れば、我々サラリーマンの生涯収入は、平均して1.8億〜2.5億円とのデータがある。これを計算し易いように2.3億円が平均的生涯収入だと仮定すると、彼はたった1年で、10人の一生分を稼ぎだしたことになる。当然、7年では70人の計算だ。こうなると、そこまで破格の評価を勝ち得た彼の一芸に、羨ましさを通り越し、感動さえ覚えてしまう。尤も、羨ましさは消えないで燻っているのだが…。

感動ついでに、一寸脱線するが、彼を個人事業主と見た場合の事業規模を、一般の会社と比べてみた。他の業界のデータは手元にないので、データのある、我々が所属する建設コンサルタント業界ではどうなのかを調べてみた。コマーシャル出演などの副収入は無視するとして、契約金を企業の売り上げとみなし、1年間に20億円以上を売り上げる企業の数がどれほどあるか調べてみようという訳だ。

手元にある「平成24年度 建設コンサルタント白書」(平成24年6月 建設コンサルタンツ協会発行)に依れば、平成22年時点の協会員総数は409社で、20億円以上の売り上げを上げているのは、409社の中でたったの75社しかない。僅か18%に過ぎないのだ。これだけを見ても、如何に年23億円の契約金が凄いかが分かる。脱線ついでに、建設コンサルタント業界の平均売上とも比べてみよう。

同じく平成22年度のデータを使い、計算してみる。409社全社の売り上げ総合計は、6,831億円である。これを409社で割ると、一社当たりの平均売り上げは16.7億円となり、23億円どころか20億円にも及ばない。また、全社の社員合計が43,582人だから、平均すると一社当たり約107人となる。つまり、我々が100人以上掛かって1年間に稼ぎ出す売り上げよりも、マー君一人で稼ぐ方が格段に大きいことになる。唖然である。いくら彼が一芸に秀でていると言っても、これでは何だか、我々が惨めになってしまう。

しかし、よくよく考えてみると、破格の契約金は世界一野球が盛んな大リーグで評価された結果であり、「日本の中で一芸に秀でている」ということではなく、「世界の中でも抜きん出て一芸に秀でている」と評価されたことになる。そう考えれば、7年で161億円という金額も、あながち荒唐無稽な金額ではないのかもしれない。しかし、ご当地のアメリカでは、161億円とは出し過ぎではないのか、と彼の実力を訝る声も聞こえてくる。斯くなる上は、161億円でも安かった、と大リーグ関係者やファンを唸らせる様な大活躍をしてもらいたいものである。さすれば、私の浅ましい思いも、羨ましさも吹っ飛んでしまう。

頑張れ!マー君!

【文責:知取気亭主人】

  
ノースポール

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