2014年2月12日
いよいよ、ソチオリンピック・パラリンピックが始まった。7日の開会式を以て始まったと言うのか、それとも開会式前の6日に競技が始まったスノーボード男子スロープスタイルを以て開始と言うのか私の中では判然としないが、いずれにせよ、23日までの間、手に汗握る競技を楽しませてもらうことになる。これも放送インフラが日本の国全体に行き渡っているお蔭であり、有難い話である。
さて、既に日本のメダル獲得が期待される競技も次々と始まり、多くのメダリスト達が誕生している。と言っても、11日現在、残念ながら日本人メダリストは未だ誕生していない。ただ、誕生はしていないのだが、世界のトップアスリート達の中にあっても、少しも輝きは失っていない。その証拠に、「圧倒的な実力差があってメダルを逃した」というのではなく、「ほんのあと一歩及ばず」の競技ばかりが目につくからだ。
最初の競技となったスノーボード男子スロープスタイルの角野選手然りであり、フリースタイルスキー・女子モーグルの上村選手然り、フィギュアスケート団体、スピードスケート男子500Mと、惜しくもメダルを逃した競技はどれもそうだ。世界のトップともなるとその実力差は紙一重で、後は体調、そして幸運の女神に微笑んでもらえるかどうかに掛かっている、と言っても過言ではない。それだけに、誰が観ても納得がいく、公平なルールや判断基準が求められる。
スピードスケートやアルペンスキーなどのように、「より速い者が勝つ」という単純明快なルールであれば、競技する選手も観客もスンナリ納得できる。たとえ負けたとしても、諦めもつく。しかし、芸術性など数値で表し難い判断基準が加味されると、中々難しい。特に私のような素人は、自分と違う結果になると、どうしても穿った見方をしてしまう。例えば、今回の上村選手の場合がそうだ。
6人による決勝の3回目の滑りを観ていた。一番目に滑った上村選手は、エアーと呼ばれる空中演技も、ターンと呼ばれる滑降も素人目には大きなミスも無く、しかもタイムは6人中一番速かった。しかし、悲願だったメダルには、残念ながら今回も届かなかった。
3人が滑り終わった時点で、トップに立っていた。ところが、4番目、5番目の選手もミスのない演技をして、タイムでは上村選手が上回っていたものの、エアーとターンの評価点で劣り、この時点で3位に順位を落としてきた。「悔しいけれどそんなものかな」と思って何気なく画面に出る審判の国旗に目をやると、日本の国旗が無い。「ひょっとすると?」と思っているうちに、6人目の選手がスタートした。ワールドカップ3連勝中のハナ・カーニー選手(アメリカ)だ。固唾を飲んでみていると、ターンで素人でも分かるミスがあった。解説者も同じ指摘をしていた。しかも、タイムでは上村選手が上回っている。これでやっと彼女もメダルが取れる、と心の中で拍手をしたのだが…。
結果は、残念ながら、ハナ・カーニー選手が3位に入り、上村選手は前大会に続き4位に終わった。しかし、何とも釈然としない。翌日の新聞で確認すると、審判はアメリカ、フランス、オーストラリア、ロシア、チェコの5か国で、上村選手とハナ・カーニー選手のターンの得点が審判員毎に記載されていたが、何れもハナ・カーニー選手の得点の方が高い。0.1が3人、0.2が1人とその差は小さいのだが、アメリカの審判だけは、0.4もの差をつけている。最高点と最低点は削除されるため、アメリカの採点は採用されなかったものの、これは自国選手への明らかな依怙贔屓ではないかと疑ってしまう。しかも最近、理想とされるターンが変わり、上村選手が得意とするターンの基礎点が4.0から3.9に下げられた、と新聞には書かれている(2月10日、朝日新聞朝刊)。詳しい事は分からないが、2007年から2008年にかけてワールドカップで5連勝した上村選手が切っ掛けだったとは、考え過ぎだろうか。ノルディックスキー・コンバインドやジャンプの突然のルール変更があるだけに、そんな疑念が頭をもたげてくる。
ジャンプとクロスカントリースキーからなるノルディックスキー・コンバインドは、一時日本が得意とする競技だった。日本は、1992年開催のアルベールビルオリンピックと次のリレハンメルオリンピックで、2大会連続団体の金メダルを獲得した。個人では、荻原健司選手が、1992年〜1995年シーズンに掛けてのワールドカップで、個人総合優勝3連覇を成し遂げている。得意のジャンプで得点を稼ぎ、クロスカントリーの強い北勢を何とか振り切る、そんな作戦が功を奏していたのだが、その後国際スキー連盟は、ジャンプの評価比重を下げ距離の比重を上げる、距離重視のルール変更を行うことになる。その結果、1998年の長野オリンピック以降、この競技で日本選手がメダルを獲得することは無くなった。
また、札幌オリンピック以来数多くの日本人メダリストを輩出したジャンプもルールを変更しているが、日本人選手の活躍が切っ掛けになっている、と私は思っている。長野オリンピックで舟木選手がラージヒルで金メダル、団体で日本が金メダルを獲得すると、ジャンプスキー板の長さに関するルールが変えられた。これまで【身長+80センチ】だったものが、【身長の146%】になったのだ。変更後のルールでも高梨沙良選手の様に身長の低い選手でも大活躍していることから、ルール変更そのものが悪いとは思わない。しかし、変更の切っ掛けが“欧米以外の選手の活躍”だとすると、話は違う。依怙贔屓の何者でもない。惜しくもメダルを逃した上村選手の結果に釈然としないものを感じるだけに、そんな疑念を抱いてしまう。それとも、メダルを取れない日本人選手への私の判官贔屓が、そんな思いを抱かせるのだろうか。
いや、そんな下種の勘繰りは、堂々と戦っている選手達に失礼にあたる。彼女達には責任無いのだから…。
【文責:知取気亭主人】
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やがて大きく、綺麗な花が咲く。ガンバレ日本!
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