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知取気亭主人の四方山話
 

『3年という時間』

 

2014年3月12日

忘れもしない2011年3月11日14時46分。未曾有の被害をもたらした東日本大震災の鎮魂の日が、またやって来た。津波の凄まじい破壊力になす術もなく翻弄されたあの日から、早いもので3年が経つ。この3年という時間、人によっては「もう3年も…」と感じる人もいれば、「まだ3年しか…」と感慨深い人もいるだろう。しかし、3年という時の流れは、確実に過ぎている。そして時の流れは、3年前のあの惨劇でさえ、人々の記憶から少しずつ流し去ってしまう魔力を持っている。我々は、そんな魔力に何とか抗っていかなければならない。それは、地震国に生きる我々の宿命であり、子や孫への責任でもある。

でも、そんな事は日本人なら誰でも承知している。“だから”ではないが、一昨年も昨年の今頃もそうだったように、テレビや新聞では今年もまた、鎮魂の日が近づくにつれ大震災関連のニュースが急に目立つようになってきた。間近に迫った3月に入ると一層顕著になり、9日の日曜日には、津波被害を受けた施設に特設中継所を設け、3年経った被災地の今を伝えているテレビ番組もあった。

そうした番組に象徴されるように、各テレビ局とも、「あの未曽有の被害をもたらした地震の記憶を風化させてはならない」との思いが強いのだろう、被災地から見た復興の現状を、また被災者の生の声を、大々的に報道している。そして、それらに共通しているのは、「もう3年も…」なのに、遅々として進まない復興への憤り、である。

そこで、復興の進み具合の指標として、被災状況に焦点を当ててみた。3年経った現時点での被害状況は、次の通りだ。総務省消防庁の発表に依れば、2014年3月1日現在、死者の数は、震災関連死と新たに認められた人が増加したこともあって2013年より465人増えて18,958人、行方不明の方は、身元が判明した28人分が減ったものの、未だに2,655人もいる。更に、――被災当時の数だと思われるが――負傷者の数は6,219人を数える。住宅の被害は、全壊が10万棟を超える127,291棟、半壊・一部損壊に至っては、100万棟を超えて1,038,907棟と夥しい数に上った。

また、復興庁の調べに依れば、今なお避難生活を送っている人は、2月13日現在約26万7千人にも上り、自県も含めて全国47都道府県の約1,200の市区町村に所在している。中でも、自県以外に避難している人は、“福島県から他県へ”が47,955人、“宮城県から”が7,076人、“岩手県から”が1,486人の合計56,517人を数え、何と言っても原発事故の影響を受けている福島県が突出して多い。

“遅々として進まない復興”の象徴的なものが、この約26万7千人にも上る避難者の数、そして自県以外に避難している人達の数だろう。避難者は、その名の通り“自宅に帰れず避難を余儀なくされている”のだから、そう結論付けても無理はない。復興が順調に進んでいれば、避難者の数は確実に減る筈である。そこで、避難者数がこの3年でどのように推移したかを、調べてみた。

復興庁が発表した資料「避難者数の推移(所在都道府県別)」(http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat2/sub-cat2-1/20131225_hinansha_suii.pdf)に依れば、避難者の数は、この2年間で減っている事は減っている。地震発生1年後(2012年)の3月に約34万4千人だった避難者数は、2年後(2013年)の3月には3万人余り減って約31万3千人になり、上述したように、3年後の今年2月には約26万7千人にまで減っている。1年後(2012年)の避難者数を100とすれば、2年間で約22%減ったことになる。

さてこの数値、多いか少ないか議論のあるところではあるが、私は少ないと感じている。避難者の中には、津波による“未曾有の被害”や“頻発する余震”、そして原発事故の“想定外被害”に驚き、身の危険を感じて取るものも取り敢えず緊急避難した、という人もかなりいたと思われる。この2年間で減少した数の中には、これら緊急避難した人が被害の鎮静化を見定めて自宅に戻った、というケースもかなり含まれているのではないだろうか。また、視点を変えれば、確かに2年間で22%、約7万7千人減ってはいるものの、未だに約26万7千人もが避難生活を余儀なくされているのも事実だ。

住宅の全壊が約12万7千棟もあったことを考えれば、どんな形にせよこれらが再建されない限り、避難者は劇的に減っていかないだろう。ところが、「高台への集団移転など根本的な津波対策をしよう」という地域もあって、住民の意見一致がままならず、再建が進まない所もあると聞く。地盤沈下で再建が難しい地域もある。また、災害危険区域に指定されて、住居用の建築が制限されている地域もある。しかし、個人住宅にせよ公営住宅にせよ、住宅の再建が進まなければ、故郷に戻ることは出来ないし、顕在化してきていると言われる“住民の流出”にも一層拍車が掛かる。それは、地域経済の再建が立ち行かなくなることの表れでもある。そんな事が無い様、少しでも早く住宅再建を進め、地域経済も含めた復興を成し遂げてもらいたいものである。仮に足枷になっている法律があるのなら、そういった法律の見直しも早急にすべきだと思う。もう3年も経つのだから…。

最後になりましたが、犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々に一日も早く安寧した生活が戻ることを願ってやみません。 【合掌】

【文責:知取気亭主人】

  
コブシの蕾(春は近い!)

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