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知取気亭主人の四方山話
 

『一喜一憂』

 

2014年4月16日

新年度がスタートしてはや2週間が経った。切り替わりのこの時期は、私本人や子供たちの入学・進学もあって、私の中では比較的華やいだ記憶が多い。ただ、子供たちが社会人になってからは、然程大きなイベントもなく、大体平穏に迎えている。ところが、今年はいつもと違って、消費税率が5%から8%に上がったこともあってか、何と無く世の中が騒々しい。とは言うものの、騒々しい中にも変わらず訪れるものがあって、桜の開花、可愛らしい1年生の登校姿は、その最たるものである。そんな変わらず訪れるものの中に、今私が注目しているものがある。ただし、余り華やいだものではない。一般的には殆ど注目される事のない、定期健康診断である。

新入社員の登場や異動の季節ということもあって、毎年この季節になると定期健康診断を受診する人が多い。私が診てもらっている病院でも、この季節が最盛期らしく、3月中に申し込んでも、一杯で7月頃になってしまう場合がよくある。今年は運良く4月中に予約が取れた。28日に受診することになっていて、メタボを始めとする気になる数値に一喜一憂する時が、後1週間余りに迫っている。実際には凡そひと月後にも一喜一憂させられるのだが、私と同様、これまでの不摂生が正直に顔を出している成績票に驚き、その時ばかりはしおらしくなる諸兄も多い筈だ。ただ、プラス思考で考えれば、我々の様な不摂生仲間にとっては、反省するまたとない貴重な時期だ、とも言える。

特に、“痛み”や“疲れ易さ”等の自覚症状が無いのに、健康体の目安数値を大きくはみ出し、注意や要精検等の指導が来ると、原因をあれこれと探し、反省することしきりである。数値を見た途端に、“善は急げ”とばかり、急にスポーツ好きになる愛すべき仲間も多い。それもこれも、「健康体の目安数値は正しい」と信じていればこそである。ところが、その数値が変わるかもしれないのだ。しかも緩い方に!

公益社団法人日本人間ドック学会(以下、「本学会」と表す)と健康保険組合連合会(以下、「健保連」と表す)が、健康診断や人間ドックで「異常なし」とする新たな判定基準を、4月4日に公表した。公表内容の説明文に依れば、今実施している2年間の研究事業(平成25年〜26年)のうち、平成25年度分事業実施報告書の取りまとめ中間報告として公表したもので、「今すぐ学会判定基準を変更するものではなく…」とある。ただ、反省することの多い我が身としては、「異常なし」の判定基準が緩んでくれるのを、「是非に!」と願っている。大手を振って酒が飲めるか否か、という大問題がひょっとしたら簡単にクリヤーするかもしれないからだが…。

と身勝手な“お願い”はしまって置くとして、不摂生仲間の皆さんも、示された新たな基準がどんな値なのか気になるところだろう。そこで、「本学会」と「健保連」が公表した報告書、「新たな健診の基本検査の基準範囲 日本人間ドック学会と健保連による150万人のメガスタディー」(以下、「報告書」と表す)から、私が注目している項目についてのみだが、抜粋して掲載してみる。

その前に、使用したデータについて触れておこう。「報告書」の【要旨】には、人間ドック受診者150万人から約34万人の健康人と定義づけられた人たちを抽出し、この中から潜在値除外法を使ってさらに約1万〜1万5千人の超健康人(スーパーノーマルの人)を選び出し、これらの個々の検査値から基準範囲を求めた、とある。母集団が150万人とは凄い人数だ。これなら、可なり信頼性は高そうである。

さて、いよいよ気になる新たな判定基準だ。抜粋して作成した表は、3種類ある。表1は男女差および年齢差を認めない項目、表2は男女差を認める項目、最後の表3は男女いずれかに年齢差を認める項目について、それぞれ私が気にしている項目を抜粋して作成した。尚、表中以外の項目についても知りたい方は、「報告書」を見て頂きたい。
http://www.ningen-dock.jp/wp/wp-content/uploads/2013/09/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%
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如何だろうか。こうしてみると、血清総蛋白が僅かばかり現在の学会基準を下回っているものの、ここに表わした項目の残り全てで、現行より緩んだ基準となっている。特に、血圧、BMI、尿酸、総コレステロールで緩みが大きいように思われ、現在の学会基準の境界付近にいる人にとっては、健康に自信を深める有難い内容である。ひょっとしたら、貰っている薬も減らせるかもしれない。

ところで、このニュースを知って、以前さる大学の医学部教授が講演会で言っていた、「血圧の学会基準は、昔はもっと高かった。日本人が健康になって患者数が減ったから、患者を昔の様に増やすために基準を下げたのだ」を思い出した。何やら冗談のような話だが、それを素直に信じ、根底には同じ類の発想があるとすれば、今回は、「増え続ける医療費を何とか抑制したい。そのために基準を緩める」という背景があるのかもしれない。例えそうだとしても、節制のタガを緩められるのなら、私は大歓迎だ。ネエ皆さん!

【文責:知取気亭主人】

  
夜の石川門

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