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知取気亭主人の四方山話
 

『仲間は3190万人』

 

2014年4月23日

先日、市役所からある書類が送られてきた。将来的にかなりの確率で必用になる可能性が高い書類なのだが、今の私にとっては、手放しで喜べる物ではない。ただ、手に取った瞬間、「とうとうこういう年齢になったのか」の複雑な思いが湧いてきた。実は、ついこの間、この書類を所持しているであろう人口が今年の3月1日現在で約3190万人になった、と知ったばかりだったこともあり、感慨は一層深い。日本の総人口は凡そ1億2千万人であるから、3190万人と言えば約25%にもなる。遂に私も、そんな大グループの仲間入りを果たしたのだ。普通に考えれば、これだけの仲間の“証”だとすれば心強い筈なのだが、そうならない所にこの書類の悩ましさがある。実はこの書類、「あなたは高齢者ですよ」の“証”でもあるのだ。したがって、私ならずとも、受け取った人は皆、複雑な思いを抱いているに違いない。送られてきた書類とは、65歳以上が対象となる「介護保険被保険者証」である。

誰が決めたのか知る由もないが、今の日本では“65歳以上を高齢者”と定義しているらしい。「1956年に、国際連合が全人口に対する65歳以上の人口の比率を“高齢化率”と定義したことから一般化した」との情報もあるが、誰が定義したにせよ、子供や働き盛りの年齢層に比べて高齢であることに間違いはない。ただ、昔に比べ平均寿命が随分と伸びているのに、定義年齢は1956年当時から変わってないのもおかしな話である。

80歳で3度目のエベレスト登頂に成功した三浦雄一郎氏に代表されるように、今は元気な高齢者が本当に多い。このままその傾向が続き、一層顕著になれば、「70歳以上を高齢者と定義する」なんてことも現実のものになるかもしれない。ただ、現状では厚生年金の受給資格を得られるのが原則65歳であることを考えると、「65歳以上が高齢者」を不承不承でも受け入れざるを得ない。

しかし、65歳以上が3190万人、総人口の25%にもなるとは、物凄い数である。少子高齢化が加速度的に進んでいる結果ではあるが、このまま行けば、日本の国力低下が一層進むことは間違いない。一体、昔に比べると、人口構成はどれほど違うのだろうか。そこで、私が生まれた翌年に行われた「昭和25年(1950年)の国勢調査」と「平成24年(2012年)の人口推計」を比べてみた。それが、次のグラフだ(縦軸が年齢、横軸の単位は千人)。

  

グラフ作成に使用したデータは、総務省統計局のホームページに掲載されている「第2章 人口・世帯」( http://www.stat.go.jp/data/nenkan/02.htm )中の「統計表 2-1人口の推移」」に依るもので、グラフでは、年齢を0歳〜4歳、5歳〜9歳といった具合に、5歳毎に分けて集計してある。このグラフで明らかなように、比較した両年の形は全く違う。

今から64年前の昭和25年(1950年)の人口構成は、先の太平洋戦争で多くの青壮年が犠牲になったため、25歳〜34歳の人口が少なく多少歪んではいるものの、底辺の広いほぼ完全な三角形であることが一目瞭然で分かる。一方の平成24年(2012年)は、30歳から74歳までの人たちが比較的多く、グラフではビール腹のように張り出している。因みに、昭和25年における65歳以上の人口は、数にすると410万人で、当時の日本の総人口8,320万人の約5%に過ぎない。それが64年後の今日には、3,190万人と8倍近くにまで膨れ上がってしまったのだから驚きだ。また、平成24年では60歳〜64歳が最も多くなっている事も特筆すべきことだ。我々団塊の世代がこの年齢層に入っていたからだと思われるが、我々が高齢化を押し上げる要因になっている、と考えると少々肩身が狭い。

このグラフを見ると、少子高齢化が進んでいる状況が手に取るように分かる。しかし、今一つインパクトに欠けるような気がする。そこで、会社などの団体比較で良く使われる“平均年齢”に焦点を当て、少子高齢化の進み具合をもう少し実感してみたい。

グラフを描いた元データを使い、「統計表では0歳から1歳刻みで人数が示されているため、各年齢に0.5歳を加えたものに人数を掛けて集計し、日本の総年齢を出した。これを総人口で割って平均年齢とした。ただし、100歳以上は100.5歳とした」という至極簡便な方法で計算した。厳密な平均年齢ではないが、傾向を見るには十分だろう。その結果、昭和25年は約27歳とまだ青年だったのに、62年後の平成24年には約46歳と壮年年齢になり、実に19歳も上がってしまっている。このままで行けば、平均年齢が50歳を超えるのもそう先のことではなさそうである。

しかし、国民の平均年齢が50歳近いとはビックリだ。これでは、国力の低下もそうだが、社会保険制度の破綻も心配しなければいけない。先日上げたばかりの消費税率も10%を通り越す議論が直ぐに起こるのではないか、そんな余計な心配もしなければいけない。それにしても、たった1通でこんな心配をしなければいけないとは、お騒がせな書類である。

【文責:知取気亭主人】

  
アネモネ

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