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知取気亭主人の四方山話
 

『26年後の姿』

 

2014年5月14日

先週の金曜日(5月9日)、新聞を読んでいて、衝撃的なニュースに我が目を疑った。1面に書かれた記事の副題には、「人口維持できず…」との文字が並んでいる。概要は、「2012年に子供を産んだ女性の9割以上を占める20〜39歳の女性(以降、「若年女性」と記す)が、2010年に比べ、2040年までに全国896の自治体で半減する」との試算が発表された、というものだ。日本の総人口そのものの減少が始まっているのだから減るのは判るが、幾らなんでも、“半減する”とはただ事ではない。

朝日新聞朝刊の記事に依れば、「国立社会保障・人口問題研究所」が昨年の3月にまとめた人口推計データを基に、民間研究機関の「日本創生会議」が試算したものらしい。少子高齢化は随分前から言われているから、「若年女性」も必然的に減少するのだとは思う。しかし、全国1800の自治体(福島県は県単位、20政令指定都市のうち12市は区単位)のうち約半数で半減する、というは私の想像を遥かに超えている。もしこれがほぼ間違いのない想定だとしたら、少子高齢化社会の到来に、為政者が警鐘を鳴らし続けているのも頷ける。

 

では、一体どれ位減る、と予測しているのだろうか。「日本創成会議」の公開データ(http://www.policycouncil.jp/)から減少率のワースト3をみてみると、ワースト3の青森県今別町で88.2%も減って20人に、ワースト2の奈良県川上村では89.0%減ってたったの8人に、ワースト1の群馬県南牧村はほぼ9割の89.9%も減少して僅か10人になってしまう。たった30年で9割近くも減るとは、尋常ではない。川上村の8人や南牧村の10人などは、失礼な表現をさせてもらえば、生徒数の減少で廃校になる運命の小学校と重なってしまう。

当然ながら、これらの自治体では、総人口でも大幅な減少が予想されている。中でも川上村は、72.2%減少して僅か457人と500人を切るとみられていて、村と呼ぶには余りに少ない人口になってしまう。減少率ワースト1の南牧村は、500人を僅かに超えてはいるものの、1,000人を切って626人になると試算されている。どちらの村も、これだけ少なくなってしまうと、暫く前に社会問題として提起され流行言葉の様に使われた、「限界集落」を想起してしまう。さしずめ、「限界自治体」とでも名付けたくなる様な惨状だ。こうなると、新聞の副題にもあったが、自治体そのものの「消滅」の可能性すら見えてくる。各自治体とも手をこまねいている訳では無いだろうが、地方の現実は厳しい。

 

しかし、「若年女性」の減少率が高いのは、「地方は地方でも以前から過疎に悩んでいる市町村が殆ど」と思っていたのだが、どうやらそうでも無いらしい。都道府県の中では比較的人口減少が緩やかだと思われる中核都市(指定時の人口30万人以上)でも、2040年に焦点を当てると、「減少率が50%を超えると予想されるころがある」というから驚いてしまう。ではそのワースト3を、朝日新聞から転載してみよう。

ワースト3は秋田市で54.3%(17,236人)の減少、ワースト2は青森市の57.4%(14,760人)減、中核都市のワースト1となった北海道の函館市では60.6%(12,115人)と6割を超えてしまう。3市とも東北・北海道を代表する都市の一つであり、秋田市と青森市は県庁所在地でもある。地方の中心都市でもこんな惨状が推定されているとは、少子高齢化の厳しい現実が見えてくる。

ただ、これだけ減少するとなると、今から26年後、つまり2040年の日本の姿はどうなってしまうのだろうか。その時、私は91歳になっていて、ひょっとすれば、生きながらえて働く世代にお世話になっている可能性もある。そこで、極めて簡便な方法ではあるが、“総人口”と“20〜39歳の男女(以下、「若年世代」と記す)を合わせた人口”に焦点を当て、日本の姿を垣間見ることにする。

 

下の図は、“総人口”と「若年世代」のグラフである。棒グラフは、1920年以降に実施された国勢調査のデータから、20〜39歳の男女を合わせた「若年世代」の人口を集計しプロットしたもので、左軸に対応している。また、実線の折線グラフは、同じく国勢調査の総人口を表していて、右の軸に対応している。単位は、どちらも千人である。

青の破線は、「日本創成会議」のデータから2040年の「若年女性」の推定人口を集計して、これを2倍したものを男女の人口と仮定してプロットしてある。男女の比率が多少違うのは承知しているが、傾向を見るだけとすれば許容範囲、と判断した。茶色の破線は、「国立社会保障・人口問題研究所」のデータから、出生も死亡も中位と仮定して推計された2040年の総人口約107百万人をプロットしてある。勿論、直線的に推移することはないが、あくまでも2040年の姿の推定として捉えていただきたい。

 

このグラフからも明らかなように、「若年世代」の構成比率はどんどん下がっていく。2000年に総人口127百万人に対し35百万人で約28%だったものが、2010年には3ポイント下がって(32/128=)25%に、そして2040年には更に6ポイント下がって(20/107=)19%ほどになり2割を切る、と推定される。私が90歳を超える頃になると、よく言われるように、周りは高齢者(65歳以上)ばかり、ということになってしまうのだ。考えたくもない将来像である。

少子高齢化への警鐘は、事有る毎に喧伝されている。そして、遅まきながら、多少の対策も講じられている。しかし、効果のほどは疑わしい。何故だろうか。それは、日本人の価値観を変えるほど、インパクトのある対策が講じられていないからではないだろうか。

「高学歴、高収入、物質的に豊かな生活が人生の勝者」という今の価値観を変えなければ、少子高齢化も「若年女性」の減少も、止めることは難しいだろう。少子高齢化を加速させている根本原因の一つと考える、過度な東京一極集中も、今の価値観の産物だ。そういう意味では、子育て世代への手厚い支援も大事だが、今の価値観に大鉈を振るうために、産物をぶっ壊してしまうのも必要な事ではないだろうか。日本全体のことを考えるのに、一番条件の良い所にいて思考しても、居心地の良い今の状況を変える事は出来ないだろう。さすれば、「隗より始めよ」の諺がある様に、首都の移転や省庁の分散を早急にやるべきだ、と考えるのだが如何だろうか。

【文責:知取気亭主人】

  
オニグルミの雌花序

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