2014年7月2日
日本のサッカー・ワールドカップ・ブラジル大会が終わった。24日(日本時間25日)のコロンビア戦に敗れ、グループリーグ敗退が決まった。決勝リーグ進出を大いに期待していたのだが、結局1勝もできず、1分け2敗の戦績でC組最下位、と誠に残念な結果となってしまった。実力を出し切れなかったのか、それともFIFAランキング通りの実力しかなかったのか、意見の分かれるところだが、私は、戦術も含めやはり実力がなかったのだろうと思う。
サッカー未経験の素人評論家として、敢えて毒舌を言わせてもらえば、パスのスピード、左右の展開の切り替えスピード・臨機応変さ、受け手が前に走るパスの出し方とお互いの連携、シュートを放つ積極性、シュートの正確さ、そのどれをとっても、悔しいけれど、劣っていたように思う。特に、パスの遅さ、前に走りながらパスを受けることの少なさ、観戦しながら“シュートだ!”と叫んでいるのに打たない不甲斐無さ、この3点には大いに不満を感じている。もっとも、日本、韓国、イラン、オーストラリアのアジア勢4チームが、揃いも揃って1勝もできずに終わったところをみると、劣っている内容は兎も角として、他の地域に比べ“アジアはレベルが低い”、ということなのだろう。
しかし、敗れはしたものの、決して手を抜いて負けたわけではない。一所懸命、必死になって戦っているのは、嫌と言うほど伝わってきた。だから、“悔しさ”は肝に銘じても、恥じる必要は無い。今からは、“実力の無さ”を真摯に受け止め、世界で互角に戦えられるよう、益々精進に励んでほしいと願っている。ただ、日本代表チームが世界に“驚き”と“感銘”を与える事が出来なかったのも事実だ。ところが、そんな悔しい結果に終わった選手達に代わって、世界に “驚き”と“感銘”を与えた人達がいる。戦いの行われた現地スタジアムに応援に出掛けて行った、日本チームのサポーター達だ。
第1戦のコートジボアール戦で負けたにも拘らず、試合終了後、日本代表チームのカラーである青色のゴミ袋を片手に、スタジアムのゴミ拾いをしているサポーター達の姿がツイッターに載ると、世界中から称賛の声が上がった。彼らは、多くの日本人が持っているであろう「立つ鳥跡を濁さず」の諺を実践してくれたまでなのだろうが、世界の人々には、信じがたい光景に映ったらしい。
確かに、一部のサッカーファンには、一時のフーリガンに代表されるように、暴力沙汰にまで発展したり、(今大会でも報じられているが)レーザーポインターを相手チームの選手に照射したりというマナーの悪さが常に付きまとっている。特に、応援しているチームが負けたりすると、怒りを爆発させ、応援チームの選手を罵倒する国も多い。随分前の話になるが、敗戦して帰国した選手が殺された国もあった。それは余りにも過激すぎるが、負けるととかくそんな険悪ムードが漂い、観客席の清掃など念頭にないのが普通だ。
しかし、今回の日本チームサポーター達は、どこに怒りをぶつけるのでもなく、「試合は試合、マナーはマナー」というお手本を、無言の行動で、世界のサッカーファンに示してくれた。このマナーの良さに共感した人も多かっただろうし、これまでの自らの行動を恥じた人達も沢山いた筈だ。2戦目以降、現地のブラジル人も日本サポーターに加わってゴミ拾いをしている姿が、それを如実に物語っている。
世界の人々に感銘を与えた彼らの行動は、日本の誇りである。とかく下を向きがちな日本人に、前を向き、胸を張って歩く勇気を与えてくれた、と思っている。私の中では、(あるならば)“最優秀サポーター賞”は日本で決まりだ。ところが、そんな素晴らしい人達がいる一方で、“日本の恥”を世界中に巻き散らかした人達がいる。東京都の都議会議員達だ。
最近は、テレビも新聞もこの話題で持ちきりだから、都議会と言えば“ハハ〜ン”、と気付いた方ばかりだろう。例のセクハラ野次問題だ。東京都議会の本会議で、女性議員が代表質問をしている最中に、「早く結婚した方がいいんじゃないか」等の野次を浴びせ、これがツイッターで流れると、“セクハラ野次だ”とやり玉に挙げられた。質問や答弁の最中に野次を浴びせること自体、子供にも恥ずかしいし、「会議のやり方をもう一度小学校に戻って学び直せ」と言いたい位情けない話だが、相手の人権を踏みにじる様な野次を平然と言ってのける人に、弱者に対してどれほど配慮した政治活動ができているか、甚だ疑問が残る。
破廉恥な野次を飛ばした議員は複数いたとされるが、その後、一人が「私が言いました」と名乗り出た。ところが、謝罪をし、自民党を離党したものの、議員辞職はしない、と言っている。そんな態度に、彼に投票した人達の中にも、「議員辞職するべきだ」と思っている人もいる少なからずいる筈だ。インタビューを受けて、「民間企業だったらクビだ!」と過激な意見を言っていた人もいたが、訴えられたらその通りだと思う。
しかし、そういったセクハラや人権侵害に対して、少子高齢化対策や女性活用の政策を議論すべき議員先生と民間との意識の差が、これほどあるとは驚きだ。それは、我々当事国の日本人ばかりでなく、人権侵害を忌み嫌う欧米や世界の人達も、驚きを以てこのニュースを聞いたに違いない。ある意味、日本の恥をさらした格好だ。
そして、その恥を上塗りしたのが、都議会の対応である。時代遅れの人身御供なのか、一人の議員が名乗り出た事で幕を引いてしまった。この稚拙対応も、当然世界に配信されている。折角サポーター達が“日本の誇り”を示してくれたのに、残念な話である。ただ、惜しむらくは、野次を受けた議員が毅然とした態度を取れなかったことだったのだが…。
サッカー関係者が“実力の無さ”を真摯に受け止める事が必要なように、全ての日本人は、「日本は人権について後進国である」を認識する必要がありそうだ。その上で、人権についても先進国と呼ばれる国になれるよう、意識を変え、努力していかなければならない。
【文責:知取気亭主人】
|
栗の花
|
|