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知取気亭主人の四方山話
 

『還暦と干支』

 

2014年7月9日

さて、のっけからで申し訳ないが、皆さんに質問がある。今年の干支(えと)は何でしょう?そう、「午(うま)」だ。でも、それでは半分しか正解でない。正しくは、「甲午(きのえうま)」である。理由は簡単だ。干支とは十干と十二支の組み合わせた暦、十干十二支の略で、“干支”の文字は、十干と十二支の夫々最後の文字、“干”と“支”を組み合わせてできている、と言えば納得だろう。

かく言う私も、十干十二支は知っていたが、恥ずかしながら、これまでずっと「十二支だけで干支だ」と思っていた。同じ文字を使いながら、片方では「かん、し」と読み、もう片方で「え、と」と読むのでは、同じ意味と捉えるのは中々難しい。浅学非才の身では無理からぬことだ、との言い訳もしている。しかも、厳密に言うと、十干十二支だけでなく、古代中国思想の「五行」――万物を成り立たせている木、火、土、金、水の五つの元素――が絡んでいる、となるともっと複雑だ。

しかし、何でこんな話題を持ち出したかというと、家内がつい先日還暦を迎えたのが切っ掛けだ。そのことを話題にしようと調べていくうちに、“干支”に付いて、色々と面白いことが分かって来た。今回はそれをご披露したい。占いや歴史に興味がある人は周知の事だとは思うが、暫くお付き合いを願いたい。

まず、五行、十干、十二支の漢字と読み方を整理しておく。五行は次の通りだ。

次は十干だ。

十二支も、整理しておこう。

さて、還暦とは、皆さんご存知の様に、夫々の年に割り当てられた干支が「甲子(きのえね)〜癸亥(みずのとい)」の60種類あって、61年目に再び生まれた年の干支に還る、という意味である。だから、良く考えると、干支に関する習わしは、スタートとなる生まれた年を一歳とする訳であるから、“数え年”で行うのが本来的には正しい事になる。したがって、還暦を祝ってもらうのであれば、数え年で61歳になる年、ということになる。

ところで、10と12であれば、組み合わせは120になる筈なのだが、何故60種類しかないのだろうか。数学を思い出してもらって、「10と12の最小公倍数は幾つ?」と考えれば、分かり易い。例えば、十干の「甲」と十二支の「子」の組み合わせの年の次は、「甲丑」になるのではなく、「乙丑」になる。すると、11年目は、十干は再び「甲」に戻って、十二支の11番目との組み合わせで「甲戌」となり、組み合わせはずれていく。そうなると、「10×12組み合わせ」ではなく、「10と12の最小公倍数」が組み合わせの数、という事になる訳である。ここまでは、私もスンナリと理解できたのだが、複雑怪奇なのが十干の読み方だ。

まず、五行の訓読みと、十干の訓読みを比べて、面白い事に気が付かないだろうか。そう、五行の読みが十干の頭に入っているのだ。しかも、二つずつ。そして、その二つの順番の早い方の最後に「え」が、そして遅い方に「と」が入っている。これは、日本独自のものだというが、中国の「陰陽五行説」に由来するものらしく、陽を表す「兄(え)」と陰を表す「弟(と)」を表しているのだという。

まず五行には夫々陽と陰がある訳であるから、“木”には“甲”と“乙”を、“火”には“乙”と“丙”を、等の様に十干を二つずつ当てはめて行く。そして、“甲”であれば「木の兄」となる訳で、読みは必然的に「きのえ」となる。“乙”は、「木の弟」という意味で、「きのと」と読むのも理解して頂けると思う。この規則性と十干の順番さえ覚えておけば、複雑な読み方もほぼマスターできる。ところが、最初の質問の様に、「今年の干支は何だ?」については簡単にはいかない。

と思い込んでいる方も多いだろう。実は、そうでもないのだ。前述の“兄と弟の規則性”と同様に、ある規則性を知れば、意外と簡単に干支を知ることが出来る。それでは、とっておきの方法を伝授しよう。もっとも、私が発見したわけではないのだが…。

方法は、次の二つの表に示す通りで、十干は西暦を10で割り余りを次表に当てはめ、十二支は西暦を12で割り余りを次表に当てはめると求められる。例えば、今年は2014年であるから、十干は、余りが4となって「甲」だ。十二支は、12で割って、余り10の「午」となる。したがって、質問の答えは「甲午(きのえうま)」となる訳である。私流に言えば、目から鱗の簡単さ、である。

ところで、これらの表を良く見ると、十干、十二支の一番目がいずれも“余り4”であることに気が付く。そのことから類推すると、干支が使われ始めたのは、西暦の1桁が4の年だったのではないかと思われる。また、「12で割った余りも4でもある」となると、64年とか124年とかが候補になる。勿論、4年やそれ以前の紀元前にも候補はある。さて、干支は何時の頃から使われ始めたのだろうか。あなたの推理や如何に?

と最後に質問したところで、そろそろ終わりにしよう。如何だっただろうか。特に何かに役立つ、というものでもないが、覚えておいて損はないだろう。この表を使って自分が生まれた年の“干支”を知っておくのも、話のネタ位にはなりそうだ。仲間や家族の話題作りにも是非どうぞ!

なお、干支は月にも日にも使われていたそうだが、一般的には馴染みがない。したがって、これまでの話は全て年干支についてのみ述べてある。

【文責:知取気亭主人】

  
ヒメウツギ
 

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