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知取気亭主人の四方山話
 

『子供の受難』

 

2014年8月6日

何時の頃からか、「これが、私の子供の頃と同じあの日本か?」と耳を疑いたくなる様な悲惨な事件が多発するようになって来た。しかも、極悪非道の殺人鬼ばかりでなく、普通に暮らしている一見普通の人がいとも簡単に人を殺めるようになって来た、と感じている。ただ、そう感じているだけで、実は昔から多かったのかも知れない。メディアの多様化と科学技術の進歩がニュースの拡散スピードを格段に早め、我々はどこにいても日本全国津々浦々の事件を知り得るようになった。その結果かもしれないのだ。

とは言うものの、子供絡みの悲惨な事件は、我々団塊の世代が幼少期を過ごした、昭和20年代、30年代に比べると明らかに増えているように思う。中でも、子供が加害者になってしまった殺人事件や、親による幼い子の虐待死、虐待が原因での自殺などの痛ましい事件は、母から聞いたことも無ければ記憶にも無い。それ程少なかったのだと思う。ところが、平成に入ると、そういった事件がちょくちょくニュースに登場する様になり、その度に世間に衝撃を与えている。つい最近起こった次の2つの事件も、日本国中に計り知れない衝撃を与えている。

一つ目は、7月27日、長崎県佐世保市の高校1年の女子生徒が、同級生の女生徒を殺害した容疑で逮捕された事件だ。詳しい内容は新聞・テレビに譲るが、報道の通りだとすれば、1997年(平成9年)に発生した神戸連続児童殺傷事件を彷彿とさせる、実に凄惨な事件である。佐世保市内では10年前にも、小学6年の女児が同級生に殺害される事件があり、以来、命の大切さを学ぶ教育に力を入れてきたというが、残念ながら、大人の思いは届かなかった。何故、被害者の少女は殺されなければならなかったのだろうか、何が加害者の少女を突き動かしたのだろうか。何故、それを止める事は出来なかったのだろうか。我々大人に突き付けられた課題は重い。

二つ目は、父親の長年に亘る虐待と暴言によって、その暴言に従い自らの命を絶った、東京の中学2年生の事件だ。佐世保市の事件が波紋を広げていた7月30日、中学生2年生の男子生徒が自殺した事件で、父親が虐待容疑で逮捕された。父親は、日常的に虐待を繰り返し、生徒が自殺した前日(29日)も、殴った後に、「24時間以内に首でもつって死んでくれ」との暴言を吐いたという。日常的に親が子供を虐待することさえ信じられないのに、言うに事欠いて「…死んでくれ」とは、何たる暴言か。人が吐く言葉ではない。ましてや、親が子に吐いたとは…。亡くなった生徒は、どんな気持ちで聞いていたのだろうか。その子の絶望感を考えると、他人事ながら胸が締め付けられる。でも、どうして父親は虐待をし続けていたのだろうか。何故、その衝動を抑えることが出来なかったのだろうか。

この様に、子供が絡む事件が起こる度に、私の中で「何故?」が繰り返される。私と同じ様に心を痛め、「何故?」を繰り返している人達も一杯いるのだと思う。ところが、親からの虐待死も含め、こういった事件による子供の死は、一向に後を絶たない。いくら「何故?」を繰り返しても、求める答えは見つからない。むしろ増え続けているのではないか、とさえ思われる。それは、「所在不明だった子が遺体で発見された」など、一昔前には考えられなかった事件が度々ニュースに登場する様になってきたことからも窺える。そして、そういった事件のバックデータとも言える実態を知ると、増え続けている事はほぼ間違いないと確信せざるを得ない。

7月29日の朝日新聞朝刊に依れば、行政が居住実態をつかめない「所在不明の子(18歳未満)」が少なくとも30都道府県で1,588人に上ることが、朝日新聞のアンケート調査で分かったという。記事に依れば未回答の地域もあるというから、実際にはもっと多い可能性がある。中には外国籍の子が既に出国してしまっている可能性が捨てきれない例もあるというが、全てではないにしろ、これだけ多くの子供たちの安否確認ができないとは、空恐ろしい事だ。これでも、“日本は世界第3位の経済大国”と胸を張って言える国なのだろうか。何かが狂っている。

折しも、「所在不明の子」の予備軍とも呼べる“あるデータ”が、4日、厚生労働省から発表された。全国に設置されている207カ所の児童相談所が2013年度に児童虐待の相談や通報を受けて対応した件数が、前年より7千件余り増えて7万3765件と過去最悪となった、というものだ(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000052785.html)。平均して、毎日200件余にもなる。凄い数だ。また、この対応件数は集計を取り始めて以降23年間ずっと増え続けていて、その増え方も尋常ではない。データを取り始めた1990年度(平成2年度)の1101件と比べると、2013年度のそれは実に約67倍にもなる。正に「子供受難の時代」である。

発表にあった児童虐待、これも含まれているのかもしれない育児放棄、またパートナーの暴力から逃れるために生じる子供の無戸籍問題、離婚騒動で持ち上がるDNA鑑定問題等々、親の身勝手で翻弄される子供の受難は多種多様になってきた。子供ばかりでなく親自身が子供時代に虐待を受けていたケースもあるし、育児の悩みなど親がストレスを抱えている場合もある事は承知している。しかし、子供が受ける肉体的、精神的ダメージは、より深刻だ。一番愛情を注いでくれる筈の親からのこういった受難は、明らかに子供の精神に暗い影を落とす。普通に育てられれば、受ける必要のない精神的ダメージだからだ。

では一体どうしたら、子供の受難を避けることが出来るのだろうか。それには、価値観を変える事と親のストレスを減らす事が第一の特効薬だと思う。私のお勧めは田舎暮らしだ。そして、お節介な爺ちゃん婆ちゃん達の懐に溶け込むことだと思うのだが…。

【文責:知取気亭主人】

  
セイヨウアサガオ 
 

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