2014年8月27日
先日、ある小学校教諭が、信じられない事件を起こした容疑で逮捕された。信じられない事件とは、勤務先の学校を管轄する市の教育委員会に、「今すぐ土曜授業をやめろ」などと書いた脅迫メールを送った、というものだ。勉強嫌いの生徒が送ったというならいざ知らず、学校の先生がこんなメールを送ったとは、俄かには信じ難い。日頃から余程ストレスを感じていたのだろうが、その行動は余りに短絡的で幼稚だ。恐らく、ストレスからくる“身勝手な怒り”をコントロールする事が出来ずに、この呆れた行動に出たのだろう。
最近は、こういった“身勝手な怒り”に任せて、他人を傷つける大人が実に多い。579話「子供の受難」で紹介した「中学生2年生の男子生徒が自殺した事件」の父親もそうだ。日常的に虐待を繰り返していたというが、こみ上げてくる怒りに任せて、“弱い者苛め”をしていたのだろう。生徒が自殺した前日には、殴った上に、「24時間以内に首でもつって死んでくれ」との暴言を吐いたというから、驚いてしまう。怒りのはけ口を我が子に向けたのだから、驚きを通り越して、私の方こそ怒りを覚えてしまう。
最近は、昭和の時代に比べ怒りをコントロールできない大人が増えたのか、腹立たしいニュースが頻繁に報じられるようになって来た。信じられない事に、親からの虐待によって幼気な子供が犠牲になる事件も後を絶たない。また、ストーカー殺人など、他人の迷惑を顧みない身勝手な暴力事件も随分増えて来ているように思う。些細な事ですぐに切れる日本人が増えて来たのも、凄く気になるところだ。例えば、公道を走っている最中なのに「相手の車の追い越し方が気に食わない」と言って相手の運転手に暴力を振るったり、“モンスターペアレント”と言われる子供じみた親が出現したり、“ヘイトスピーチ”を叫んだりするのもその範疇だろう。
「複雑な社会の中で、怒りのやり場がない」と言ってしまえばそれまでだが、怒りを爆発させた当人達が受けたストレスは、他人を傷つける程の怒りを覚える事なのか、報道されるニュースを聞く度にいつも疑問に感じている。そして、ニュースの当事者達は何故怒りの爆発を我慢する事が出来なかったのだろうか、と理解に苦しんでいた。私自身も、怒りを爆発させた経験が無いわけではないから、怒りを覚えるのは理解できる。しかし、爆発させるのは傍から見ても余程理不尽な場合に限っているし、(大人になってからは)決して暴力沙汰を起こしたことは無い。それに比べると、事件を起こした彼らの行動は、我慢というものが無くて、まるで駄々をこねる幼児の様だ。そんな大人に育てられた子供は、一体どのような大人に育っていくのだろうか、と心配になってしまう。そんな思いを日頃から持っていたところ、つい最近、目から鱗の対処方法を知った。「アンガーマネジメント」という聞きなれない方法だ。
先週、いつものようにカーラジオのスイッチを入れると、NHKラジオの番組「夕方ニュース」から、聞いたことも無い言葉が流れてきた。番組の終わり頃だったこともあり、聞いたのはたった一瞬、一度だけだったのだが、何故だか気になり頭から離れない。「ア…マネジメント」だけが耳に残っているのだ。「…」が何だったのか気になって仕方がない。早速NHKのホームページで調べてみた。その結果分かったのが、「アンガーマネジメント」という初耳の言葉だ。英語で書くと「Anger Management」、日本語に訳せば、「怒りの処理」とでも言うのだろうか。
これで言葉は分かったのだが、これに関する内容を全く聞いていなかったので、一体どんなものなのか分からない。そこで、善は急げ、と続けてネットで調べてみた。すると、「アンガーマネジメント」とは怒りの感情と上手く付き合うための心理教育で、1970年代のアメリカで始まった、というのが分かってきた。また、ニューヨークに本部を置く「ナショナルアンガーマネジメント協会」なる国際団体が既に活動していて、日本にも同団体の支部として「一般社団法人日本アンガーマネジメント協会」が設立されている事も知った。こうしてみると、私にとっては初めて聞く言葉だが、国際的には、特に欧米では、既に市民権を得ている言葉なのかもしれない。
協会のホームページ(http://www.angermanagement.co.jp/)を覗いてみると、「怒りの連鎖を断ち切ろう」が、協会の理念として掲げられているのに気が付く。そして、その説明文にはこう書かれている。部分的に転載させてもらうと、「怒りの感情は力の強い人から弱い人へ、立場の強い人から弱い人へと向かいます。―中略― なんとなく虫の居所が悪くて怒ってしまった、その人のせいじゃないのについ文句を言ってしまった、相手が悪いわけじゃないのに邪険に扱ってしまった等々。私たちは知らず知らずのうちに怒りの連鎖の中に囚われています」と書かれている。確かにそうだ。
この地球上では、家族や友人など個人的な感情の行き違いに始まって、民族間の紛争に至るまで、怒りの連鎖が原因となって惹き起こされる争いは枚挙にいとまがない。そういった争いを「アンガーマネジメント」で無くしていこう、というのが本協会の趣旨だと理解したのだが、協会関係者の方々如何だろうか。
ところで、協会のホームページには、「体験版 怒りのタイプ診断(12問で分かるあなたの怒りのタイプ)」と銘打ったコーナーがある。私も体験したが、皆さんもぜひ体験してみて頂きたい。自分を客観的に見つめる良い機会だと思う。
なお、「アンガーマネジメント」の具体的な内容を知るには、日本経済新聞社が提供しているネット版の、[「アンガーマネージメント」を身に付けよう〜ママ世代公募校長奮闘記(20)山口照美](http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1000A_Q4A210C1000000/)が参考になる。また、協会主催のセミナーも面白そうだ。私も機会があったら参加したいと思っているのだが、冒頭に登場した人達にも是非参加してもらいたいものである。
【文責:知取気亭主人】
|
サボテンの花 |
|