2014年9月3日
国の来年度(平成27年度)予算に向けての各省庁の概算要求が出そろった、と報じられている。総額で初めて100兆円を超え、101兆円台になったらしい。予算としては、最終決定ではないものの、今年度当初予算の95.9兆円を超え、過去最大規模となるのが確実視されている。そうなると、「大きいことは良いことだ!」と単純に喜んでばかりはいられない。世界的に注視されている国の借金が、大いに気になってくる。経済ジャーナリスト財部誠一氏が主宰する「日本の借金時計」(http://www.takarabe-hrj.co.jp/clockabout.html)に依れば、9月1日現在、日本の借金は992兆6千億円寸前まで来ていて、今のこの時も増え続けている(「国の借金」=「普通国債の発行残高」と定義されている)。
刻々と増え続ける「日本の借金時計」の数値を見ていると、税収不足に拍車をかけるような大型予算は、素人ながら心配になってしまう。ここにきて、4月に実施した消費税率引き上げ後の景気の落ち込みが思いのほか大きい、との経済指標が発表されているから、尚更である。折角明るい兆しが見え始めていた矢先だったのに、再び日本経済に暗雲が垂れこみ始めたのではないか、と気を揉んでいる。
概算要求の主だったものを見てみると、我々と関係が深い公共事業費が7兆円超と今年度当初予算を1兆円以上上回ったのを皮切りに、社会保障費関係が8千億円以上増えて31.7兆円となっている。また、借金返済に充てる国債費は、2.5兆円増えて25.8兆円に膨らんでいる(8月30日、朝日新聞朝刊)。「日本の借金時計」ではないが、国の借金が一向に減らない状況を目の当たりにすると、経済が腰折れしないようにと色々な施策をすればするほど予算が増え借金も増えていく、そんな悪循環に陥っているのではないかと心配になってくる。ただ、晴れて高齢者の仲間入りを果たした身としては、これを他人事と傍観することは出来ない。何故なら、医療費や年金など社会保障費は、我々高齢者が押し上げているからだ。
折しも、8月28日の日本経済新聞朝刊に、医療費に関して、気になる記事が載っていた。2011年度(平成23年度)の国民医療費(全国の病院などに支払われた金額、ただし保険診療対象外の健康診断や正常な出産、予防接種費用は除く)が約38兆6千億円にも達し、10年間で約7兆5千億円も増えたというのだ。驚くなかれ、10年で約24%も増えたことになる(7.5÷(38.6-7.5)×100≒24)。
計算しやすいように日本の総人口を1億2千万人だとすれば、赤ちゃんからお年寄りまで全ての国民が、年間約32万円も負担したことになる。そして、10年間で、一人当たり約6万円もの負担増になった計算だ。しかも、この傾向は今後も続き、我々団塊の世代が75歳以上になる2025年度には、患者の窓口負担を除いても54兆円になる(政府推計)というから驚きだ。これは、「大型だ!」と驚いている来年度国家予算概算要求の半分以上となる金額だ。この政府の推計が当たっていて、しかも何も対策を講じなければ、2025年頃の予算は、恐らく、発表になった概算要求を軽く超える規模になってしまっているだろう。果たして、そんなことが可能なのだろうか。
ここで、間違いのない様に、国民医療費に対し税金(概算要求の中で社会保障関係に入っている)がどれ程負担しているか、確認しておこう。ネットの「増え続ける医療費、誰がどれだけ負担しているの?」(http://thepage.jp/detail/20131127-00000003-wordleaf)(「The PAGE」)に依れば、窓口負担は一般的に3割だが、自己負担を軽減する高額療養費制度などを勘案すると、最終的な負担割合は、税金が4割、企業からの保険料徴収が2割、国民からの保険料徴収が3割、患者の自己負担は1割程度になるのだという。平均的にではあるが、1割程度の自己負担で医者に掛かれるとは、現行制度は誠に有難い制度である。
しかし、何故医療費は増え続けるのだろうか。ここで改めて論じるまでも無く、主な原因は、急速に進んでいる高齢化社会の到来だ。高齢者は、病気に対する免疫力は低下するし、運動機能の衰えにより怪我もしやすくなる。必然的に医療機関に掛かる事も増え、医療費が増大するのだが、その他に、先ほどの日本経済新聞に載っていた、欧米に比べ突出している過度の診察(病院通い)も、医療費増大に拍車をかけている。記事に依れば、2009年の日本人の診察回数は年平均13.1回だという。記事中に掲載されている6カ国の比較グラフから読み取れば、日本以外で一番多いドイツの凡そ1.5倍ほど、中位の英国の約2.6倍、一番少ないスウェーデンの4倍ほどにもなっている。これらの国々並みの診察回数であれば、かなり医療費も抑制される筈だ。では、どうしたら診察回数を減らせるだろうか。実は、秘策がある。ただし、主に企業と社員を対象とした対策だ。
まず、社員一人当たりの診察回数と窓口負担金額の目標値を国が設定する。例えば、「診察回数は一人当たり年8回、窓口負担を年総額で2万とする」、といった具合である。その回数や金額に社員数を掛けたのが、その企業の目標値とする。その目標値を下回った企業には、翌年、一定の割合で企業負担の保険料率を下げる特典を与え、逆に上回った場合には、料率を上げて行くのである。勿論、上限も下限も設けるのは言うまでもない。次に企業は、会社の中で同じような事を行い、成績に応じて、商品券などを個人に還元する。
そうすることによって、企業は、負担を減らそうと社員の健康に気配りをし、健康増進運動を積極的に取り入れて行くようになる筈である。また個人も、不要不急の診察は控えるようになり、自らの健康増進には真剣に取り組む筈である。何より、働き盛りの年齢の時を健康的に過ごせば、高齢者になって顕在化する生活習慣病は、劇的に抑えられる筈だ。勿論、高額療養費制度など、現行の優れた制度は残すことが大前提である。
これが私の考える秘策、医療費削減の特効薬だが、新任の塩崎恭久厚生労働大臣殿、如何だろうか?
【文責:知取気亭主人】
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孫の代まで続く制度であってほしいものである |
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