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知取気亭主人の四方山話
 

『袖触れ合うも…』

 

2014年9月10日

諺に「袖触れ合うも多生の縁」とあるが、先日、正にそれを実感する楽しいひと時を過ごさせてもらった。東京に出張した時の事だ。金沢から上越新幹線への乗り継ぎ駅となっている越後湯沢まで乗った「特急はくたか」が、1本前に出発した同じ特急電車の故障で、到着が1時間ほど遅れてしまった。結局、乗り継ぎ予定の「新幹線とき」には間に合わず、1時間後の「とき」に乗ることになった。電車を待つホームの上は、2本分の乗客でごった返している。ところが、その電車には、ホームで待つ2本分の乗客に加え、多分我々より1本後の「はくたか号」の乗客も乗り合わせることになったのだろう、2階建ての車両だったのだが、想像以上に込み合うことになる。

そんな電車の遅延騒動の中で、たまたま隣り合わせた感じの良い若者と、「袖触れ合うも…」を体感させてもらったのだ。東京までの僅か1時間余の短い時間ではあったが、私には聴くことすべてが新鮮で、あっと言う間に東京に着いた。正に、電車の遅れが取り持った“縁”、とでも言う出来事であった。

乗り継ぎが出来なかった新幹線の指定券を持っている乗客に用意してくれたという車両に乗り込み、空いている窓側の席を見つけ座った。「取り敢えず空いている席に座っていてください」とのアナウンスがあっての事だったのだが、暫くすると、「その席ですが…」と若者(仮にAさんとしよう)が申し訳なさそうに声を掛けてきた。事の次第を説明すると、「そうらしいですね」と爽やかな返事が返ってきた。言葉を交わしながら通路側に席を移動し、本当に「袖触れ合うも…」との関係になった訳である。

Aさんは、猫や小型の犬などを入れて持ち運ぶペットキャリーを足下に置き、窮屈そうに座った。暫く聞き耳を立てていたのだが、キャリーの中で動き回る音も、鳴き声も聞こえてこない。随分と静かなペットだなと思い、「ワンちゃんですか?」と声を掛けてみた。すると、「いいえ、モルモットです」と思ってもみない言葉が返って来た。

モルモットと言えば、病理学の実験用として使われる動物位しか思い付かない私は、思わず「エッ、モルモットってペットになるんですか?」とオウム返しに聞いてみた。すると、「なりますよ。ただ、専門家が少なくて…」との返事。この最初のやり取りで、私の知りたがり癖に火が点いた。

「大きさはネズミぐらいですか?」と両手で示すと、「イヤ、普通のウサギよりちょっと小さい位、小型のウサギぐらいです」とAさんも両手で示す。想像を超える大きさだ。モルモットとハツカネズミの区別も定かでない私には、それさえも衝撃的な情報なのに、その後の情報全てに驚かされる事になる。

キャリーを開けて見せてくれたその中には、ふさふさの長い毛で全身を蔽われた、まるでウサギの様な可愛らしい動物が静かにうずくまっている。Aさんのペットは、モルモットの中でもコロネット種と呼ばれる種類らしく、一見するとウサギの様だが、ウサギと違って耳がほとんど見えないくらい小さい。それにしても、これまで知り合ったペットとは違い、随分大人しい。寝ているのか、緊張して全身がこわばっているのか、全く動かない。声も上げない。聞くと、元々モルモットは大人しいのだという。

餌は牧草を主としているが、野菜も食べるという。ただ、人参は生で食べるのに、カボチャは乾燥したものが好みらしく、人間と一緒で多少は好き嫌いがあるのだろう。寿命は大体6歳位までで、長くて8歳だという。意外と短命だ。でもその分成長が早いのだろう。「自分のは今2歳4か月で、部屋で飼っていて…」と話すAさんの声は、何となく嬉しそうだ。なついてもいるらしい。それを聴いていると、こちらも何となく楽しくなってくる。そこで、別れ際に、図々しくも写真をお願いしてしまった。そして間もなく、可愛らしい写真が沢山送られてきた。その中から、私の独断と偏見で選んだのが、以下の写真だ。

モルモットは南米を原産地としていて、英語名をguinea pig(ギニー・ピッグ)というらしく、pigとついている通り家畜として飼われている地域もある、と説明してくれた。でも、送ってもらった愛らしい写真をみていると、彼の地の食文化とは言え、食用とは何とも可愛そうだ。でも、その分飼い易いのかもしれない。そんな思いも頭の片隅に置いて、それでは、日々の疲れを癒していただこう。

なお、モルモットの大きさは、一緒に写っているリンゴや人の指との比較で想像して頂きたい。では、どうぞ!

 

  

如何だっただろうか。小動物の愛らしい仕草は、本当に癒される。ストレス社会の真っ只中で生きる皆さん、こんな可愛いモルモットをペットに如何だろう。Aさんの話では、相当なついてくれるらしい。ただし、専門家が少なく、診察してくれる動物病院が意外と少ない事を念頭に置く必要はありそうだが…。

最後に、初対面にも拘らず、私のとんでもない我儘を聞き入れ、沢山の、愛らしい写真を送ってくれたAさんに、この場を借りて改めてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

 

【文責:知取気亭主人】

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