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知取気亭主人の四方山話
 

『御嶽山の噴火』

 

2014年10月8日

御嶽山が先月27日に突如噴火してから、7日で早くも10日が経った。捜索が進むにつれ犠牲者の数は増え、とうとう54人となった。しかも、入山名簿や駐車場に放置されたままになっている車などから、安否が分からない人がまだ多数いるという。ところが、捜索地点が噴火口に近い所もあって火山ガスを心配しながらの活動である事に加え、急勾配の上に積もった火山灰による足元の悪さ、その上土・日には雨も降り、捜索活動を一層困難なものにしている。ただ、気象庁が「火山性微動の振幅が大きくなっている」と30日朝に発表したものの、その後の火山活動が活発化していないのがせめてもの救いだ。

火山活動は活発化していないのだが、警察と消防、それに自衛隊が加わった捜索活動は、困難を極めているのが実情だ。ニュースとして流された捜索隊自らが撮影した映像を見たが、二次被害を出さないギリギリのところで、懸命に捜索活動をしているのが良く分かる。こうした足下が悪い中での捜索活動の様子を知れば知るほど、山の天候が少しでも長く安定していてほしいと思う。

しかし、御嶽山は3000メートル級の高山であるため、天候は変わり易く、そろそろ雪も心配しなくてはいけない。7日のニュースでは、「昨日(6日)までの雨で凍っているところもある」と報じている。山頂は既に冬が直ぐそこまで来ているらしい。仮に雪が降ったとなると、捜索活動はより一層困難を極める事になる。これからの捜索活動は、ますます天候との競争になりそうだ。そういう意味でも、土、日の両日が台風18号の影響で捜索が中断されたのは、安否不明者にとっても捜索隊にとっても痛い。兎に角、1日でも長く天候が安定し、捜索活動が順調に進むことを願うばかりである。

しかし、何が戦後最悪の火山災害にさせたのだろうか。秋の行楽シーズンで登山者が多かったことも、突然の噴火だったことも、また活火山とは言え警戒レベルが平常を表すレベル1のままだったことも、被害を拡大する要因だったに違いない。ただ、それらは尊い命を奪った直接の原因ではない。「では何が直接的な原因だったか」と言えば、今回犠牲になった人の多くは、噴石による外傷が直接の原因だという。確かに、4日に放送された、NHKスペシャル「緊急報告、御嶽山噴火 〜戦後最悪の火山災害〜」を見たが、山小屋の屋根に開いた大きな穴や、山頂付近を覆う一面の火山灰に開いた無数のクレーターは、その噴石の威力の物凄さを物語っている。また、山小屋の板壁に突き刺さったままになっている噴石も映し出されていたが、石が木に突き刺さるとは、そのスピードたるや生半可ではない。それを裏付ける様に、噴石で出来た穴の分布状況から割り出された落下速度は時速300キロメートルに達する猛スピードだった、という専門家の見立てもある。こんなスピードで人間に当たったら、例え石の欠片でも、ひとたまりもない。

ところが、登山者を襲った噴石は、そんな小さなものではなかった。登山者自身が撮った映像を見ると、欠片どころか、かなり大きな噴石も飛び交わっていたことが分かる。中には、ビュンビュンと大きな音を立てて飛び交う、コンクリートブロック大の噴石も記録されている。それどころか、九死に一生を得て無事下山した人の証言に依れば、大きなものでは軽トラック大のモノもあった、というから恐ろしい。火山エネルギーの桁外れの大きさを、まざまざと見せつけられた思いだ。

恐ろしいと言えば、前掲のNHKスペシャルを見ていて、私自身は当事者でないのにも拘らず、録音されていた噴石の音にも恐怖を感じてしまった。噴煙により一気に画面が真っ暗になったからなのかもしれないのだが、暗闇の中で噴煙と共に襲ってくる噴石の不気味な音は、恐怖感をいやがうえにも煽り立てる。ビュンビュンと飛び交う音、火山灰に突き刺さる鈍い音、岩に当たったらしき甲高い音、或いは山小屋の板を突き破ったであろう大きな音などが、避難者の悲鳴と供に録音されていて、暗闇の中で肩を寄せ合う被災者は、さぞかし恐ろしかったことだと思う。こんな音を聞いただけでも、噴石の恐ろしさが伝わってくる。

ところで、日本には、「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」と定義された110もの活火山がある(2011年6月制定)。そして、その中には、「火山防災のために監視・観測体制の充実等が必要な火山」として、火山噴火予知連絡会によって選定された(2009年6月)、今回噴火した御嶽山を含む47の火山が含まれている(http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/47volcanoes.pdf)。更にその47火山の中から、今回適用されたレベル3の入山規制の様に、「噴火警戒レベル」が適用されているのが30ある。因みに、石川県と岐阜県に跨る白山は、47の活火山にはカウントされているが、噴火警戒レベルが適用される30の火山には入っていない(気象庁ホームページ参照:http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/kaisetsu/level_toha/level_toha.htm)。

しかし、白山も地元では人気の山だ。私は登ったことはないが、夏の高山植物も秋の紅葉も、それは見事だという。この様に、日本の高い山は火山に限らず人気があり、登山人気もあって、登山者は年々増えているのだと思う。となると、もう少し安全に配慮した防災施設の設置や警戒レベルの運用が必要なのではないかと思う。

例えば、白山には、木造の山小屋はあるものの、噴火の際の高強度のシェルターは設置されていないという。少なくとも、活火山と指定された110のうち海底火山を除く山には、こういったシェルターは必要だと思う。また、今回の災害を教訓に、例え小さくても、これまでと違う現象が観測された場合には、警戒レベルを上げるなどの措置が必要ではないだろうか。いずれにしても、今回のこの噴火災害を教訓に、火山防災が着実に進化することを願っている。亡くなった方々や残された遺族のためにも、である。

【文責:知取気亭主人】

  
キク
 

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