2014年10月29日
「水は漏れ出したら止まらない」と言うが、それは政治の世界でも当てはまるらしい。安倍首相が9月に組閣をして新しい大臣たちが働き始めた途端に、政治資金などにまつわる濁った水が漏れ出した。前任の内閣には全くと言って良い程漏れ出してこなかっただけに、格好の国会論戦の標的となって、二人の新任大臣が早々と辞任してしまった。それも安倍内閣の目玉人事の女性閣僚だっただけに、野党は勿論、世間の風当たりも強い。しかも、9月3日に大臣に就任したばかりだったのに、揃いも揃って、二人とも10月20日には辞任してしまうのだから、呆れてしまう。大臣としての実働は、僅か2ヶ月にも満たないのだ。それに輪を掛けて、後任大臣にも笑い話にもならないような醜聞が報道されていて、安倍内閣に吹き荒れている嵐は、今暫く収まりそうにない。
それにしても、お粗末な話である。将来の首相候補とも目されていた小渕優子前経済産業大臣の場合は、時代錯誤とも思える政治資金の不透明さに加え、支持者に自身の写真入りラベルが貼られたワインを送っただの、姉のブティックから大量の買い物をしただの、誰が指示を出したのかはさておいて、有権者にとってはアングリとして空いた口も塞がらない呆れた話である。収支報告で合わない金額も、我々からするとビックリ仰天する程高額だ。本人承知の上なら国会議員失格だと思うし、政治資金の管理を任せっきりにしていたというなら「非常識」が付くくらい脇が甘い。どちらにしても、報道されている諸々の経費(?)の金額を考えると、1円でも安い食材を買い求める主婦の感覚とはエライ違いである。小渕氏がこうした庶民との金銭感覚のズレを持っているとすれば、大臣を続けていたとしても、庶民サイドの政策は期待薄だった可能性は否定できない。
それでも、ともあれ小渕氏の場合は、ある意味非常に分かり易い辞任だった。その原因も、辞任会見の説明も、である。それに比べると、もう一人の松島みどり前法務大臣の場合は、原因は比較的はっきりしているのだが、国会での答弁も辞任会見での説明もイマイチ分かり難い。そもそも、祭りで配ったとされる「うちわ」に関する国会での問答たるや、「国民をバカにしているのか!」と声を荒げたくなる様な珍定義を披露して、巷では笑い話のタネとなっている。
そこで、例によって、「うちわ(団扇)」を国語辞典(旺文社、第八版)で調べてみた。それに依れば、「うちわ」とは、「竹などの骨に紙や布などを張り、あおいで風を起こす道具」とある。これを素直に解釈すれば、テレビやネットで流れている映像を見る限り、松島氏が配った「うちわの様な配布物」は、紛れもなく「うちわ」である。それを、「活動報告や政策等を印刷して配るその様な配布物で、うちわの様に見えるかもしれませんが…」とか、「そういう様な使い方をすればそうかもしれない…」等の珍答弁を繰り広げるのだから驚いてしまう。流石法務大臣、肝が据わっているというか、詭弁を弄し解釈を変えてしまうのも慣れたものですな、と変な関心をしてしまう。しかし、悲しいかな、我々庶民にも、どうやったら罪に問われない様に誤魔化すか、というのが見え見えだ。
松島大臣と言えば、大臣就任直後の国会に赤いストールで登壇して物議をかもした際にも、「これはマフラーだ」と言い張ったと報道されているから、言い訳には慣れていらっしゃるのかもしれない。それにしても、手に持つ柄も付いていて、子供に「これは何?」と訊いても、誰もが「うちわ」と答えるだろう代物を、「うちわの様な配布物」とは良く言ったものである。しかも、法務大臣という立場での言い訳だから性質が悪い。まさか大臣の座を守るために“内輪の理論”で“うちわの定義論”を繰り広げた訳では無いと思うが、余りみっともない言い訳はしない方が良い。益々立場を悪くするだけだ。
しかし、水漏れはこの二人に留まらず、小渕前大臣の後任に指名されたばかりの宮沢洋一経済産業大臣にも、唖然とする情報が漏れ出した。自らの政治資金管理団体がSMショーなどを行っているバーに「交際費」名目で支出していたことが分かった、というものだ。宮沢大臣自身は行っていないようだが、身内の不祥事であることに変わりない。見に行っただけなのかショーに参加までしていたのかは定かでないが、行くのは個人の自由だとしても、その費用を政治の必要経費として計上するとは、常識の外だ。我々会社人にすれば、会社の必要経費としてSMバーの領収書を添付して認めてもらった、と同じことだ。絶対に有り得ない話だ。それを堂々と計上したのだから、政治の世界は分からない。こんな常識外の事が堂々と行われているとは、魑魅魍魎が住む世界とは良く言ったものである。
小渕前大臣や宮沢大臣に限らず、政治と金にまつわる黒い噂は、週刊誌を読めば枚挙にいとまがない。ところが、その噂が真実なのかどうか、我々一般国民には知る術がない。我々にできることは、投票した議員の国会での質疑や答弁に注目し、期待通りの政治活動をしているのか監視を怠らない事である。そして、行き着くところ、政治家を信じるしかないのだと思う。
そう考えると、秘書も含めた政治家の、世間とはかけ離れた内輪の理論を白日の下に晒し、国民の手でこれをぶっ壊すことが、政治の信頼を取り戻す最も確実な方法なのかもしれない。もしかすると、今回の一連の辞任騒動は、白日の下に晒す良い切っ掛けになるのかも知れない。もっとも、魑魅魍魎はそんなヤワではなさそうだが…。
【文責:知取気亭主人】
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中秋の名月
(政治がこんな真ん丸になるのは何時の事だろう?) |
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