2014年12月24日
今年も、何とか無事に、一年納めの四方山話を迎える事が出来た。嬉しい限りである。それにしても、一年経つのが速い。「一年の長さの感覚は年齢分の一だ」と聞いたことがあり、歳を取るにつれ速さを実感しているから、「成程上手い事を言う!」と納得はしている。しかし、最近の速さは尋常ではない。分母の年齢を2倍も3倍もしているのではないか、と疑ってみたくなるほどだ。
しかし、それに比べると、3.11東日本大震災の被災地復興の歩みは、何とも歯がゆい。あの日から早くも3年9ヶ月が過ぎたというのに、昨年の同時期と比べて約4万2千人減ったとはいうものの、まだ約23万6千人もが避難生活を余儀なくされている(11月13日現在、復興庁発表)。また、これまでに総務省消防庁がまとめた死者は、平成26年9月1現在1万9074人、行方不明者は2633人にも上る。早くも3回目の冬を迎えているというのに、これだけの行方不明者がいるという事にも驚かされる。家族の皆さんの心痛はいかばかりだろう。被災地では、希望を持って新年を迎えられる人が増えてきているのだろうか、心配だ。被災者の皆さんに一日も早く、元の平穏な生活が戻ってくることを、願ってやまない。
ところで、一年を振り返ってみると、今年もいろいろなことがあった年であった。明るい話題では、何と言っても、三人の日本人研究者が青色LEDの研究・実用化でノーベル物理学賞を受賞したことだろう。また、テニスの世界で大活躍した錦織選手も、日本中に感動を与えてくれた。一方、暗いニュースとしては、御嶽山の噴火や広島市を襲った土砂災害が、悲しい記憶として刻まれている。また、泣きじゃくり会見の市議や女性蔑視の低俗なヤジで物議を醸した県議や都議がいて、地方議員の程度の低さが国民を呆れかえさせた。
いつものように悲喜こもごもの一年だったが、例によって、一年間書き綴った「四方山話」を紐解き、印象深い出来事を拙い狂歌で振り返ってみたい。
スタップ(STAP)は 巨大な夢の シャボン玉 急にしぼんで 吹かれて消えた
凡そ1年前、「これまでの生物学の常識を覆す大発見」と騒がれた、“新型の万能細胞作製”のニュースが、世界を駆け巡った。「STAP細胞」と名付けられたその研究成果は、「iPS細胞の山中教授に続いてノーベル賞の受賞も夢ではない」と大いに期待されたが、1年も経たずに、その存在そのものが否定されてしまった。「STAP細胞は、マウスのリンパ球などの細胞を紅茶程度の弱酸性の溶液に30分ほど浸け、上澄みを取り除いて、その後3日間培養するだけで作成できる」というその極めて簡単な方法は、イギリスの科学雑誌ネイチャーに初めて投稿したときに、「何百年にわたる細胞生物学を愚弄している」との厳しい意見が付けられて突き返された、と報じられていたが、どうやらネイチャーの判断は正しかったようだ。
暮れも押し迫った12月19日、理化学研究所は、小保方晴子研究員によるSTAP細胞の検証実験で、細胞の存在は確認できなかった、と発表した。別のチームの実験でも確認できなかったらしく、18日で実験を終了したというのだ。研究成果の発表元である理化学研究所が検証実験を打ち切ったことで、STAP細胞の存在は事実上否定されたことになる。時の人となった小保方晴子研究員からは21日付で退職願が出されたらしいが、指導教授の自殺という衝撃的な事件もあっただけに、何とも割り切れない幕切れであった。本当にSTAP細胞はシャボン玉だったのだろうか…。
春が来て アベノミクスの 風邪流行り ゼイゼイゼイと 息も絶え絶え
一昨年暮れに政権に返り咲いた安倍首相は、「大胆な金融緩和」、「機動的な財政出動」、「成長戦略」の「三本の矢」と称する経済政策を打ち出した。アベノミクスと呼ばれるようになったこの政策により、為替レートも政権発足以来円安に振れ(この年末には一時期120円に届くほどになった)、一部業種に偏っているきらいもあるものの、多くの企業で業績改善が見られる様になったという。それに意を強くした安倍政権は、今年の4月、予定通り消費税率を5%から8%に引き上げた。ところがその結果、景気は税率アップ後も堅調に推移すると見込んでいたのだが、直前の駆け込み需要の反動による景気落ち込みが激しく、各種景気動向指数は下振れしたままだ。庶民にとって3%の税率アップというのは、政府が考える程甘くはなかった、ということである。
それもあって、来年の10月に10%への再引き上げが予定されていたが、それを約1年半先送りして、2017年4月には必ず上げるとの政権公約を掲げ衆議院の解散総選挙へと打って出た。その結果は知っての通り、自民党と公明党の連立与党が、定数475議席の3分の2を超す326議席を獲得して圧勝した。“税率引き上げの先延ばし”に賛成票を投じたのか、“引き上げの約束”に投じたのかは知る由もないが、これで安倍首相は、「国民は10%への引き上げを認めてくれた」と自信を深めたに違いない。引き上げは、私も致し方ないことだとは思っている。しかし、上げる前に無駄の削減を徹底的にやるのが大前提なのだが…。
LED ジグゾーパズルに 良く似たり 受賞の青色 最後のピース
今年、日本に関する一番嬉しい大きなニュースは、言わずと知れた、三人の日本人の「ノーベル物理学賞」受賞だろう。受賞の栄誉に輝いたのは、名城大学教授の赤崎勇氏(85歳)と名古屋大大学院教授天野浩氏(54歳)、そしてカリフォルニア大サンタバーバラ校教授中村修二氏(60歳)の三人だ。これで、日本人のノーベル賞受賞者は、一昨年の山中伸弥京都大学教授に続いて、22人となった。
三人の受賞は、知っての通り、共に青色発光ダイオード(LED)の開発・実用化が評価されてのことだ。既に実用化されていた赤色と緑色に加え、実用化が難しいとされていた青色が実用化されたことで、光の三原色が揃い、フルカラーの薄型テレビやコンピュータのカラーディスプレイ等が実用化されたという。正に、「中々完成しなかったジグゾーパズルの最後のピースを三人の手ではめた」と表現したい程で、世界の人々に与えた恩恵は計り知れないものがある。
彼の国の 漁民はまるで 猫の様 餌(サンゴ)を盗るのは どこでも勝手
10月頃から、小笠原諸島の周辺で中国漁船によるサンゴの密猟が相次ぎ、大きなニュースとなった。多い時には200隻を超える船が違法操業していたらしく、地元漁師には怒りと共に不安を募らせていたという。それはそうだろう。自分達の漁場だと思っていた所に、何倍もの数の船が押し寄せ、しかも悪い事をしているのに、そんな素振りも見せず堂々操業しているというのだから性質が悪い。やりたい放題の密漁は、生態系の破壊まで心配されている。自由勝手なその行動は、まるで泥棒猫の様だ。こういった漁船団の行動は、尖閣との兼ね合いも取り沙汰されたこともあるが、さてどうなる事やら…。
はやぶさに 浦島重ね 玉手箱 待つも楽しみ 開けるも楽しみ
12月3日、待ちに待った「はやぶさ2」が、種子島宇宙センターから打ち上げられた。小惑星「いとかわ」から微粒子を採取して地球に見事帰還した、あの小惑星探査機「はやぶさ」の後継機だ。「はやぶさ2」では、前回の「いとかわ」ではなく、C型小惑星と呼ばれる炭素でできた小惑星の1999JU3を目指している。1999JU3は炭素でできていることから、有機物存在の可能性があるのだという。期待は膨らむ。地球の歴史を紐解くのに役立つサンプルを、是非持ち帰ってもらいたいものである。
しかし、今回の旅路も壮大だ。2018年に目標の小惑星に到着してサンプリングを行い、2020年に地球に帰還予定である。6年にも及ぶ大航海だ。しかも、2020年と言えば、丁度東京オリンピックが開催される年である。オリンピックもそうだが、「はやぶさ2」の成功も、国民に大いに勇気を与えるに違いない。科学に興味を持つ若者を増やし、科学立国としての日本が元気づくためにも、有益なサンプルをたくさん持ち帰ってほしいものである。2020年、私は70歳を過ぎて待つことになるが、兎に角楽しみだ。
今年も何とか年末を迎えることができました。これも一重に拙い文章にお付き合い下さる皆様のご声援・ご愛読の賜物、と深く感謝しております。本当にありがとうございました。皆様にとって迎える年が素晴らしい一年になりますように、そしていさぼう会員皆様のご多幸とご健勝を祈念して、四方山話2014年の締めと致します。
【文責:知取気亭主人】】
|
読者の皆さんに幸運が舞い込みますように! |
|