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2018年6月13日
また、いじめに関する大人たちの行動が非難を浴びている。おととし自殺した神戸市の女子中学生に関する話だ。
「またそんな話か!」とウンザリさせられるが、当時の教育委員会担当者と校長が「残っていない」としていた“
聞き取りしたいじめを裏付けるメモ”が実際には残っていた、と今頃になって隠蔽を明らかにしたのだ。
調査が進むにつれ、隠し立てできなくなったらしい。「本当のところはどうなん?」と、問い詰めてやりたい気分だ。
しかし、冷静になって考えると、今回の教育現場も然りだが、国を揺るがしている行政でも、また日本を代表する企業でも、
隠蔽や改竄によって大きな社会問題を引き起こしている。こうした一連の不祥事の報道が引きも切らない現状からすると、
とどのつまり、隠し事を無くすということはヒトの性としてどだい無理なこと、なのかも知れない。
真実を隠そうとするのは、真実が明るみに出ると当事者にとって都合が悪いからだ。或いは、面倒くさい揉め事に巻き込まれたくない、
といった当事者意識の低さも影響しているのかも知れない。いずれにしても、そうした“何かを守りたいと思う強い思い(多くの場合、
自らの保身)”が、隠蔽に手を染めるきっかけとなっている。何かを守ろうとする思いは誰にでもあることで、行政や企業の不祥事を
持ち出すまでもなく、隠蔽されている真実は、古今東西を問わずこの世の中にはたくさんある。
ところがこの隠蔽、当事者たちが死んで時が経ち傍証できる資料が散逸してしまうと、真実に辿り着くことは極めて困難になる。
時代が古くなればなるほど難しくなる訳で、古代史と呼ばれる歴史書に書かれている内容の真偽となると、「本当のところはどうな
ん?」が増え、殆どミステリー小説ばりの謎解き世界となってしまう。だからこそ逆に、歴史好きにとって古代史の解明は、ロマン
を掻き立てられるのだろう。卑弥呼が君臨したと言われる邪馬台国(2〜3世紀頃)や大和朝廷の所在地をめぐる論争、然りである。
また、「記紀」(古事記と日本書紀)に書かれている内容の真偽をめぐる論争も、然りである。
そんな日本の古代史に一石を投じた本がある。佐々木慶三著『背徳と反逆の系譜 記紀の闇に光はあるか』(丸源書店刊、2017)である。
「記紀」を扱った本としては随分ミステリアスなタイトルが付けられているが、タイトルにたがわず、内容も十分にミステリアスだ。
ただ、本書を読み解くには難題があった。私は歴史が苦手なのだ。学生時代から年代や人の名前を覚えることが苦痛で、当然大学受験では地理を選択した。
そんな歴史に対する苦手意識は今でも残っていて、「記紀」ともなると尚更チンプンカンプンだ。お蔭で、本書を読み始めてすぐに、鉛筆とメモ用紙が
必需品になった。歴代天皇の名前は勿論、「その天皇が誰の子、或いは第○代天皇の孫で、その母は…」と説明されると、メモを取って家系図を書か
ないと全く頭に入ってこないのだ。しかも、「記紀」を読んだことがないから尚更である。
「記紀」ど素人の私が、読み始めてすぐに驚かされた記述がある。歴代の天皇には100歳を超える長寿命の天皇がいるというのだ。
現代でも100歳を超える人は滅多にいないのに、である。古事記によると、初代の神武天皇137歳、第6代孝安天皇123歳、第7代孝霊天皇106歳、
第10代崇神天皇168歳、第11代垂仁天皇153歳、第12代景行天皇137歳、第15代応神天皇130歳、第21代雄略天皇124歳、と8人もいるらしい。しかも
最高齢は168歳である。今から1500年以上も前の時代に100歳を超えるとは、すさまじい生命力である。
こうした超長寿を与えたのは、 ”万世一系を守るため” に帳尻合わせをしたのではないか、と著者はいう。他にも親子兄弟の血みどろの戦いや、
父(第8代孝元天皇)の妃を子(第9代開化天皇)が皇后にするなど、現代では決して許されることのない行いが「記紀」を読み解くと分かるらしい。
姉弟の許されない愛も読み解けるという。タイトルに言う「背徳と反逆の系譜」は、こうしたことを指しているのだろう。
他にも、驚かされる謎解きが幾つもある。最も驚いたのは、皇族以外の豪族出身者が天皇であったことが二代ある、という推理である。著者は、
『日本書紀最大の改竄とは、二人の天皇の名を皇后に付け替えることで、万世一系説の破綻を取り繕ったことだ。』と述べているが、果たして
どうなのだろう。その二人の天皇とは、蘇我馬子が即位していたと考える第33代推古天皇と、蘇我入鹿が即位していたとする第35代皇極天皇である。
いずれも女帝とされる天皇だ。蘇我一族と藤原一族の争いによって、蘇我一族は衰退の一途をたどる訳だが、古事記上梓の時期が藤原一族の権力基盤を
固めていた時期だと聞くと、何やら陰謀めいたものを感じてしまうのだが…。
本書は空想で書かれたものではない。丹念に「記紀」を読み解き、多くの文献を参考に書かれたものだ。書き方も変わっていて、“研究レポート”と“小説”を組み合わせたハイブリッドなスタイルになっている。自分の研究成果を小説として書き表しているのだ。私のような「記紀」ど素人には手ごわい相手だったが、
歴史好きには堪らないのではないだろうか。ただ、信じるか信じないかはあなた次第である。
折しも、今年は平成最後の年である。そうした年に本書を紹介するのは、何かの巡り合わせなのかも知れない。
【文責:知取気亭主人】
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『背徳と反逆の系譜 記紀の闇に光はあるか』
【著者】佐々木 慶三
【出版社】 丸源書店
【発行年月】 2017/12/1
【ISBN 10】 4990445937
【ISBN 13】 978-4990445935
【頁】 単行本: 274ページ
【定価】 2000 円
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