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知取気亭主人の四方山話
 

『長き旅路』

 

2018年8月8日

今年の夏は、天体に関する話題が多い。中でも最もホットな話題は、火星の大接近だろう。今火星が15年ぶりに地球に大接近していて、特に7月31日に最も近づき、明るさは今年初めに比べて50倍を超えマイナス2.8等になったという。私もその夜に観察しようとしたのだが、生憎曇っていて見ることができなかった。しかし、チャンスはまだある。国立天文台の天文情報(https://www.nao.ac.jp/astro/feature/mars2018/)によると、夏休みの間中もそうだし9月上旬にかけても、十分明るく見頃だという。是非赤く輝く火星を眺め、いずれ実現するであろう有人火星探査に思いを馳せたいものである。

もうひとつのホットな話題は、「はやぶさ2」による小惑星「りゅうぐう」への到着だろう。「はやぶさ2」は、2014年12月3日に打ち上げられ、3年半もの長い旅を経て、6月27日に上空20キロまで接近した。その後、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、上空6キロまで降下して撮影した岩だらけの表面写真を公開した。30億キロも旅をして、直径900メータ程の小さな目的地に狂いもなくたどり着くとは、何とも凄いものだ。しかし、JAXAは何でこんな小さな惑星を探査するのだろうか。それは、「我々はどこから来たのか」という人類の根源的な疑問を解き明かすためだという。

JAXAによると、「りゅうぐう」は、初代の「はやぶさ」が探査した「イトカワ」に比べより始原的な天体(http://www.hayabusa2.jaxa.jp/mission/objectives/を参照)だという。撮影された写真を見ると岩だらけだとは分かるが、これらの岩には有機物や含水鉱物がより多く含まれていると考えているらしい。小さな天体故に、内部に高温のマグマができず、構成している物質が太陽系誕生の頃から変質せずにいるのではないか、とも考えているからだ。そして、地球の生物も有機物や水でできている。したがって、始原天体である「りゅうぐう」から採取したサンプルを分析することで、太陽系の起源・進化の解明と共に、生命の起源にも迫ることができるのではないか、と期待しているのだ。

「はやぶさ2」は、これから約1年半上空にとどまり、今年の秋から来年の春にかけて3回着陸してサンプル採取を試みるという。その後、「りゅうぐう」を離れ、2020年末に地球に帰ってくる予定だ(http://fanfun.jaxa.jp/countdown/hayabusa2/index.html)。後2年余も先のことだ。しかし、分析結果が出るのは更に先になる。ずいぶん時間の掛かるミッションだが、“生命の起源を探る”などと言われると、何かロマンを感じてしまう。私の中の“ロマン大好き虫”もモゾモゾと動き出した。そこで思い出したのが、長い間積読になってしまっていたロマン溢れる本である。

本のタイトルを、『46億年 わたしたちの長き旅』(高間大介著、NHK出版刊、2005)という。先の「はやぶさ2」によって解き明かされるであろう生命の起源のその後、生命が誕生して人類がこの世の春を謳歌するようになった現代までを辿る、人類にとって気の遠くなる様な長い旅路を扱った本である。本の帯に書かれているように、2004年に放映されたNHKの番組、NHKスペシャル「地球大進化」から生まれた本だ。同番組が非常に面白かったこともあり、本屋で見つけてすぐに飛びついた。飛びついたものの今日まで読まずに来てしまったのだが、「はやぶさ2」の活躍のお蔭でやっと日の目を見ることができた、という訳である。

それにしても、私たち人類の歴史を地球誕生の46億年前から辿るとは、何と壮大な番組だったのだろう。ただ、本書を読めば、46億年前から辿る理由が、もう少し我が事として実感できる。というのも、地球上に生息しているあらゆる生命は、たった一つの系統の生命から出発して現代に至っている、と考えられているからだ。子供たちに人気の恐竜の絵本に良く描かれている様に、地球上に生息している生物は、46億年の地球史の中で幾重にも枝分かれして今に至っている訳である。

現在の地球には、名前がわかっているだけで180万種類以上もの生物が生息しているらしい。これだけでもすごい数なのだが、未知の生物を含めれば、3,000万種とも1億種とも言われているという。これだけ多種多様な生物がたった一つの生命から出発したというのだから驚かされる。その考え方の根拠は、今地球上に生息する生命は皆同じ“DNAという遺伝システム”によって命を繋いでいるからだという。犯人逮捕の決め手になる、としか思っていなかったDNAだが、実は私たちにとってかけがえのないシステムだったのだ。

では、“現在分かっている最古の生命の痕跡は”と言うと、グリーンランドにあった38億年前の堆積岩から見つかっているらしい。ただ、“痕跡”と表現しているように、何かの化石が見つかった訳ではなく、含まれていた炭素を分析したところ、生物由来と思われる数字が出ただけだという。しかし、それが私たちのご先祖様の痕跡なのである。こうした僅かな痕跡も含め、「私たちとは何者なのか」を追い求め、遥かな旅路が始まる。この先、私たち人類が出現するには、幾多の波乱万丈のドラマを乗り越えていかなければならない。本書は、そうしたドラマに登場するキー生物や時の背景などを美しいカラーイラストで表現しながら、分かり易く遥かな旅路にいざなってくれる。大好きな本だ。

この猛暑で朦朧としている脳をクールダウンするには、こうしたロマン溢れる読み物が最適だと思う。ビールなど飲みながら、本書を片手に「はやぶさ2」のミッション成功に思いを馳せる、如何だろう?

【文責:知取気亭主人】

46億年 わたしたちの長き旅 『46億年 わたしたちの長き旅』

【著者】 高間 大介
【出版社】 NHK出版
【発行年月】 2005年02月25日
【ISBN】 978-4-14-081019-4
【頁】 224ページ
【定価】 1,836円(本体1,700円)

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