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知取気亭主人の四方山話
 

『やっぱり想定外?』

 

2018年9月12日

先週は、“災害列島日本”を嫌というほど実感させられた一週間となった。週の初めには台風21号が上陸して強風が吹き荒れ、近畿地方を中心に甚大な被害を発生させた。そして、その被害の全容もまだつかめないでいた週半ばの6日(木)未明(3時8分)、「平成30年北海道胆振東部地震」と命名された、最大震度7を観測したM6.7の大きな地震が発生し、震源地に近い厚真町を中心に大きな被害をもたらした。

今回のこの災害。台風と地震という全く違う災害なのだが、どちらにも共通する特徴的な被害があった。そのひとつは、日本を代表する空港が被災し、被災直後は完全閉鎖に追い込まれ、機能不全に陥るという事態になったことだ。3.11の時の仙台空港以来である。日曜日現在、一部の便は飛び始めたものの完全復旧には至っておらず、旅客ばかりでなく貨物輸送など、空港を利用する各方面に大きな影響をもたらしている。台風21号による高潮で浸水した関西空港は西日本の玄関口、また地震で被災した千歳空港は北海道の玄関口で、両空港とも外国人観光客が多い。そうした観光客への対応のまずさがニュースで取り上げられており、折角人気が出始めた日本観光の魅力に水を差さなければいいのだが、と心配している。いずれにしても、危機管理の甘さが浮き彫りになった格好だ。

もう一つは、大規模停電が発生していて、電気インフラの脆弱性が顕在化してしまったことだ。台風21号の強風によって、大阪府では電柱が根元から何本もなぎ倒された。通電障害は勿論、通電もできない。11日のニュースでは、大阪府下では停電地域はなくなったと言っていたが、元の状態に戻るにはまだまだ掛かるだろう。以前から、防災上無電柱化を早急に進めるべきだと指摘されていたが、その対応の遅れが結果的に今回の電柱倒壊を招いてしまった。

一方、胆振東部地震でも、発災直後には一時的に295万戸に上る大規模停電が北海道ほぼ全域にわたって発生し、大混乱をもたらした。いわゆるブラックアウトだ。この全域停電の原因は、震源地に近い苫東厚真発電所(石炭火力)の緊急停止によって、北海道全域の需給バランスが崩れたためだという。その詳しいメカニズムは報道に任せるが、こうした事態が想定されていなかったのはエネルギーインフラを担う企業としては危機管理がお粗末ではないか、と思ってしまう。やがて発災から1週間が経とうとしているが、いまだに計画停電の危険性が拭い去れないでいる。恐らく、今回は「想定外の事態」だったのだろう。危機管理に「想定外」はあってはならない筈なのに…。

想定外という意味では、台風21号の強風によって、関西空港の連絡橋にタンカーが衝突した事故もそうだろう。まさか、連絡橋(真ん中に鉄道橋、両側に道路橋がある)に船がぶつかるとは、関空側も船の側もどちらも思ってもみなかっただろう。ましてや、その衝突によって橋が損壊し、道路橋の片方と鉄道橋が使用不可能になるなどとは、恐らくどちらの会社のBCP(事業継続計画:Business Continuity Plan)にも想定されていなかったのではないだろうか。

ところが、海上保安庁は、関空周辺では錨を下ろしたまま流される、今回の様な「走錨(そうびょう)」が過去に多発していることから、関空島に座礁する危険があるため、台風接近時などには「関空島の岸から原則3マイル(海の1マイルは1.852キロで、3マイル≒5.5キロ)以上離れた場所」に避難するよう注意喚起していたという。少し安心したが、しっかりと危険を予知していた組織があったのだ。ただ、残念ながら法的な義務はないのだという。法的な義務はないにしても、保安庁や関空関連各社、そして船会社がこうした危機意識を共有していれば発災していなかったのではないか、と悔やまれる。危機意識がなかった、あるいは甘かったのだろう。今回衝突したタンカーも、5.5キロどころではなく、関空島や連絡橋に随分近い位置に停泊していたことが、ニュース映像でも分かる。恐らく、タンカーの会社も船長も、走錨の恐ろしさを十分認識していなかったに違いない。そうした認識の甘さからすると、事故調査が進むにつれ、どちらの側からも、「想定外」という言葉が頻繁に出てくるのは想像に難くない。

また、認識の甘さという意味で言うと、高潮による関空の浸水被害も、認識が甘かったと言わざるを得ない。海に盛土した関空島が予想を超える速さで沈下していたことは、開港直後から問題となっていたことだ。護岸の嵩上げなど対策は取られていたはずなのに、(大阪湾に於いて)過去最高の潮位3.29mで、やすやすと浸水を許してしまった。東京湾、伊勢湾、大阪湾で過去最大級の高潮に襲われた時の被害額は110兆円にもなる、とニュースになったのは今年の事だ。今回の台風21号よりも遥かに猛烈な、スーパー台風の襲来が危惧されているのに大丈夫なのだろうか。

関空に言わせれば、「連絡橋損壊という想定外の事態が、一層の混乱を招いた」となるのだろうが、最悪の事態を想定して対応策を考えておくのがBCPだ。海上空港だけに、高潮時の浸水を完全に防ぐのは難しい。しかし、最悪の事態を想定して、被害を極力抑え、できるだけ早く事業を再開する方法や手順を取り決めておくことはできる。それこそがBCPであり、そこには「想定外」という言葉が入り込む余地はない。多くの人が集まり行き来する施設であるからこそ、一日も早くそうなってほしいものである。災害列島日本であるが故に、「やっぱり想定外?」と揶揄されない様な取り組みが求められる。

【文責:知取気亭主人】

千葉県浦安市の液状化被害(東日本大震災)
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