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知取気亭主人の四方山話
 

『衣更え』

 

2018年11月7日

大分朝晩冷えてきた。と言っても平年に比べればまだ温かいのだが、たまに平年並みの気温になると、会社で仲間と交わす朝の挨拶は、「大分寒くなってきたな、今朝は〇〇℃だったよ!」となる。それでも、10月の半ばぐらいから最低気温が15℃を下回るようになり、11月の声が聞こえるようになってきた先月の月末以降は10℃を下回る日もある。気が付けば今年も残すところもう2ヶ月を切ったのだから、この程度の朝晩の冷え込みは当然と言えば当然である。ただ、五感のセンサーが鈍くなってきたのか、それとも順応性が衰えてきたせいか定かでないが、気温の変化に体が付いて行けなくて困っている。先々週の半ばから風邪を引いてしまい、二日ほど寝込んでしまったのだ。その後も暫くは体が温まるとは咳き込んでいたが、今は何とか酒も飲めるようになった。やれやれである。

風邪を引いた原因は、体の機能が衰えてきたせいばかりではない。たまに訪れる朝晩の冷え込みと、夏日に届くかと思えるような最高気温をスマートフォンで確認するたびに、会社に着て行く服を迷い、結局若いつもりで夏服を着用して行ったことも原因の一つだ。今思えば、気温がたとえ20度を超えていたとしても、肌で感じる空気は天気予報の気温ほどではなく、吹く風は結構涼しかったのだ。そんな時、僅か30分ばかりだったにせよ、寒さを感じながらもワイシャツ姿で外にいたのがまずかった。年寄りの冷や水、とはこういうことを言うのだろう。

考えてみれば、暦の上では、この四方山話が掲載される7日は立冬である。幾ら平年に比べて暖かい日が多いと言っても、真冬に向けて気温は確実に下がって行く。と思っているのだが…。ところが、ここ金沢でもほぼ連日最高気温は20度を超えていて、ちょっと動けば冬の服装だと日中は汗ばむくらいの日が多い。とは言うものの、もう11月の中旬に差し掛かろうという時期だ。さすがに衣更えは済ませている家が多いだろう。我が家も、家内が下着も含め冬物に入れ替えてくれた。冬服を着ると、冷気を感じる朝晩でもさすがに暖かい。この年になると、情けないことに少し寒くなっただけで冬物が手放せない。

しかし、子供たちは元気だ。朝、集団登校する小学生を見ると、上着はさすがに冬物らしいが、下は素足が躍動している。男児は半ズボン、女児は短いソックスにスカート姿の子が圧倒的に多い。「寒くはないのかな?」と心配するのだが、そんな心配をよそに、元気に、そして賑やかに登校している。今から「朝晩冷えて来た」と、本格的な寒さに身構えている我々とは大違いだ。「子供は風の子、大人は火の子」とは、昔の人は上手いことを言ったものである。

しかし、年に二度も衣更えをしなければいけないとは、四季を愛でることができるとは言え、結構面倒くさい。しかも、出してくれた衣服を着て行くだけの男性はまだしも、仕舞ってある物を引っ張り出し入れ替えてくれる女性陣は大変だ。特に我が家の様に、家族が多く、狭い押入れに重ねて仕舞ってある場合は、尚更だ。重い衣裳箱を出し入れするだけでも骨が折れそうだ。ただ、そう思っていても、何をどうすればよいのか、陣頭指揮者の指示に従うばかりで、能動的に動けない。動けばかえって足手まといになってしまうからだ。我が身のことながら、男なんてだらしないものである。

ところで、この「衣更え」、「衣替え」とも書く。むしろこちらの方が一般的で、「現代国語表記辞典 第二版 武部良明編」(三省堂刊、1992)では、「衣替え」を標準的な現代表記としている。しかし、「新村出編 広辞苑 第四版」(岩波書店刊、1992)で調べると、「衣替え」ではなく「衣更え、更衣」と表記されていて、その説明は次のように書かれている。

「季節の変化に応じて衣服を着かえること。平安以降、4月1日から袷(あわせ)を着、5月5日から帷子(かたびら)、涼しい時は下衣を用いる。8月15日から正絹(すずし)、9月9日から綿入、10月1日から練絹(ねりぎぬ)を着用。江戸時代では4月1日、10月1日をもって春夏の衣をかえる日とした。」

どうやら、平安の昔から、いつ季節に合った衣服に替えるかについて、取り決めがあったらしい。恐らく役人など官職についてだけだとは思うが、そんな歴史的な取り決めがあったことに敬意を払い、ここでは敢えて「衣更え」と表記することにした。悪しからずご了承願いたい。

その広辞苑の説明によると、10月1日が冬支度への衣更えする日とある。勿論、旧暦である。調べてみると、今年は11月8日がその日に当たる。現代が江戸時代以前と比べて随分暖かくなってきたとは言え、今年の11月8日は立冬の次の日だ。いつ例年通りの寒さになっても不思議はない時季である。だとすれば、落葉し始めた木々に習い、そろそろ衣服の方も本格的な冬支度をしておくのが賢明だ。

ところで、「四月一日」と書いて「わたぬき」と読む名字の方がいるらしい。それこそ衣更えに由来していて、珍名さん中の珍名だ。では、今回話題にした「十月一日」と書く名字の方はいるのだろうか。調べてみたところ、同じ一日でも八月と十二月はあるのだが、十月は見当たらない。無いとなれば作るしかないだろう、ということで作ってみた。極めて安直だが、「わたいれ」は…? お粗末でした。

【文責:知取気亭主人】

落葉し始めた夏椿
落葉し始めた夏椿

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