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知取気亭主人の四方山話
 

『この本を読もう!』

 

2018年11月21日

昔に比べると読書量がずいぶん減ってきた。原因は、歳を取るにつれ好奇心やワクワク感をつかさどる感性が鈍くなってきたことに加え、文字を追うのに最も重要な目が衰えてきたことが大きい。元々の強度の近眼に老眼と乱視が加わり、車の運転や日常生活を送る時には眼鏡が手放せない。その一方で、本や新聞などの様に手元の字を読む場合にはメガネを外してでないと読めなくなってしまった。そうしたメガネを外したり掛けたりという煩わしさや、外した際に巻き起こす“メガネどこに行った騒動”も手伝って、読書意欲が減退してしまったらしい。それでも、減ったとは言え恐らく年に10冊程度は読んでいて、気に入ると、この四方山話で紹介することにしている。

なるべく世の出来事に即した内容の本であったり、友人・知人から紹介してもらったりした本が中心だ。それ以外では新聞の書評欄や広告欄も利用していて、目に留まった本は、本屋に出向き内容を確認した上で買い求めるようにしている。そんな中から、「これは」という本を紹介している。ただ、“困った時の本の紹介”とまではいかないが、四方山話のテーマが思い浮かばない時も多用させてもらっている。したがって、本の紹介ではあるのだが、何を隠そう「この本はみんなが読むべきである」という強い想いで書いたことはあまりない。しかし、今回は違う。これから紹介するのは、是非多くの人に読んでもらいたい、と強く思った本だ。私のつたない文章で上手く伝わるか甚だ心もとないが、あれこれ悩まず、今すぐ手にとって読んでいただきたい、と思っている。そう強く願わずにはいられない本である。

そんな思いを強くさせてくれた本とは、堤未果著『日本が売られる』(幻冬舎刊、2018)である。出版されたばかりの、幻冬舎新書だ。第一刷発行が2018年10月5日で、その僅か15日後の10月20日には第二刷が発行されていることを見ると、その凄まじいばかりの人気ぶりがうかがえる。先月、日経新聞の広告欄で見つけた本だ。同時にもう一冊買い求めた藤岡換太郎著『フォッサマグナ』(講談社刊、2018)を先に読んだ関係で、先週やっと読み始めたのだが、読み始めてすぐに、虜になってしまった。センセーショナルなタイトルに引き寄せられて手に取った訳だが、書かれている内容は、タイトル以上に衝撃的だ。

帯には、「日本で今、起きているとんでもないこと。」の文字が大きく印刷されている。そしてそのすぐ下から、「米国、中国、EUのハゲタカどもが日本を買い漁っている!」、と小さいが真っ赤な文字が目に飛び込んで来る。同じ帯の背表紙側には、「日本が根こそぎ奪われる!」の文字に合わせて、“売られるものが何か”と、どうして売られることになってしまったのか“それを後押しする法律や政策”がカッコ書きされ、セットになって印刷されている。

例えば、
   ・ 水が売られる(水道民営化)
   ・ 土が売られる(汚染土再利用)
   ・ タネが売られる(種子法廃止)
   ・ ミツバチの命が売られる(農薬規制緩和)
   ・ 食の選択肢が売られる(遺伝子組み換え食品表示消滅)
などである。

細かな内容は本書に譲るが、書かれている内容が真実だとすると、政府は誰の為の施策を行っているのか、疑問を持たずにはいられない。日本人が口にする食品や日本人の健康をどうやって担保するのか、それが全く見えて来ない。というよりは真逆の行動をとっているのではないか、との疑念さえ浮かんでくる。腹立たしい限りである。そう言えば、国会などで資料の開示を求めると、真っ黒に塗られた、所謂“のり弁”が、堂々と何の臆面もなく提出される。そんな現状を考えると、“国家・国民の為”という視点が欠如していても何の不思議もない、のかも知れない。ただ、直接口に入る食の安全だけでも何とかしてもらいたい。そこで、「4ミツバチの命が売られる」の項で書かれている内容を少しだけ紹介したい。

2015年5月に、厚労省は虫の神経に作用するネオニコチノイド系農薬の残留農薬基準を大幅に緩和したという。現在カメムシ駆除のために水田に撒く濃度(40PPM)と日本人が食べる“ほうれん草”の残留農薬基準と同じだ、というからビックリしてしまう。更には、茶畑に撒く分(40PPM)よりも、お茶として飲む際の残留農薬基準の方が高く設定されている(50PPM)というから、もう何をか言わんやである。ネオニコチノイド系農薬は虫の神経に作用すると書いたが、EUは、「子供の脳や神経などへの発達性毒性がある」との科学的見解に基づき、2018年に全面禁止したという。「では日本は?」というと、2013年10月に、ネオニコチノイド系農薬の残留農薬基準を最大2000倍に引き上げたらしい。誰のためだろう?

本書には「自閉症、広汎性発達障害の発症率」と「単位面積当たり農薬使用量」のグラフが掲載されているが、どちらも日本と韓国が突出している。その因果関係について著者は何も述べていない。が、私の心には深く突き刺さったままだ。

これだけ内容の濃い本である。新聞でもテレビでも良いから、シリーズ化して検証してくれる、良心的な報道機関はないものだろうか。お笑い番組やクイズ番組など視聴率稼ぎに四苦八苦している報道各社にも、持っている筈(?)の“ジャーナリストしての矜持”を見せてもらいたいものである。尤も、既に程度は知れているのだが…。

【文責:知取気亭主人】

こんな本を読んだこともあるのだが… 「日本が売られる」

【著者】 堤 未果
【出版社】 幻冬舎
【発行年月】 2018/10/4
【ISBN】 9784344985186
【ページ】 291ページ
【販売価格】 860円(税別)

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