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知取気亭主人の四方山話
 

『持続可能な都市?』

 

2019年1月23日

日本経済新聞の1月11日朝刊に気になる記事が掲載されていた。見出しには、「持続可能な都市 京都市がトップ」と書かれている。内容は、2015年9月に国連が採択した「持続可能な開発目標(SDGs)」の観点から、全国815市区を対象に同社が独自に調査を行った、その結果の概報である。第一面に書かれたその記事には、1位が京都市、2位が北九州市、3位が宇都宮市、以下豊田市、岡山市、相模原市、さいたま市、板橋区、堺市、そして10位が名古屋市と続くトップテンの一覧表も掲載されている。

ただ、良く読むと、「環境対策や交通政策など都市の持続可能性を意識した取り組みについてアンケート調査をし、対象815のうち約8割に当たる658市区から回答を得た」とあるから、全ての市区が網羅されている訳ではないらしい。こうしたアンケートの平均的な回答率がどれほどなのかデータは持ち合わせていないが、8割は結構高い回答率だと思う。恐らく、人口減少という激しい荒波に曝されている日本の多くの市区が生き残りを掛けて街づくりに奔走している、その表れなのだろう。

一覧表に示されたランキングは、この日経新聞社のアンケートに対する回答と国の公表データを合わせて、総合得点の他に「社会」、「環境」、「経済」の三つの側面ごとに評価したもの、と書かれている。100点満点の内「社会」に半分の50点を、次に36点を「環境」に、そして残りを「経済」に配分したとあるが、そのランキングに登場している名前を見ると、トップテンはどれも大都市若しくはその近郊の都市ばかりのようにも見える。地方に住む者から言わせれば、「そりゃ大都市やその近郊は“ヒト・モノ・カネ”に恵まれていて良いよな!」とボヤキ節が出るのではないか、と穿った見方もしたくなる。

その穿った見方を裏付けるかのように、日経新聞の1月21日に掲載された続報記事には、40位まで発表されているが、本州の日本海側では政令都市の新潟市だけしか、また四国の市は一つもランクインしていない。私が住む金沢市の名前も見当たらない。勿論回答していない可能性もあるのだが…。

そうした事も含め、もう少し詳しく知りたいと思い、記事に書かれていた『日経グローカル』(355号)という名の雑誌を探し求めてみた。ところが、生憎書店では扱われていないという。結局、アンケートに回答していない市区も、知りたい市区の順位も、また根本的な判断基準も、どれも分からずじまいである。ただ、最低限「持続可能な開発目標(SDGs)」がどんなものかだけは知っておく必要があるだろう、ということでそれだけは調べてみた。頼りは勿論インターネットだ。

外務省のホームページに「JAPAN SDGs Action Platform」と題したコンテンツがあって(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html)、“SDGsとは何ぞや”が詳しく説明されている。全体像を分かり易く説明した「持続可能な開発目標(SDGs)とは」と題する文章には、以下のように書かれている。

2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。(原文のまま)

「地球上の誰一人として取り残さない」とは、とてつもなく崇高な目標である。「端から諦めてはいけない」と思いつつも、一体そんな事が可能なのか、自国主義が大手を振るうようになってきた最近の国際情勢を思うと、極めて困難な目標に思えてしまう。他国ばかりでなく、我が国でも同じだろうなと思う。つい先日も、「仙台市でミルクが買えず乳児が餓死した」という痛ましいニュースが報じられていた。実は、21日の続報記事によれば、仙台市は21位の好位置にランクされているのだ。世界第三位の経済大国を標榜していても、こうした事件が起こっている。このままでは、とてもじゃないが「地球上の誰一人…」の実現はおぼつかない。経済至上主義に習い、経済の成長に目を向け、いつまでもヒト・モノ・カネが集まる都市ばかりに焦点を当てていてはダメだ、と思うのは私のヒガミ根性故なのだろうか。

因みに、17のゴールとは、①貧困、②飢餓、③保健、④教育、⑤ジェンダー、⑥水・衛生、⑦エネルギー、⑧成長・雇用、⑨イノベーション、⑩不平等、⑪都市、⑫生産・消費、⑬気候変動、⑭海洋資源、⑮陸上資源、⑯平和、⑰実施手段、の計17項目だと説明されている。言葉尻だけをとらえれば、“持続可能な都市”が対象となるのは17項目のうちのたった一つでしかない。ところが、日経新聞の記事には、堂々と「持続可能な開発目標(SDGs)」の言葉が記載されている。私の知識不足がそうさせたのか、それとも根っからのヒガミ根性がそうさせたのかは自分でも分からないが、SDGsを引き合いに出すのであれば、都市ばかりに焦点を当てた内容は、片手落ちのような気がしてならない。先の仙台市のニュースも、もっとコミュニティーの小さな田舎であればそんな悲劇は起きなかったのではないか、と思いたい。また、そうであると信じているのだが…。


【文責:知取気亭主人】


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