2019年2月13日
先週の週末からこの連休に掛けて、記録的な寒波が日本列島に押し寄せてきた。北の大地北海道の各地は軒並み今シーズン一番の低温となり、気象庁のデータによれば、2月9日(土)には日高地方の“陸別”で−31.8度という恐ろしいほどの低温を記録した。同地点の最低気温の平年値が−20.5度だというから、今回の寒波の厳しさが分かろうというものだ。どうやら、1月下旬にアメリカ中西部を襲った記録的な寒波の仲間が、日本付近にも押し寄せて来たのが原因らしい。
北極と南極の上空には、「極渦」と呼ばれる非常に冷たい空気の渦ができるのだそうだ。1月末に北極上空の極渦が二つに分裂して、一つがアメリカ北部付近に、残りのもう一方がシベリア地方に南下していたらしい。今回日本に押し寄せた寒波は、シベリアに南下していたものが先週末にかけて更に日本付近まで南下して来たためだという(YAHOO!ニュース:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190206-00010001-wmapv-soci)。このため、東日本の広い範囲で寒波に覆われ、中でも北海道は凍てつく寒さになった、という訳である。先の“陸別”以外でも一日中冷凍庫にいるような厳しい寒さとなり、“日高”では2月7日から8日に掛けて気温が下がり、8日の“最高気温”が−10.7度、翌9日の最低気温は−25.2度にもなった。11日まで“雪まつり”が開かれていた札幌市もグンと冷え込み、8日の最高気温が−10.1度、翌9日の最低気温は−13.1度、と凍えるような寒さだった。最高気温が−10度以下の世界など、経験もないし想像すらできない。
寒波襲来の予報を受けて、先週の半ばぐらいから、ラジオでは“札幌雪まつり”を見物する観光客向けに十分な防寒対策を呼び掛けていたが、確か9日の土曜日、“北陸”と称され冬は寒いイメージの金沢でもちょっと考えられないニュースが報じられていた。札幌でドアノブが凍って開けられない家があった、というのだ。その家のご主人は、「家の中からは何とか開けられたのだが、帰宅した時にまた凍って開かないのではないか不安だ」と言っていたという。笑い話のような話ではあるが、確かにその不安は分かる。しかし、寒波で家の中に閉じ込められたり、締め出されたりすることがこの日本でもあるとは、正直驚きだ。寒さが苦手な私など、雪に難儀させられることもたまにはあるが、そうした厳しい寒さに襲われることなど殆どない今を幸せに思わなければいけない。
ところで、先に引用したYAHOO!ニュースを読んでいて、「おや?」と不思議に思うことがあった。「…瞬く間に“カチンコチン”に凍って…」と、硬く凍った様子の表現に違和感を覚えたのだ。静岡県遠州地方出身の私が言い慣れた表現と、少し違う。私の言い慣れた表現だと、「“カチンカチン”に凍って…」となるのだ。“コチン”も使わない訳ではないが、“カチン”より少し軟らかい状態に対して“コチン”と言っていたような気がする。要するに、音の響きからくるイメージだとは思うが、“コチンコチン”は“カチンカチン”よりも少し軟らかいイメージなのだ。しかも同じ言葉を重ねて使っていたから、両方を組み合わせた“カチンコチン”とは言った記憶がない。
ところが子供たちに聞くと、違和感は無いらしく、却って“カチンカチン”や“コチンコチン”の方に違和感があるらしい。彼らはいずれも数年間は県外に住んでいたことがあるから、私より最近の標準語や共通語と言われる表現に通じているのかも知れない。そう考えると、“カチンコチン”は、私が耳慣れた“カチンカチン”よりも一般的なのだろう。ましてや、古い金沢弁の“キンカンナマナマ”など、外国語と勘違いしてしまうほど馴染みのない言い方なのに違いない。
“キンカンナマナマ”とは、金沢に住んでいても年寄りしか知らない方言で、“カチンコチン”とは若干ニュアンスが違うのだが、道路が凍ってツルツルの状態を言うらしい。昔会社の仲間に金沢弁が得意な女性がいて、ある日の寒い朝、突然「今日はキンカンナマナマだったねぇ〜」と言われて驚いたことがあった。恐らく、路面がツルツルになるほど、“カチンコチン”に凍っているということなのだろうが、よそから来た人間にとっては、まるで外国語だ。もっとも、金沢生まれの金沢育ちでも、あまり使う人はいない。ましてや、今の若い人は知らない人が多い。我が家の子供たちに聞いても、全く知らなかった。私の“カチンコチン”よりもチンプンカンプン状態だ。
いずれにしても、昔よく聞いていた表現は幾つになっても耳から離れない、ということなのだろう。そう考えると、私にとっては、やはり“カチンコチン”ではなく“カチンカチン”の方に軍配は上がる。ただ、調べてみると“どちらも有り”のようではあるのだが…。
【文責:知取気亭主人】
8日午後の金沢
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