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知取気亭主人の四方山話
 

『はやぶさ2』

 

2019年2月27日

22日(火)の朝8時過ぎ、小惑星探査機「はやぶさ2」が、目的地「りゅうぐう」へのタッチダウン(接地)を見事成功させた。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開設している「ファン!ファン!JAXA!」(http://fanfun.jaxa.jp/countdown/hayabusa2/overview.html)に依れば、送られてきたデータを確認した結果、重要なミッションの一つである「サンプル採取のための弾丸の発射」も確認できたとある。「実際にサンプルが採取できたかどうかは帰還してのお楽しみ」ということになるが、何はともあれ最大の難関の一つをクリアした、と言って良いだろう。

それにしても、前回の「はやぶさ」同様、長い時間をかけた壮大なミッションである。2014年12月3日に地球を出発して約4年と3か月、これでやっと「小惑星のサンプルを持ち帰る」という超難関ミッションの成功と、関係者が心に誓っていた兄貴分「はやぶさ」のリベンジを、少し手繰り寄せた気がする。まだ道半ばではあるが、このミッションに関わった全ての関係者に拍手を送りたい。もの凄い事をやってくれたものである。

どれくらい凄いかというと、「日本からブラジルにある直径6pの的を狙うくらい難しい」(JAXA)と言われている。何で狙うかは別にして、そんな条件では的を探し当てるのすら至難の業だ。ただ、ブラジルが地球の裏側にあって日本にとって最も遠い国の一つだとは理解しているものの、直接ブラジルの大地を見たことがないためか、本当は凄いことなのに私にとっては何となく実感に欠ける。そこで、よく会社帰りに目にする月と比べることによって、その凄さをもう少し具体的な数値で実感してみたい。

やることは単純だ。地球とそれぞれの天体との距離を比べ、「りゅうぐう」が月の位置にあったとしたら、どんな風に見えるか単純計算しただけである。単純化しているため、科学的根拠に欠ける点はご容赦願いたい。さて、基本的な地球と「りゅうぐう」との距離だが、「りゅうぐう」の公転が楕円軌道であることや、その周期が地球の公転周期と一致してないなどのため、確定した数値で表すことは本来難しい。しかし、ここでは計算を単純化するために、メディアに登場する“3億キロ以上”を参考に、切り良く“3億キロ”と仮定した。次に「りゅうぐう」の直径だが、報道されている約900mで良いだろう。また、今回タッチダウンした地点の平坦面の直径は約6mだったというから、これも比較検討に使おう。

一方、月と地球の関係データを確認してみる。地球と月の平均距離は約384,400km、月の直径は3,474kmである。つい先日の20日がそうだったように、スーパームーンの時には地球との距離はもう少し縮まるが、正確を期すのが目的ではないので今回は平均距離を使うことにして話を進める。

さて、ここからは算数の時間だ。

〇地球と月の距離は、地球と「りゅうぐう」との距離の何分の1か?
384,484/300,000,000≒1/780 答え 約780分の1

〇「地球と“りゅうぐう”」と「地球と月」との距離が一緒だと仮定すると、「りゅうぐう」の大きさはどれくらいになるか?
900/780≒1.15 (m) 答え 約1.15m

〇その「りゅうぐう」は、地球からは月の何分の一の大きさに見えるか?
1.15/3,474,000≒1/3,000,000 答え 約3,000,000分の1

〇満月の見た目が計算しやすいように9cmの大きさだとすると、「りゅうぐう」はどれくらいの大きさに見えるか?
9cm=90mm=90,000μm=90,000,000nm
90,000,000/3,000,000=30 (nm) 答え 30nm(ナノメートル)

〇同様に、タッチダウンした地点(直径6m)はどれくらいの大きさに見えるか?
タッチダウンした地点は「りゅうぐう」直径の
6/900=1/150   約150分の一
したがって、
30/150=0.2 (nm) 答え 0.2nm(ナノメートル)

以上、「りゅうぐう」が月の位置にあったと仮定すると、今回「はやぶさ2」が成功させたミッションは、以上のようなイメージの寸法の目的地で行われた事になる。小惑星そのものの大きさは地球との位置関係によって変わるものではないが、遠くなればなるほど見た目は小さくなり、到達させるのに必要な精度はどんどん増す。決して目視でやっているわけではないが、遥か彼方に浮かぶ月、その上の針の孔にも満たない僅かな地点に正確にタッチダウンさせたのだから凄い。

しかし、これで終わった訳ではない。最難関と言っても良いミッションが残されている。爆薬を使って更に深部の物質を採取する予定なのだ。これをなし終えると、晴れて帰途に就くことができる。そして待ち遠しい地球への帰還は、2020年末の予定だ。

なお、「ファン!ファン!JAXA!」には、「はやぶさ2」に搭載されたカメラが捉えた、「りゅうぐう」の貴重な写真が公開されている。興味のある方は是非ご覧になっていただきたい。3億キロ先の小天体の詳細な写真が見られるなんて、竜宮城に行った気分になれるかも…。

【文責:知取気亭主人】


地球から見たとすると、この3百万分の1の大きさですって!
地球から見たとすると、この3百万分の1の大きさですって!

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