2019年3月27日
日米通算4367安打を放っているイチロー選手がついに引退を表明した。東京ドームで開かれていた米大リーグの公式戦、所属するマリナーズとアスレチックスとの開幕2連戦が行われた21日、現役引退を発表した。45歳だった。1992年にオリックスに入団(高校卒業の年)して以来2019年の今年まで、27年に亘るプロ野球人生であった。公言していた「50歳現役」には届かなかったが、30歳代で引退をする選手が多い中の45歳、おじさん世代には大いに勇気を与えたのではないだろうか。
インターネット(以下、ネット)で日本のプロ野球選手が引退する年齢の平均(平均選手寿命)を調べてみたところ、(後述するが)約30歳であった。したがって、それに比べれば遥かに長い選手生命だったことになる。ギネスブックにも登録されている最多安打を始め、彼の残した記録も半端ないが、トップ選手としてこれだけ長い間活躍した選手も稀有だ。中日ドラゴンズ一筋に32年間、50歳で登板を果たした山本昌広氏のような息の長い選手もいるが、彼とて32年間ずーと一線で活躍し続けた訳ではない(32年間での成績は、実働29年で219勝165敗)。そういう意味でも、イチローは本当のスーパースターだったと言える。
ところで、イチロー選手は別格として、スポーツ選手の選手寿命はどれ位なのだろう。例えば、サッカー選手ではどうだろう。直ぐに思い浮かぶのは、イチロー選手と親交のあるという、カズこと三浦知良選手(横浜FC)だ。彼のように52歳になってもまだグランドで走り回っているサッカー選手もいれば、惜しまれながらも29歳の若さで引退した中田英寿氏のような人もいる。彼らのような一流選手でも、千差万別なのが分かる。ただ、我々が思い描けるのは、どうしても名前が売れている選手ばかりになってしまう。
しかし、そうした名前の通った選手は別として、そうでない選手の多くは、夢見たプロ選手としての活躍も出来ず、引退して行くのだろうと思う。一体どれ位の若者が功なせずして、志半ばで表舞台から去っていたのだろうか。実態を知ってしまうと、子供達の夢を奪いかねない結果になるかもしれない。しかし、イチロー選手の引退報道を聞いているうちに気になりだした。そこで、信憑性にやや不安が残るネット頼りになってはしまうが、思い付くまま色々なプロスポーツの平均的な引退年齢を調べてみた。すると、意外なことが分かってきた。
まず、イチロー選手(元と言うべきかな?)も所属していた日本のプロ野球選手についてだ。日本野球機構(NPB)のホームページに掲載されている「NPBからのおしらせ」によれば(http://npb.jp/npb/careersupport2014_3.html)、少し古いデータではあるが、引退年齢は2007年〜2013年の平均で29.7歳とある。思っていた以上に若い。平均的な在籍年数は9.5年(2010年〜2013年)だという。2011年以降は育成選手を除いての平均だから、実際はもう少し若くなるのかも知れない。因みに、平均すると毎年98人引退している。この中には、NPBを戦力外となっても、独立リーグに身を置いて、夢を追い続ける若者もいる。是非、夢を掴んでほしいものである。
次に、サッカーだ。プロ野球の一流選手の大まかな引退年齢は30代後半だと認識しているのだが、日本代表に名前を連ねるサッカー選手の引退年齢は、もう少し若く、30代半ばぐらいではないかと思われる。株式会社早稲田ユナイテッドのOfficial Web Siteである「Waseda United」(http://waseda-united.co.jp/blog/2015/04/29/12164.html)に掲載されている情報によれば、引退の平均年齢は25〜26歳、在席期間の平均は僅か2〜3年と言われているらしい。やはり、日本代表選手クラスと比べると10歳ほど早く、プロ野球選手と比べると約5歳も若い。それだけ体力の消耗が激しいのか、それとも自分より遥かに素質のある若手が次から次へと出て来て、己の限界を早々と悟るのかも知れない。やはりプロ、厳しい世界である。
ではもうひとつ、稀勢の里が引退したばかりの大相撲力士の引退年齢を調べてみよう。日本相撲協会のホームページを調べてみたが、引退した力士名は出てくるのだが、目的の平均的な力士引退年齢は見当たらない。代わりに「大相撲データアナリストの大相撲日記」なるサイト(http://blog.livedoor.jp/search_net_box/archives/14105715.html)を見つけた。そこに、「入門年齢と引退年齢」のコンテンツがあって、昭和37年〜平成28年までの、平均入門年齢と平均引退年齢、そして平均在席のグラフが示されている。そのグラフから最近5年間のデータを読み解いてみた。正確さにはやや欠けるが、平均引退年齢は約25歳、平均在席は約7.5年ぐらいだろうか。力士の大型化で怪我が多いと聞くが、25歳で引退はやはり早い。そうしてみると、34歳で全勝優勝を成し遂げ、今なお力士の頂点に君臨し続ける白鵬は、超人と言っても良いのかも知れない。
さて、こうして3つのスポーツを見て来たが、何れも平均引退年齢はかなり若い。記憶に残るような名選手に成れるのはほんの一握りだ、ということが良く分かる。とは言うものの、分かっていても追いたいのが夢だ。さりとて、平均寿命が80歳を超えた今、引退後の人生設計もシッカリできるようにしておく必要もある。丁度今、甲子園で躍動している高校球児の中にも、プロに行って活躍したいと思っている選手はたくさんいるだろう。監督さんたちには、その思いをしっかりと受け止め、そうした生徒たちが夢も追い、引退後の人生設計も出来るような、しっかりとした考えを持つ人間に育つよう指導をしてもらいたいものである。
【文責:知取気亭主人】
桜の花芽(自然界では、芽が出ればやがて花は咲くのだが…)
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