2019年4月3日
いよいよ新元号が発表になった。「令和」である。「M、T、S、Hの頭文字と重ならないとすれば、新元号は○○じゃないか?」「イヤイヤ、△△だろう」などと、この発表まで新元号の話題で盛り上がった方々もたくさんいたことだろう。かく言う私もそうだ。しかし、4月1日の発表で、その楽しみも終わりとなった。ただ、楽しみは終わったのだが、新しい元号とのお付き合いはこれから始まる訳で、今月満70歳になる私にとっては、これから鬼籍に入るまでの暫くの間、ほぼ間違いなくこの「令和」の時代の一端を生きることになる。若い頃は思ってもみなかったが、これで「昭和」「平成」「令和」の三つの時代を経験することになるのだ。長く生かさせてもらっている、と感謝することしきりである。
しかし、複数の元号を跨いで生きていると、良い事ばかりではない。逆に都合が悪いこともある。例えば、最も身近なことで言えば、年齢の計算が非常に面倒くさいことだ。ボケない限り直ぐに分かる自分の年齢は別にして、他人の年齢を計算するときには、自分の生まれた年とどれだけ離れているか計算するのが基本だが、それにまごつく時には一旦西暦に直してから、という複雑な過程を通らなければならない。
例えば、昭和生まれの人は、生まれた年に1925を足してこれを今年の2019年から差し引かないと、今年何歳になるか計算できない、という具合である。ところが、平成生まれになるともっと複雑で、頭がこんがらがってしまう。平成元年に僅かながら(1月7日まで)昭和64年が含まれているからだ。したがって、平成の年数に63を足し、更にその結果に1925を足した数値を引いて計算しなければならない。若い時ならいざ知らず、古希を過ぎた身に暗算は辛い。ところが、辛いのは年齢の計算ばかりではない。社史を編纂する時も、元号だけでやるのは至難の業だ。
我が社のように社歴がそんなに長くなくても、昭和、平成と二つの時代を通して営業してくると、令和に入社する新人に、元号だけで設立以来の歴史を語るのは難しい。ところが、お役所関係の業務や資料は元号で提出・管理することが多いため、各種データは「昭和六十〇年」とか「平成△年」と言った具合に保管されている。そのため、元号が変わると、表面上の連続性は途切れ、前後の時間の流れが把握しにくくなるのだ。したがって、社史のように歴史を振り返るときには、通しで表現できる西暦でないと都合が悪い。
数年前から50周年に向けて素年表を整理しているのだが、当然西暦と元号を併記して作成している。こうしないと、社会の出来事と社内の出来事を関連付けて、それが設立何年後の出来事なのか上手く時系列に整理できない。そうした考えは新聞業界も同じらしい。新聞の切り抜きを始めてもう20年以上も経つのに全く気が付かなかったのだが、新聞の再上端に書かれている日付もそうなっているらしい。西暦と元号が併記されているのだ。先週、カーラジオから流れてきたNHKの番組で、その話題を取り上げていた。
コンピューターなどIT技術が発達し、益々グローバル化が加速する流れの中で、元号はどうなっていくのだろうか、といった内容だった。少しずつ西暦表示が浸透してきているとの話だったが、西暦表示が重宝されるようになってきている例として、新聞の日付を取り上げていたのだ。それまでどの新聞も元号のみだったのが、1976年(昭和51年)に朝日新聞が西暦の後ろに括弧書きで元号を入れ併記するようになったのを手始めに、続々と他の新聞も追随し、今ではほとんどの新聞が併記をしているという。ただし、ネットで調べてみると、産経新聞は西暦を括弧書きに、そして「しんぶん赤旗」は西暦のみだったのが2017年(平成29年)4月1日から28年ぶりに元号併記に戻したという。なお、下の写真は4月1日の日本経済新聞の日付を写したものである。
西暦表示でないともっと都合が悪いものもある。歴史上繰り返し発生し、甚大な被害を与えて来た地震災害だ。地震はある周期で発生することが知られており、前回発生してからどれくらい経過しているのかを知るには、西暦を併記しないと殆ど分からない。そうした中で最も差し迫ったものは、30年以内の発生確率が70%以上、被害額が最悪1410兆円(土木学会推計)とも見積もられている南海トラフ地震だろう。有史以来100〜150年周期で発生していると言われており、これこそ西暦で注視していかないと意味がない。
また、世界規模で人の行き来が活発なって来ている今の時代を考えると、科学的な尺度が世界共通であるのと同じ様に、時間の流れも共通軸である方が理にかなっている。そうした考えから、既にパスポートに書かれている生年月日は西暦表示になっている。また警察庁は、外国人ドライバーの増加などを背景に、今年の3月から、運転免許証に記載されている有効期限を“元号のみ”から“西暦との併記”に順次変更する方針を決めたという。
現在、公文書に和暦の記載を義務付ける法令はなく、西暦を併記する明確な基準もないとされているが、時代の流れとしては併記が主流になって行く様な気がする。行政に提出する書類も日本の伝統文化を残しつつ世界基準に適合していく、私としてはそれを望んでいるのだが…。
【文責:知取気亭主人】
「令和」のイメージ?
|
|