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知取気亭主人の四方山話
 

『桜』

 

2019年4月10日

4月6日、気象庁は金沢で桜が満開になったと発表した。つい先日まで続いた季節外れの寒波で、今年の桜は遅くなるのではないかと思っていたが、3日以降一挙に暖かくなったせいで開花が進んだらしい。開花宣言の出されたのが4月1日だったから、5日後に満開というスピードぶりだ。4月3日朝のNHKラジオ「三宅民雄のマイあさ!」の情報に依れば、3月20日に一番早く開花宣言が出された長崎の満開発表は4月3日で、開花から満開まで2週間も掛かっていたという。それに比べれば、金沢が如何に早かったか分かる。また、長崎の桜(標準木)のお蔭で、3月下旬から4月の初めにかけて、日本列島が如何に冷え込んでいたかも想像できる。桜にとってはとんだ災難だったが、きっちりと指標の役目を果たしてくれていたことになる。

災難と言えば、温暖化に代表される地球環境の悪化は、人間も含めた動植物にとって大きな災難だ。桜も例外ではなく、温暖化に起因する夏の高温と乾燥という生育環境悪化の影響を受けている。深刻な影響を受けているのはそればかりではない。特定外来生物に指定された「クビアカツヤカミキリ」による食害も深刻で、このままでは日本人がこよなく愛する桜の風景を維持できなくなってしまう恐れがあるという。更に、適正な切り方を無視した枝の剪定も、弱らせる原因になっているらしい。情報源は、前述したNHKラジオ、「三宅民雄のマイあさ!」である。

調べてみると、「クビアカツヤカミキリ」による被害は桜、桃、梅など主にバラ科植物で懸念されているのだが、特に桜の老木が被害にあう可能性が高いという。幼虫は樹木の内部で生木を食べて成長するため、桜の木は弱り最悪枯れてしまう。被害が報告されている埼玉県では、環境科学国際センターが「サクラの外来害虫 “クビアカツヤカミキリ” 被害防止の手引」(http://www.pref.saitama.lg.jp/cess/center/documents/kubiaka_manual_ver3.pdf) をネット上で公開している。公開されている写真を見ると、食害は痛々しい。これを見ると、桜の木を守るためには、この害虫を見つけたら即刻管理者へ報告し捕殺をしなければいけない、と強く思う。そういう意味では、是非見ていただきたいサイトである。

ところで、こうした害虫が樹木の内部に入り込んでいたり、根元まで人が入り込んで根元の土が硬くなったり、或いは冒頭で述べたように高温や乾燥などに会ったりすると、桜の木は弱ってくる。ところが、我々素人だと、どうやって弱っている木を見つけるのか分からない。枯れてやっと気が付くのが精々だが、前述の番組に出ていた公益財団法人「日本花の会」の主幹研究員で樹木医の和田さん(名前は聴きそびれた)の話だと、その弱った桜の木を見つける方法があるという。

聴けば簡単な方法だ。器具も使わないし、専門的な知識も必要ないから誰にでもできる。その上、満開の桜を愛でる時にできる方法だから、やろうと思えばたくさんの人が挑戦できる。また、その方法を知れば多くの人が関心を持ち、実際に観察してみようとするのではないかと思う。桜の美しい風景を守っていくには、愛でる人たちが桜の生育状態に関心を持ち、維持・管理の最強助っ人軍団になる、それが一番であるような気がしている。それでは、その最強の助っ人軍団になるための、弱った桜の木を見つける方法をお教えしよう。

桜は、同じバラ科なのに、桃や梅などと花の咲き方が違うのだという。何が違うのかと言えば、咲く花の数である。梅や桃は一つの蕾から一輪だけ花を付けるのに対して、桜は一つの蕾から複数の花が咲くのだという。しかも、元気な桜の木ほどたくさんの花が咲くらしい。普通は四つで、多いのは六つ咲くのもあるという。元気がなくなる(弱ってくる)と、二つ一つと減っていくらしい。したがって、下から見上げた時に、弱っている桜の木は空が透けて見えるのだという。

「複数咲くなんて本当かな?」と前話で掲載した蕾の写真(P-1)を改めて見てみると、確かに複数の花芽が見える。では実際に開花した花はどうなっているのだろう、と興味が俄然湧いてきた。思い立ったが吉日とばかりに、ラジオを聴いた翌々日(5日)の昼休み、会社近くにある公園と堤防に植えられた桜を観察に行ってきた。すると、確かに一つの蕾から複数の花が咲いていて、その数は殆ど四つだ。中には、五つ咲いている枝もある(P-2)。和田さんの弁を借りれば、会社の周りの桜は総じて元気らしい。ただ、ところどころ三つしかない木もある(P-3)。少し弱りかけているようだ。


P-1
P-1
P-2
P-2
P-3
P-3

P-4
P-4
P-5
P-5

観察した桜は、いずれもまだ満開とまでは行っていなかったが(P-4、P-5)、根元には腐葉土が盛られていて、大事に管理されていることがうかがえる。そんな中で三つしか咲いていない蕾が多かったのは、根元付近によく車が止められている右岸側の一本だ(P-4、白い車が写っている辺り)。根元の土が硬くなったのか、それとも排気ガスの影響か、いずれにしても他よりも少し生育環境が悪いのだろう。

さて、如何だろう。昼休みのたった30分ほどで、これだけ観察ができた。美しい景色を残すためにも、皆さんも是非チャレンジを!


【文責:知取気亭主人】


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