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知取気亭主人の四方山話
 

『そうか、そんな歳になったのか!』

 

2019年5月1日

いよいよ今日から新しい元号「令和」の時代が始まる。日々の生活が特段変わる訳ではないのに、新しい元号になるというだけで、何となく改まった気分になるから不思議だ。生まれてからこの方、何の違和感もそして何の疑問も持たずに、和暦の中で生活してきたことによって身に染みついた生活観が、新年を迎えるのと同じように新たな気分にさせるのだろうか。また、今回の改元が前回と違って譲位によるものだけに、重苦しい雰囲気が無いのも、新たな時代の幕開けに期待を寄せたくなる理由の一つかもしれない。

ところが先日、折角そんな高揚した気分になっていたところに、その高揚感が急にしぼんでしまうような出来事があった。先週の月曜日、あるところから私宛に届いた書類が原因だ。長生きすれば誰でも受け取る書類だが、そんな書類が来るなどとは思ってもいなかっただけに、中身を見て驚いた。そして改めて、「そうか、そんな歳になったのか!」と、抗ってもどうしようもない現実を突き付けられることになる。

手元に届いたのは、会社が加入している健康保険組合からだ。年寄りに配慮してのことなのだろう、送付案内そのものも大きな字で書かれているのだが、タイトルは「ここまで大きくなくても…」と思わず言いたくなるほど殊さら大きな字で、「健康保険高齢受給者証が公布される方へのお知らせ」と書かれている。そして、「平成31年5月からは、この健康保険高齢受給者証(以下、高齢受給者証)と健康保険被保険者証(以下、保険証)を医療機関の窓口へ提示の上受診して下さい」との説明文も添えられている。

「5月だったら“平成”じゃなくて、もう“令和”じゃん!」と突っ込みを入れたいところだったが、そこは独り言で我慢して、「70歳以上の高額療養費制度について」と書かれた、同封の説明資料に目をやった。すると、そこには所得区分に応じた自己負担の上限額が書かれた一覧表が示されている。「目出度く(?)70歳を迎えた貴方は、これまでの保険証だけではダメですよ。高齢受給者証も一緒に医療機関に出し、自己負担も忘れずに!」、という親切(?)な書類だったのだ。一覧表のタイトルには、「@平成30年8月からの自己負担上限額(70歳以上75歳未満の方)」と書かれている。一定条件の高齢者の自己負担がこれまでの3割から2割へ引き下げられることに伴う案内だ。

しかし、それでなくても歳と共に少しずつ色々な事が面倒臭くなってきているのに、また面倒臭いことを言ってくるな、とぶつぶつ言いながら同封されてきた高齢受給者証を見てみた。すると、これまでのカードタイプの保険証に比べると、一回りも二回りも大きいのに気が付いた。保険証のサイズが縦×横=5.4×8.5pなのに対し、送られてきた高齢受給者証は12.8×9.1pもある。しかも紙だ。手持ちの財布に入れようとしたが、大きすぎて入らない。前述した説明文の通りだとすれば、医療機関を受診する時は両方提示しなければいけないから、常に両方携帯している必要がある。さてどうしたものか、と思案していて浮かんだのが、厚労省を悪者にして留飲を下げる方法である。ただ、根本的な解決には全くなっていないのが玉に傷ではあるのだが…。

保険証を良く見ると、氏名などの他に生年月日も書かれている。したがって、受診時に提示すれば、当人の年齢は直ぐに分かる筈である。ただ、現在は磁気カードになっていないため、カードリーダー等が使えない。したがって年齢は、印刷されている生年月日を確認し、計算して出すしかない。もし仮に、既に磁気カードになっていて、加えて全国の医療機関を結ぶデータベースが構築されていれば、計算する必要がないのは勿論、今回の様に新たに高齢受給者証を発行する必要もないばかりか、高齢者にありがちな治療や薬の重複も防ぐことができる。それを怠ってきたことが、折角の高揚感をしぼませた直接的な原因である、と厚労省に因縁を吹っかけているのだ。

ただ、政府も手をこまねいている訳ではないらしい。既に新聞などで報じられているが、2月15日、政府は、マイナンバーカードを保険証として利用できるように、両者の一体化を推し進める方針を発表している。2年後の2021年3月から、原則すべての病院で対応できるよう準備を急がせるという。また、4月25日の日本経済新聞には、もう一歩進めて、医療費や生命保険料などのデータを国税庁のシステムに送り、医療費控除の確定申告の手間を省く方針だ、ということも報じられている。

既に70歳になってしまった私にとっては遅きに失した感も無きにしも非ずだが、こうした行政手続きの効率化は、一日も早く実現すべきだ。勿論、個人情報の漏えいなどセキュリティーには万全の態勢を取っての上での話だが、働き方改革を標榜する政府であれば、まずは“隗より始めよ”である。さすれば、私が次の区切りとなる75歳を迎えた時、「そうか、もうそんな歳になったのか!」と思わせる書類を再び見なくて済む。もっとも、受診する度に直接口頭で言われた方が、却ってこたえるかもしれないのだが…。


【文責:知取気亭主人】


そうか、そんな歳になったのか!

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