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知取気亭主人の四方山話
 

『水温』

 

2019年8月14日

確か梅雨明けの頃だったと記憶しているが、朝のNHKラジオで興味深い話を聞いた。夏の火照った体を冷やしてくれる筈のプール、このプールに入って遊んでいても、熱中症になる危険性があるのだという。水温が高いと、水の中にいても体温が下がらずダメらしい。そんな話を家内にしたら家内は既に知っていて、孫が通う小学校から、気温が余りに高い日などに時々“プール使用禁止のお知らせ”が届くという。我々の子供の頃の記憶だと「プールの水は冷たいもの」と相場が決まっていたのだが、近ごろの猛暑では、どうやら“そんな相場”は通用しないらしい。

ネットで調べてみると、「かたつむり」(失敗を笑いと知恵に変える、現役ママたちによる育児メディア)というサイト(https://katatumuri.info/archives/1279)に、“水温+気温”が65℃以上もしくは気温が35℃以上になると「プール熱中症」に注意が必要である、と書かれている。水温が30℃を超えると危険である、とも書かれている。また、「SEFT 施設管理者のためのスポーツ器具&設備Tips」というサイトのコンテンツ「プールの水温測定器4種・おススメ水温・水温計」(https://seft.jp/temperature-of-pool/)には、使用状況によるお勧めプール水温が示されていて(次表参照)、「菌の繁殖や塩素剤の投入などの水質管理面からすると、30℃を大幅に超えることのないように」との注意喚起も書かれている。どうやら、プールにおいては水温30℃が熱中症危険度の判断基準のひとつらしい。


表-1. 目安となるプールの水温
水温 使用場所 備考
25℃以下 さほど使われない 長時間の遊泳では冷たく感じる
25〜28℃ 全力を出す競泳 日本水泳連盟の「プール公認規則」
26〜31℃ 屋外プール 気温より高めが理想的
29〜31℃ 屋内プール
30℃前後 水泳初心者・幼児・高齢者
「https://seft.jp/temperature-of-pool/」より転載、一部加筆

そうした水温管理はプールだけかと思っていたら、近年オリンピックで新たな競技種目に加えられた「オープンウォータースイミング(OWS)」の競技会場も、同じように水温管理の対象になっていて、国際水泳連盟は、競技実施条件の水温を16℃以上31℃以下と定めているという(https://www.sankei.com/sports/news/190811/spo1908110028-n1.html)。31℃以下というのは、表−1の屋外・屋内プールの目安となる水温と同じである。こうした状況からすると、「水泳競技は31℃を水温の上限とする」が、国際的な共通ルールらしい。

ところで、11日にそのOWSのテストイベントが、オリンピックの競技会場となる東京・お台場海浜公園で行われ、午前5時時点の水温29.9℃、と基準内ではあるもののギリギリの水温で開催されたという。男子のスタートを午前10時から同7時に前倒し実施したそうだが、恐らくテストイベント中の水温は30℃を超えていたのではないかと思う。というのも、1週間前の4日に能登半島の海に遊びに行った長男夫婦と次女が、「すごく海水温が高かった」と驚いていたからだ。午後の一番暑い時間に行ったからだとは思うが、行った先が外浦と呼ばれる日本海に面した海水浴場だったことを考えれば、外洋との水の出入りの少ない奥行きの深い東京湾は、より海水温は上がり易い筈である。

OWSが念頭にあった訳ではないが、運が良いことに、たまたまテストイベントと同じ11日の日曜日、先週長男家族が行ったのと同じ海水浴場に今回は私も同行し、海水温を測って来た。「プール熱中症」をテーマに四方山話を書くつもりでいたため、温度計を持って行ったのだ。測定した時間は、先週長男たちが海につかった時間よりも早い11時ごろであったが、既に生暖かく28℃もあった。次女の話では、「先週はもっとずっと暖かかった」というから、30℃は超えていたものと思われる。

因みに、海以外で測定してみたところ、波打ち際のやや湿った地表面が32℃、同じ地点の地表面から1cmほど下は31℃と、僅か1cmなのに1℃も違う。そして、素足で立つと火傷するのではないかと思うぐらい熱い砂の上は、驚きの54℃もあった。なお、車のドアを開け放し、風通しを良くして日陰で測った気温は、33℃であった。

砂浜の表面温度が54℃もあったというのは驚きだが、お台場海浜公園の周辺でも同じ事が言える。公園周辺を囲むコンクリートの岸壁や構築物の表面温度は、砂浜の砂と同じ様に50℃を軽く超えるだろう。しかも東京は、コンクリートジャングルと揶揄されるぐらい、土と緑の、いわゆる緑地が少ない。東京そのものが巨大な熱の貯蔵庫と言って良いほどなのだ。したがって、昼間溜め込んだ熱を少しずつ海や大気中に放出する訳だが、緑に囲まれた能登半島の海水浴場に比べると、圧倒的に条件が悪い。夜の気温が、そして水温が、下がりにくいのだ。

11日も午前5時の時点で既に29.9℃だったというから、競技条件である31℃以下を確実にするには、午前3時、4時スタートも視野に入れる必要があるのではないだろうか。老婆心ながら、そんなことも考えてしまう。それほど日本沿岸の海水温は高い、ということだ。地球温暖化の影響でオリンピック競技種目が大幅に減少、などということにならなければいいのだが。尤も、2020東京オリンピックにおけるOWSの最大の課題は、“水温”よりも、“トイレみたいな臭い”と“懸念される水質”なのかもしれない。こうした課題は“地球温暖化のせい”にできないだけに、今回ばかりは“東京都の見栄と意地”が必要だと思うのだが…。


【文責:知取気亭主人】


只今、砂浜の表面温度測定中!
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