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知取気亭主人の四方山話
 

『ついうっかり、それとも…』

 

2019年9月4日

9月1日の日曜日、大阪からやって来た友人と昼食をすることになった。車も止められて食事ができる店、ということで郊外にある回転寿司に行った。金沢の回転寿司は全国的に見ても激戦区でその分美味しい、との評判をネットで見ていたこともあり、自信を持ってのお誘いだ。席に着くなり、最近金沢駅周辺にも同じような回転寿司が増えてきたなどのたわいもない話や、お互いが抱える体の変調、そして私の個人的な相談事などを話しながら、2時間近くのゆったりとした昼食タイムを過ごすことができた。お蔭で、話のメインだった私の相談事も何とか方向性が定まり、解決の道筋が見えた。道筋が見えたところで、そろそろ店を出よう、ということになった。

勝手に店を決め誘った手前、当然私が出すつもりで、精算用のカードを持ちレジに向かった。向かう間も、話好きのおばさん宜しく、おっさん二人が話しながらの移動だ。レジでカードを出し、財布を入れた筈のズボンの左ポケットに手をやった。ところが、どうしたことか手に当たるのは車のキーだけだ。続けていた話を強制中断し、「アレッ?」と小さな声を出し、右のポケットもまさぐった。しかし、こちらも無い。焦って来た。それではと、今度はお尻のポケットの上から手を当て見たが、矢張り財布らしき膨らみはない。念には念を、と直接手を突っ込んでみてもハンカチしか当たらない。益々焦って来た。財布には現金の他にクレジットカードと免許証も入っている。友人は「俺が出すよ」と言ってはくれるのだが、支払いだけの問題ではないのだ。

レジの女性店員に財布が見当たらないこと、車の中に落ちている可能性があることを伝え、一旦店を出て、駐車場に止めてある車に向かった。ところが、車の中をくまなく探しても、無い。最後の頼りはここしかない、と家にいる妻に電話を入れた。すると、私から電話が掛かってくるのが分かっていたかのような話しぶりだ。そして、間髪を入れず、「食事代はどうしたの?」と聞いてきた。聞けば、娘がソファの上に落ちているのを見つけてくれたらしい。ホッとすると同時に、妻の話を聞いて、忘れた原因が見えてきた。出かけて来る直前にはいた靴下が悪さをしていたらしい。ただ、友人と店員を安心させるには、私の反省などどうでもいい。直ぐにそう思い直して、娘に持ってきてもらうことにした。

急ぎ店に戻り、財布が見つかったこと、但し家で見つかったから持って来てもらっていることを店員に伝え、待合室で待たせてもらうことにした。その間友人には、今回と同じように財布を忘れた、自称「掛川騒動」の自虐紹介だ。以前金沢から静岡県掛川市まで免許証不携帯で高速道路を運転してしまったこと、そして掛川市役所に着いて身分証明書の提示を求められた時初めて財布を忘れて来た事に気が付いたこと、ただその日はたまたま次女と一緒に行っていて帰りは次女に運転してもらったことなど、今回の失敗を誤魔化すかのように、10年近く前の失敗談を面白おかしく話したのだが、話をしていてもどうもバツが悪い。実は、財布に限らず、忘れ物が最近目立つようになってきているのだ。特に、「掛川騒動」以来、着実に増えて来ているように感じている。

忘れ物のトップは、なんと言っても携帯電話だ。財布ほど困ることはないが、回数は断トツだ。勿論、財布も良くある。時には、僅か数分で事なきを得るが、車のキーを忘れることすらある。ただ、どれも外出先に置き忘れてくることはなく、家を出る時に限ってやらかしてしまう。出かける直前になって思いがけない事に気を取られると、てきめんだ。しかも、その思いがけない事に予想以上に時間を取られると、忘れる確率はもっと上がることになる。忘れ物は、若い時も無かった訳ではないが、これほど頻繁ではなかったと記憶している。大きな声では言えないが、嫌なことに少しずつだが確実に増加してきている。

冷静になって考えると、くだんの「掛川騒動」の時は、「ついうっかりした」と思っていたのだが、これだけ明確に増えてくると「ついうっかり」だけではないのではないか、と不安になってくる。「ついうっかりではなかったとしたら」と考えて浮かんでくるのは、加齢による脳の単機能化だ。若い時は普通に出来ていたマルチタスクが徐々にできなくなり、今では一つの事しかできなくなってしまっている、という訳だ。若い時なら中断した直前の行動を直ぐに思い出せていたのが、今はシングルタスクのせいで余程のことがない限り思い出せないでいる。余程のこととは、何らかの切っ掛けだ。例えば、今回の場合で言えば、「娘がソファの上に落ちているのを見つけてくれた」という一言だ。

いつも靴下をはく時には、ズボンのポケットに入れた財布などが邪魔になり、良くソファなどの上に取り出して置く。ところが今回は、チョットはきにくい5本指の靴下を選んだ為、靴下の指穴よりもずっと小さい薬指と小指が両足とも上手く収まらず、悪戦苦闘をして時間が掛かってしまったのだ。その結果、財布を取り出したことなどすっかり忘れてしまっていた、という訳である。時間が掛かったといっても、たった2、3分ほどなのに。

今回は運良く(?)先の一言で、これを思い出せた。しかし、それが無ければ、恐らく思い出せなかったに違いない。そう考えると、“いやな足音”がすぐそこまで来ている様な気がしないでもないのだが…。


【文責:知取気亭主人】


 問題の財布
問題の財布

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