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知取気亭主人の四方山話
 

『若者の見識、年寄りの度量』

 

2019年9月25日

23日の月曜日、近くのホームセンターに行ってきた。目的の物を手に取り店内を歩いていると、展示されているテレビの画面がふと目に入り、足を止めた。丁度、新任の小泉進次郎環境大臣が、38歳の若さで、ニューヨークの国連本部で外交デビューを果たし英語でスピーチした、と伝える報道番組が目に入ったからだ。暫く見ていたのだが、いやに英語でスピーチしたことや若さを強調しているように聞こえてくる。

国を代表する大臣であれば、これだけグローバル化が進んでいる現代、国際会議に出席する機会は以前に増して多い筈だ。必然的に、多少の英語ぐらいできなければ、激しい国家間競争の中で日本という国が埋没してしまう。それを考えると、英語でスピーチした事を殊更取り上げる様な報道は、如何なものかと思う。“ヨイショ”をしているつもりなのかもしれないが、報道する側の英語苦手意識が透けて見えるのは、考え過ぎだろうか。

また、38歳という年齢を強調している様に聞こえたのも、年寄りの“ひがみ耳”なのだろうか。確かに、調べてみると、これまで戦後30代で入閣を果たしたのは、田中角栄、船田元、野田聖子、小渕優子、細野豪志の5氏しかいない。どうやら、日本では珍しい事らしい。しかし、世界基準で見れば、38歳で大臣というのは、そんなに驚くほどの事ではない。2年前(2017年)のフランス大統領選挙で勝利したのは、当時39歳のエマニュエル・マクロン氏だったし、同じ年にニュージーランドの首相に就任した女性のジャシンダ・アーダーン氏は今の小泉氏より一つ若い37歳だった。このように世界を見渡せば、同じ様な年齢で国のトップに立っている人すらいるのだ。

こうして見ると、日本の政治の世界では、当選回数に加え、それなりの年齢がどうも幅を利かせているらしい。国政に影響力のある若い政治家が、残念ながらなかなか表舞台に出てこない。そうしたことを考えれば、くだんの報道番組が殊更若さを強調している様に聞こえてきたのも、無理からぬところかもしれない。しかし、年寄りの政治家が幅を利かせているこの日本でも、若者が国を大きく動かしていた時代があった。明治維新である。

当時の日本を動かしていたのは、多くが20代の若者であった。それを考えれば、経済が停滞し世界の流れから遅れ始め、しかも為政者がそれを認めながらも的確な手を打てない時には、若者が政治や経済を動かす中心なるのが自然の流れではないのだろうか。そうした時代には、若者の方が年寄りよりも先を見据え、しかも的を射た見識を持っている、とすら思えてくる。若者は、これから迎える自分たちの将来に、年寄り以上に敏感で、しかも真剣に考えざるを得ないからだ。世界が混沌とした時代を迎えているからだろうか、今まさにそうした若者が世界各地で行動を起こし、注目されている。

「逃亡犯条例」の改正案に端を発した香港の大規模抗議デモもその一つだ。当初は広い年齢層が抗議デモに参加していたようだが、今は十代の学生にも広がっているという。北陸中日新聞の9月15日付「サンデー版」によれば、今回の激しい抗議活動は若者らが大規模な抗議活動をした2014年の「雨傘運動」の再来だ、と報じている。同新聞の国際欄に書かれていた「香港の未来は私たちが守る」という女子中学生の決意は、若者たちが抱える香港の将来に対する強い不安を端的に表しているような気がする。年寄りに比べて遥かに長い年月をこの不安な環境に身を置かなければならないのだから、当然と言えば当然だ。

また、若者がこれから長く身を置かなければいけないという意味では、地球温暖化も深刻な問題だ。この解決が極めて難しい難題に、敢然と抗議の声を上げた若者がいる。そして、その声に賛同した多くの若者の抗議行動が、徐々に世界に広がり始めている。

「スウェーデン少女の訴え、広がる共感」(https://this.kiji.is/473309692641248353)と題した、一般社団法人共同通信社のネットニュースがある。そこには、一人のスウェーデン人少女が起こしている、地球温暖化に対する抗議行動の輪が、同世代の若者を中心に世界に広がってきていることを伝えている。勿論、日本にも、である。少女の名をグレタ・トゥンベリさんと言い、進次郎氏より20歳以上も若い、若干16歳だという。

ネットニュースによれば、この16歳の少女が、並み居る大人たちを相手に、2018年12月にポーランドで開かれた「温暖化対策のための気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)」や、今年の1月スイスでの「世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)」、更には欧州連合(EU)の諮問機関「欧州経済社会委員会」で堂々と意見を述べているのだという。凄い少女だ。更に、最新のネットニュースによれば、今月の23日には、国連本部で開かれた「気候行動サミット」で若者を代表して演説までしたという。こうした公の場で、大人たちの無策や遅々として進まない温暖化対策を、舌鋒鋭く非難しているという。この行動力はどうだ。進次郎氏の若さを持ち上げる民放のお歴々には、こうした世界の若者の姿を伝える方に力を注いだ方がスマート、だと思うのだが如何だろう。

このように、世界には見識ある若者がいっぱいいる。今こうした若者の声にしっかりと耳を傾けることができるか、若者の声を政策に反映し登用することができるか、年寄りの度量が試されている。ただ残念ながら、日本の年寄りたちにはその度量があまりあるようには思えない。果たして、トゥンベリさんの様な若者がいたとして、国会議員を前に弁舌する機会を与えられるかどうか、残念ながら、即座に“イエス”と言えないもどかしさがある。


【文責:知取気亭主人】


銀竜草(別名:ユウレイタケ) 銀竜草
(別名:ユウレイタケ)
(写真提供は奥さん)

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