いさぼうネット
賛助会員一覧
こんにちはゲストさん

登録情報変更(パスワード再発行)

  • rss配信いさぼうネット更新情報はこちら
知取気亭主人の四方山話
 

『孫たちの、後期高齢者の世界』

 

2019年10月2日

先月、6人いる一番上の孫が9歳の誕生日を迎えた。これで孫の内訳は、0歳、1歳、2歳、4歳、6歳、9歳が各一人ずつとなった。中にはたまにしか会えない子もいて、人見知り真っ只中で、抱っこする真似だけで泣かれることもある。でも、そうした仕草も含めて堪らない。泣いたり笑ったり甘えたりの全てが、我々高齢者夫婦の元気の源になっている。ありがたい話である。

ところで、私と彼らの年齢差は、60〜70歳ほどある。“凄い”と付けるか、“たかだか”と付けるかはお任せするとして、それだけの年齢差がある。そして、後4年半で私は後期高齢者の仲間入りとなる。西暦で言えば2024年のことだ。私が後期高齢者になったその70年後には、今度は今の孫たち全員が後期高齢者の仲間入りをしていることになる。2093年の暮れには、今一番下の孫が75歳になるのだ。こうして考えると、時々ニュースに登場する、「遥か遠い未来の事」と思われがちな2100年の地球環境予測を、私自身はもうこの世にいないから関係ない、と簡単に切って捨てるわけにはいかない。何せ、可愛い孫たちの将来に関わる問題だからだ。

そんな、孫たち全員が後期高齢者になっている2100年の、ショッキングな近未来予測が、先日発表された。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表したもので、2100年の世界は想定を超える温暖化に依って想定を遥かに超える被害が出る、と警告している。中でも、平均海水面が最大1.1メートルも上昇する、とする予測は衝撃的だ。何せ、今でも海抜ゼロメートル地帯に暮らす人々が、世界中に、そしてこの日本にもたくさんいるからだ。

その国連の発表を報じた9月26日の日経新聞によれば、少し古いが2001年の環境省の調査によると、海面が1メートル上昇すると国内の砂浜面積の9割が消滅するのだという。波打ち際まで車で走れることで知られている石川県の千里浜海岸の砂浜は、ダム建設に伴う砂の供給減とも相まって、私の若い頃と比べ既に半分ほどの幅しかなく、最近では高波で走れない日が増えてきている。2100年を待たずして消滅しそうな勢いだ。このように、1メートルの海面上昇を待つまでもなく、もう既に砂浜消滅の予兆は出始めている。このままいけば、孫たちが子供を育てているであろう2050年代には、海水浴ができる砂浜は全国で数えるしかない、という悲惨な予想もあながち絵空事とは言えない。

また、1メートルも上昇すると、沿岸地域では、今当たり前の様に利用しているインフラが使えない所も出てくる。港湾施設や道路の冠水、下水道の逆流、海水の内陸への浸透による各種設備の腐食等々、海水面上昇に伴う影響は計り知れない。当然、台風などによる高潮や高波被害の危険性も格段に高くなる。先日、千葉県を中心に大きな被害を出した台風ではないが、日本の経済活動の根幹を揺るがしかねない事態が頻発することも懸念される。

そうした事態を未然に防ぐには、温暖化防止対策以外では巨額の対策工事が必要だ。ところが、限られた国家予算の中で必要な対策工事を優先的に行えば、孫たちへの教育や育児に対する投資はなおざりにされかねない。そう考えると、孫子のためには、地球温暖化防止に向けての行動をすぐさま起こさなければならないことは明白だ。国民一人一人の意識改革や行動に加え、政府の強力なリーダーシップが求められている。ただ、実態は…。

少し横道にそれてしまったが、地球規模の被害として、もっと衝撃的な数値が予測されている。勿論日本も含めての話だが、1.1メートルの海面上昇によって、沿岸部にある湿地の2割〜9割が消滅する恐れがあり、浸水被害は100倍〜1千倍に増えるとみているという。以前から指摘されているが、島嶼国の一部には国土が消滅する恐れがある国すらある。こうした人々を含め、高潮や洪水によって、10億人が危機にさらされ、2億8千万人以上が家を失う、とされている。国際連合広報センターの情報によれば、2100年の予想人口は110億人とされている(https://www.unic.or.jp/news_press/info/33789/)から、地球上に住む凡そ10人に一人が危険さらされることになる。凄まじいことだ。

また、海面の温度が急上昇する「海洋熱波」という現象が頻発するようになり、これが生態系に悪影響を及ぼして、魚の収穫量が20〜24%も減る、というショッキングな予測もしている。漁業で生計を立てている人達にとってまさに死活問題だ。しかし、良く考えてみれば、ニシンに始まりウナギやサンマなど、もう既に漁獲量が激減している魚もある。原因は温暖化ばかりではないと思うが、このままいけば、“孫たちの孫”の時代(50年後ぐらいか)には、今食べ馴染んでいる魚も、“幻の魚”と言われるようになるのではないだろうか。さらに言えば、「ユネスコ無形文化遺産」に登録され、我々日本人の誇りとも言える和食も、「もう過去のこと」と言われる時代が意外と早くやって来るかもしれない。

いずれにしても、危機にさらされる10億人という人口は、2100年になって一挙に顕在化するわけではなく、今も既に危険にさらされている人たちがいて、まるで真綿で首を絞めるようにじわりじわりと増えていくことになるのだ。そう考えると、危機にさらされる積算人口は、今後80年間で軽く100億人を超えるのではないかと思う。恐ろしいことだ。

「孫たちの、後期高齢者の世界」が危機的な状況にならないためには、前話で紹介した16歳の少女グレタ・トゥンベリさんの国連での演説に、真摯に耳を傾けるべきだ。「How dare you!(よくもそんなことを!)」、と叱責されないためにも!


【文責:知取気亭主人】


2100年、その頃ヒガンバナはいつ咲いているのだろう?
2100年、その頃ヒガンバナはいつ咲いているのだろう?

Copyright(C) 2002- ISABOU.NET All rights reserved.