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知取気亭主人の四方山話
 

『昔取った杵柄は当てにならない?』

 

2019年12月11日

息子家族と同居を始めて、早いもので一年になる。やってみればどうにかなるだろう、と生来のいい加減さが後押しをして始めたのだが、思った通り何とかなるものである。尤も、そう思っているのは言い出しっぺの私だけかもしれない。一番大変なのは、家事万端を取り仕切り、引退間近と思っていたのに急に一軍復帰を言い渡された家内だろう。それと息子夫婦も、口には出さないが気を使っていることだと思う。私はというと、気を使わない訳ではないが、存外気楽にやらしてもらっている。

しかし、大人数で暮らしていれば、少々の気遣いは致し方ないことで、そんな気遣いよりも得られるものの方が遥かに大きいと思っている。第一に、小さな孫が三人もいることで惹き起こされる日々の泣き笑い騒動が、刺激が少なくなっていた年寄り夫婦に元気を与えてくれている。これは何事にも代えがたい。ただ、毎日よくもこんなに、と感心するほど可愛らしい騒動は惹き起こされる。我々が子育て真っ最中だった頃もこんなんだったかなあ、と正直驚いている。その分脳の刺激にもなっているということで、恐らく、認知症予防に一役も二役も買ってくれているのに違いない。

また、孫たちが見せる仕草に、どれほど癒されることか。9歳、6歳、4歳の孫たちが垣間見せるその可愛らしい仕草は、年寄り夫婦には本当に堪らない。勿論息子夫婦も同じ思いだとは思うが、年寄り夫婦には、自分たちの懐かしい子育て時代を思い出させ、改めて我が子の愛おしさを再確認する切っ掛けにもなっている。そして、その頃の様子を話題にすることで、多少なりとも息子夫婦の子育ての参考になっているのではないか、とちょっぴり先輩気分も味わっている。また、我々年寄り夫婦も(特にほとんど忘れかけていた私にとっては)少しずつ、この一年で小さな子供達への接し方や世話の仕方を思い出し、懐かしさと共に自信も取り戻しつつある。

そう言ったことも含め、息子夫婦にとっても同居は良かったのではないか、と勝手に決めつけている。息子夫婦は、同じ職場で共稼ぎ、しかも二人とも入院施設のある病院勤めの関係上、毎週土日が確実に休めるわけではない。休みは不定期で、同僚とやりくりし合わないといけないのだ。となると、大人の手は多いのに越した事が無い。しかも四人の子育てをしてきた熟練(?)の手ともなれば、願ったり叶ったりではないか、と思っている。要するに、どちらの家族にとっても同居して正解だった、と思っているのだ。

実際、孫を含めた7人全員が、少しずつ同居生活に馴染んできた。我々夫婦も、予想外の動きをすることの多い小さな子たちのペースに、最初の頃は正直戸惑っていたのだが、少しずつ慣れ、今ではかなり予想も付くようになってきている。その当の孫たちはと言えば、同居する前から一週間に一度は一緒にいる時間を作っていたこともあり、あっという間に、大家族の中での生活に馴染んでいった。今ではしっかり子供の特権を生かし、大人の間をサーファー宜しく、時に応じて巧みに甘え回っている。

そんな中、息子夫婦が職場の忘年会で外泊することになり、我々年寄り夫婦に、孫たちの夜の面倒を見るビッグチャンスが巡って来た。“昔取った杵柄”を発揮できる、またとないチャンスである。これで見事杵柄を発揮できれば、我々の自信にもなるし、若夫婦の安心にも繋がるのだ。7日の土曜日、出掛ける者と送る者、お互いにごく普通の挨拶を交わした後、心の中で「任せんかい!」と啖呵を切り、元気良く二人を送り出した。

と、そこまでは自信満々だったのだが、少しずつ自信が削られて行くことになる。夕方食器を片付け、食洗器に入れた。ところが、保育園と学童保育に行っていた下二人の持ち物を、袋から出すのを忘れてしまい、弁当箱1つ、水筒を2つ、洗い忘れてしまった。洗う前に、家内と二人で注意し合っていたのに、このざまだ。まだある。

学童に行っていた真ん中の孫息子が、温水プールに連れて行ってもらった。家内の話によれば、そのことは朝学童に送り出す時から聞いていて、帰ってきたら、プールで使った海水パンツなどの用具一式を水洗いしておくつもりだったという。しかし、夕食の用意や後片付けなどですっかり忘れてしまったという。どうも、“昔取った杵柄”と見栄を張っても、今の我々のルーチンワークの中に孫たちの世話の一部始終が取り込まれている訳ではないから、たまに世話をしようとしても、どうしても見落としやうっかり忘れが多くなる。大したことではないのだが、何となく悔しい。「任せんかい!」と声に出さなくて良かった、と秘かに思っている。

また、体力差もまざまざと痛感させられた。息子夫婦と同じ様に、孫たち3人と一部屋で寝た。私が息子の布団に、家内が嫁と同じ様に下の二人の間に入って川の地になって寝た。しかし、布団に入った途端に、毛布と掛布団の薄さに驚いた。急いで厚手の毛布をもう1枚上から掛けたのだが、案の定、夜中に3度もトイレに起きてしまった。家内の方も同じ様な有様だ。子供たちが寒くはないかと心配になり、帰ってくるなり息子夫婦に聞いてみた。すると、全く寒くはないという。ビックリだ。

俺たちも若い時はそうだったかなあ、と思い返してみたが、今の寒いと感じた状態しか浮かんでこない。どうやら、“昔取った杵柄”は、今のところあまり当てにはならないらしい。杵だけに、木(気)だけは強いのだが…。


【文責:知取気亭主人】


二重の虹(良い事があるかな?)
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