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知取気亭主人の四方山話
 

『アウトブレイク』

 

2020年1月29日

中国湖北省の武漢を中心に、新型コロナウィルスによる新型肺炎の感染が急拡大している。29日の中国政府の発表に依れば、中国国内の肺炎患者は5974人、死者は132人となったという。日本でも7人目の感染者が確認された様に、中国本土ばかりでなく、東南アジアを中心に世界でも患者が増え続けていて、既に17の国と地域で確認されているという。日本では渡航歴のないバス運転手の方の発症例もあるが、その多くは中国からの渡航者とされている。丁度中国は今、旧正月の大型連休中で民族大移動の季節と重なっており、国内での広がりは勿論のこと、中国国外での増加の危険性もまだまだ高い。感染の急拡大を受け、危機感を強めた中国政府は、27日から海外への団体旅行の禁止をした、と報じられている。しかし、14億人もの国民である。いくら監視社会だと言っても、一人一人の行動を制限することなどほぼ不可能だろう。それを考えると、効果のほどは甚だ不透明だ。

中国政府は、海外への団体旅行ばかりでなく、国内の長距離バスの運行停止など、国民の移動制限も強化しているという。また、武漢では公共交通の運行も停止されていて、武漢そのものが隔離状態にあるらしい。まるで、昔見た映画「アウトブレイク」、そのものだ。ただ、過度の反応はしないようにとの専門家の意見も聴こえてくる。その根拠は、致命率が以前流行した新型ウィルスに比べると低いからだという。しかし、実際封鎖状態の武漢に暮らす市民にとっては、「ハイ、そうですか」、と無防備になることも安心しきることもできない。何しろ、低いと言っても普通の風邪よりは遙かに高いからだ。

今回の新型コロナウィルスによる致命率は約3%程度と言われており、以前流行した「サーズ(SARS、重症急性呼吸器症候群、2003年)(※致命率9.6%)」や「マーズ(MERS、中東呼吸器症候群、2012年)(致命率34.4%)」に比べるとかなり低い。とは言うものの、日本で毎年のように流行するインフルエンザ、通常の風邪よりも重篤化しやすいこのインフルエンザの致命率で1%以下だというのだから、これよりはかなり高いことになる。したがって、手放しで安心はできない。その上、感染者の増え方や、早くも100人を超えてしまった死者の急激な増え方に、市民の不安は募るばかりだろう。

※上記の致命率は、厚生労働省「NIID国立感染症研究所」の「IDSC感染症疫学センター」(https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-idsc/2482-2020-01-10-06-50-40/9303-coronavirus.html)に依るものである。

ところで、映画のタイトルにもなったアウトブレイク、ウェブサイトの「看護用語辞典 ナースpedia」(https://www.kango-roo.com/word/11820)には、次のように説明されている。

「アウトブレイク(あうとぶれいく、outbreak)とは、ある限定された領域(国、村、病院内など)の中で、一定期間に予想以上の頻度で疾病が発生することである。一般的に感染症に対して用いる。集団発生やエピデミック(epidemic)と呼ばれることもある。」(原文のまま)

つまりこの説明に当てはめれば、武漢市は明らかなアウトブレイク状態にある。どんな防疫体制が取られているか知る由もないが、人口1100万人の大都市が事実上アウトブレイク状態になっているのだ。日本で言えば、東京が同じような状態になっているのと同じである。東京のことを考えれば、交通網が網の目のように発達した巨大都市では、完全に閉鎖することは不可能に近いのではないかと思う。ましてや動物の行き来は、どうしようもない。

今回は、ウィルスを持ったコウモリを捕食した蛇から人間に感染したのではないか、との情報もある。こうした生きた動物を扱う武漢市の市場が発生源、とみられているらしい。発生源とみられる動物を殺処分したとしても、変異をして人から人への感染ができるようになったとすれば、例え致命率が低くても、悲惨な状況になり得る可能性は高い。

こうした感染症の話題で良く取り上げられるスペイン風邪、今と当時とでは医療の発達は比ぶべくもないないが、高度に発達した現代でも対応を間違えれば同じような大流行を引き起こしかねないことを、肝に銘じておく必要がある。

スペイン風邪は、鳥インフルエンザの一種と考えられていて、人類が遭遇した最初のインフルエンザの大流行(パンデミック)と言われている。流行したのは、1918年から1919年で、丁度第一次世界大戦の末期と重なる。アメリカ合衆国の兵士の間で流行しはじめ、ヨーロッパ戦線を経由して世界へと広がり、全世界で5000万人以上の死者が出たという。良く第一次世界大戦の戦死者よりも多い、と言われる所以である。感染者は6億人とも言われていて、致命率は約8%にもなる。因みに、当時の世界人口は12億人程度と推定され、全人類の半数もの人びとが感染し、約4%もの人が亡くなったことになる。医療技術が今ほど発達していなかった時代とは言え、恐ろしい話である。

(参考:http://tokyoweb.sakura.ne.jp/noyaki/novel/spanish_flu/spanish_flu.html

今の医療技術の発達ぶりを考えれば、そこまでひどい状況になるとは考えにくい。ただ、逆に当時と比べると遥かに世界が狭くなり、人々が当時の国内と同じ様な感覚で世界中を行き来していることを考えると、油断は禁物だ。今回の流行にどんな名前が付くのか分からないが、スペイン風邪の二の舞にならないことを祈るばかりである。


【文責:知取気亭主人】


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