いさぼうネット
賛助会員一覧
こんにちはゲストさん

登録情報変更(パスワード再発行)

  • rss配信いさぼうネット更新情報はこちら
知取気亭主人の四方山話
 

『危機管理』

 

2020年2月5日

前話でも扱った新型コロナウィルスによる感染は、中国必死の対策にも関わらず感染者数は増え続け、終息の兆しさえ見せていない。それどころか、感染拡大の傾向は日を追って顕著になり、2月4日火曜日時点での中国政府の発表によれば、中国国内における新型肺炎の患者は既に2万人を越え、死者は425人に達したという。とうとう、2002年から2003年に掛けて、やはり中国を中心に流行した「サーズ」(SARS:重症急性呼吸器症候群)による中国国内の死者349人を上回ったという。日本でも、ここにきてチャーター便で帰国した人を中心に感染者が急増し、無症状の人も含め20人となったと報道されている。また、2月2日の北陸中日新聞に依れば、中国以外では26の国と地域で感染患者が確認されていて、世界的に見ても徐々に拡大していることが分かる。WHOも堪らず「緊急事態宣言」を出した。

感染拡大は、経済にも大きな影響を与え始めている。中国国内での人々の移動が制限され、諸外国で中国との人の出入りを制限する国が増えるに従い、世界的規模で経済の停滞が顕在化してきた。孤立化し始めた中国国内の景気の落ち込みは言うに及ばず、イギリスのEU離脱の時期とも重なって、新型肺炎の流行は、思わぬところで世界経済のブレーキ役になり始めている。日本国内にも影響が出始めていて、中国人訪日客激減によるインバウンド消費の落ち込みが顕著で、特に観光地では、本来書き入れ時の春節(旧正月)となる筈だったこの時期に、宿泊施設のキャンセルが相次ぎ、閑散としている所もあるという。これまで拡大してきた医薬品などの販売にも冷や水を浴びせているらしい。当然のことながら株式市場も冴えない。

そうした中、日本をはじめとする各国は、武漢に滞在している自国民の退避・救出をし始めた。チャーター機による輸送である。主だったところでは、アメリカ、オーストラリア、フランスなどだ。自国民を守るという意味で、当然の措置だと思う。ただ、チャーター機が自国内に着いてからの対応に違いがあり、そうした対応を通して各国の危機管理の温度差が垣間見えてくる。全ての国の対応が報じられているわけではないが、垣間見えてきたのは、こうした緊急時に対する日本政府の危機管理の甘さである。

例えば、アメリカは一旦アメリカ本土の空軍基地に着陸した後、空軍施設の中で検査を行い、施設の中で2週間は様子を見るのだという。各自帰宅できるのはその後だ。オーストラリアは、オーストラリア大陸から北西に1500キロ離れたインド洋のクリスマス島に移動させて検査を実施し、島内の隔離施設にやはり2週間とどまらせて様子を見るという。また、フランスでは、二次感染を避けるため、症状のない退避者も14日間隔離されるという。では日本はというと、これが何とも歯がゆい対応だったのだ。

報道されているので皆さんご承知のことと思うが、最低限必要だと思われる検査さえ拒否出来て、直ぐに帰宅が許可されたケースがある。2月3日時点で第三便まで実施されたチャーター便うちの第一便だけだとは思うが、それまで武漢にいて感染している可能性もあるのにも拘わらず、人込みの中にすぐさま入っていけて(言い方を変えれば、放出されて)しまったのだ。日本政府には、潜伏期間を考慮して不自由だが暫く隔離をする、などの対策に強制力を持たせる考えは当初なかったらしい。実際に検査を拒否した2名の公衆道徳の欠如にもビックリだが、それを許可してしまう政府の危機意識の低さにもビックリだ。それを聞いたとき、丁度食事中だったが、思わず声を荒げてしまった。

また、1日の日本経済新聞によれば、第一陣の時には相部屋もあったそうで、そうした甘さの結果だけではないだろうが、2月3日の時点で、中国本土以外では最多となる20人もの人に感染者が出てしまっている。中国との人の行き来が多いこともあって、日本を始め中国近隣のアジア諸国に感染者が多いのは至極当然なことだと思うのだが、ヨーロッパではアジアを一括りにして汚染域と見なす人達も出始めているという。そうしたことも影響しているのだろう、中国からばかりでなく、海外からのインバウンド客も激減しているらしい。日本も安全ではなくアジア圏への渡航は差し控える、という風潮が広がっているのだろう。逆に、日本人の海外渡航も自粛ムードになってきているのだとは思うが…。

こうしたことが長引けば、日本経済に与える影響は計り知れない。いつ終息宣言が出されるのか、日本にとっては、桜の季節までに出されないと、春の観光シーズンも閑散としたものになってしまうだろう。更に長引けば、期待されているオリンピックによる景気浮揚も絵に描いた餅になりかねない。したがって、これ以上の拡大を防ぐことは至上命令だと言って良い。それは各国にも言えることで、そういった意味では、アメリカやオーストラリア、或いはフランスなど、最初から厳格な対応をしている国々に比べると、日本のその甘さが何とも歯がゆくてならない。

確かに、大騒ぎするほどの事はない、との声も聞こえては来る。しかし、東日本大震災で学んだように、最悪の事態を想定して“正しく恐れる”ことは絶対に必要だ。そして、日本政府が2020年の今年、外国人観光客による4000万人の訪日と8兆円の消費を目標値として発表していることを考えれば、「日本は安全である」と思ってもらえることが最低限の条件となる。そういう意味でも“正しく恐れる”必要があるのだ。今からでも遅くはない。しっかりとした危機管理をやってもらいたいものである。


【文責:知取気亭主人】


梅の花が散る頃までには終息してほしいものである(2020年2月2日、金沢市内にて)
梅の花が散る頃までには終息してほしいものである
(2020年2月2日、金沢市内にて)

Copyright(C) 2002- ISABOU.NET All rights reserved.