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知取気亭主人の四方山話
 

『蛇に睨まれた蛙?』

 

2020年5月27日

定期報告の様になってしまっているが、今回も米ジョンズ・ホプキンス大学の集計結果をまず見てみることにする。日本時間27日午前3時の時点で、世界の感染者数は554万人を超え、死者数は35万人に迫る勢いだ(NHK NEWS WEB)。これから夏を迎える欧米諸国には減少傾向も見られるが、冬を迎える南半球、特に南米での感染拡大が激しさを増していて、今やブラジルはアメリカについで世界で2番目に多い感染者数となった。そうした情報を聞くと、明日は我が身、最近感染者数に減少傾向が見られる日本だが、冬を迎える頃に再び大流行が始まるのだろうな、と半年先のことが心配になって来る。

しかも、減少傾向にあるとはいえ、まだ終息宣言が出された訳ではなく、手放しで安心していられる状態ではない。今暫くは3密を避け不要不急の外出を自粛する、そんな窮屈な生活が求められている。先々週の15日に緊急事態宣言が解除された石川県も同じで、コロナ前には観光客で賑わっていた金沢市内も、外出自粛の影響をもろに受け閑散としている。観光の目玉の一つである兼六園も4月21日以来休園していて、観光客減少に拍車を掛けている。静かなものである。

その兼六園に、明治時代に建てられた日本武尊 (ヤマトタケル) 像がある。大学に入りたての頃、同じ大学に入っていた高校の先輩が金沢市内を案内してくれた折、その銅像にまつわる面白い話をしてくれた。その先輩曰く、この像は日本で最初に建てられた銅像だが、ユニークなのは銅像の下に積み上げられた石積みで、セメントを使わずに自然石を積み上げているだけなのに地震に見舞われても一向に崩れない、と言う。「それには謂れがある」と説明してくれたのが、次の“三すくみ”の話である。

それは、正面の大石を囲むように蛇・蛙・蛞蝓(ナメクジ)に見立てた3つの石を配置していて、これらの石がまるで生命を宿しているかのように、3匹が互いに“三すくみ”の状態で身動きが取れない、即ち“地震でも動けないでいる”、と言うのだ。蛇は蛙を、蛙は蛞蝓を食べ、蛞蝓は蛇を溶かす粘液を出すため、3匹は互いに牽制し続ける状態になる、と実しやかな説明をしてくれた。自然界における蛇と蛙の関係は良く知っていたが、蛞蝓が蛇を溶かす粘液を出す、という説明には正直ビックリだった。

しかし、実際その“三すくみ”が成り立つのかどうかは、確認してはいない。ただ、人間の世界で言うところの三権分立とよく似た仕組みだな、と感心した記憶は残っている。入試の直後だっただけに、苦手な分野の記憶も多少は残っていたのだろう、三権分立をこの“三すくみ”に見立てるとは、我ながら上手いことを思いついたものだと、自画自賛したのを昨日のことの様に覚えている。

知っての通り、三権は立法権、行政権、司法権を指し、立法権は国会が、行政権は内閣が、司法権は最高裁判所が担い、お互いを監視し合うシステムになっている。こう書けば、蛇、蛙、蛞蝓の“三すくみ”の話とよく似ていることが分かる。ところが、“三すくみ”になっている筈のその三権分立が脅かされるのではないか、とメディアを賑わしている問題がある。東京高検の黒川検事長を検事総長にしたいが為に定年延長を盛り込んだ、と言われる検察庁法改正問題だ。

この問題に関し、ツイッターなどで抗議の声が上がり、「#検察庁法改正案に抗議します」の投稿が爆発的に広がった、と報道されている。時の政権に対し、多くの人がこうした方法で意思表示をしたのは初めてだと思う。そうした大きなうねりに押され、結局改正案は成立を見送られ継続審議となったのだが、この黒川氏、緊急事態宣言中に新聞記者らと賭けマージャンに興じていたとスクープされた為、急転直下辞任に追い込まれてしまった。何ともお粗末な話で幕引きを迎えようとしている。

ところで、この検察という組織、本来は行政機関のひとつであり、内閣と検察の関係は、形式上は「三権分立」の問題ではないという。しかし、日本では、検察は裁判所へ審判を申し立てる権利(公訴権)を独占していて、起訴・不起訴の裁量ができ、一旦起訴すれば殆どを有罪に出来ていることから、事実上司法判断を支配している、と捉えられているらしい。そうしたことから、準司法とも呼ばれ、司法と検察を一体と捉える考え方があるという。ロッキード事件で田中角栄元首相が東京地検特捜部に逮捕起訴された歴史などを見ると、内閣とは一定の距離を置いていて、逆に司法に極めて近いというのは頷ける。

となると、くだんの検察庁法改正問題、行政たる内閣を蛇に、司法に近い検察を蛙に見立て、今回の一件が仮に内閣の思い通りに事が運んだとすれば、頼りの“三すくみ”は崩れ、“蛇に睨まれた蛙”状態になってしまっていたのではないか、と心配するのも理解できる。尤も、森友問題で公文書を改ざんしていた財務省の職員に対し、検察審査会で「不起訴不当」の議決を出されたにも拘らず「不起訴処分」としたことを考えれば、既にそうした状態になってしまっているのかもしれない。もしそうだとすれば、蛇は、本来は天敵である筈の蛞蝓のことを全く意に介していないことになる。それも嘆かわしい話である。

なお、森友問題に関する検察の動きや判断については、当事者の籠池泰典氏と文筆業の赤澤竜也氏の共著「国策不捜査『森友事件』の全容」(文芸春秋、2020)に詳しい。タイトルもセンセーショナルだが、内容も負けず劣らず、である。もし本の内容が真実だとしたら、「蛇に睨まれた蛙状態はかなり深刻だ」ということになるが、さて、どうなんだろう?


【文責:知取気亭主人】


復活の日 「国策不捜査」
「森友事件」の全貌

【著者】 籠池泰典 赤澤竜也
【出版社】 文藝春秋
【発行年月】 2020/02/13
【ISBN】 978-4163911762
【頁】 488ページ
【定価】 1,700円 + 税

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