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知取気亭主人の四方山話
 

『切手の消える日』

 

2020年6月17日

今回も、ジョンズ・ホプキンス大学の新型コロナウイルス感染者集計データのチェックからスタートしよう。日本時間6月17日午前3時時点で、世界の感染者数は808万人を超え、死者数は44万人に迫る勢いだ(NHK NEWS WEB)。遡っての修正も含めた数字だが、感染者数は先週から凡そ90万人、死者が約3万人増えたことになる。感染者数の増加が比較的落ち着きを見せている日本に住んでいると、何となく“峠は越えた”と思いがちだが、世界的に見るととんでもない誤解だと分かる。世界では未だに増え続けているし、中国の様に一旦終息するかに見えたのに再び増加傾向を示す国もある。我々は、まだまだ油断は禁物、を肝に銘じなければいけない。

肝に銘じなければいけないのは、そればかりではない。このコロナ禍によって気付かされた、これまで常識と思っていた生活や仕事のやり方がどうやらそうとばかり言えないこと、を素直に認め、その知り得た新たなやり方を学び、取り入れていくこともそうだ。それが、これから度々襲ってくるであろう、同じような災難に備えることに繋がることにもなる。またそうしなければ、日本は世界の中で益々ガラパゴス化してしまう。特に、今回のコロナ禍によって明らかとなった行政サービスのIT化の遅れは耳を疑うばかりで、今後集中して取り組まなければならない課題であることは、言を俟たないだろう。

例えば、暫く前にメディアにも取り上げられやり玉に挙がった、感染者数の集計に未だにFAXが欠かせないツールになっていた東京都の例などを耳にすると、「効率化」や「生産性」など、民間では常識になっているカイゼン運動が、行政では全く行われていないのではないか、と疑いたくなってしまう。EXCELファイルで集計して電子メールに添付すれば、一瞬にして同じデータを共有できる。FAXに比べれば、極僅かな手間と暇で済む。今回のような非常事態にこそ威力を発揮するのに、である。

また、国の行政が肝に銘じておかなければならない事もある。コロナ禍のような非常事態には、国民目線でスピード感をもって対策や支援をすることだ。しかし、これまでの施策を見ると、首を傾げたくなることばかりが目立つ。日本経済新聞の特集記事『検証コロナ 危うい統治』(6月9日〜13日の5回シリーズ、朝刊)にも書かれていたが、世界に比べると、その実行スピードの遅さは際立ってくる。新聞やテレビなどで度々取り上げられていて、多くの国民が知ることとなってしまったこの課題、一体何が阻害原因となっているのだろうか。先の検証記事の副タイトルに、その原因が端的に言い表されている。

6月9日にスタートしたシリーズ1回目の副タイトルは、『組織防衛優先、危機対応阻む』、続く2回目は『デジタル化阻む既得権』、3回目は『つぎはぎ行政のつけ』、4回目は『変わらぬ政官の聖域』、そしてシリーズ最後の5回目が『未完の官邸主導』とある。記事を読んでいるからかもしれないが、全てが“言い得て妙”、だと思えてしまう。組織防衛や既得権益を守ろうとするあまり、変化を受け入れられない行政組織になってしまっている、とシリーズ記事は指摘している。

そうした、組織防衛や既得権益を守ろうとする姿勢は行政ばかりではない。民間も同じだ。例えば、国民の利益よりも既得権益を守ろうとする姿勢は、「中抜き」だと野党から追及されている持続化給付金の事務委託費問題にも見て取れる。一般社団法人 サービスデザイン推進協議会が“受注”し、“下請け”として電通に再委託、電通は子会社5社に“孫請け”として発注し、その子会社は“曾孫受け”に協議会の設立メンバーであるパソナ、大日本印刷、トランス・コスモスなどを使っている。まるで、身内だけで事業を回している様に見える。

ところが驚くなかれ、重層下請けの構図はそれに留まらず、更にその下の“玄孫受け”まであるらしい。この“玄孫受け”を通して申請を繰り返しても“なしのつぶて”になっているとの、申請者の悲痛な声も報道されている。この非常時だ。多くの困窮者に素早く支援が行き届くようにすべきだし、事務費は極力抑え、支援に回る真水の部分を増やすべきだ。ところが、“曾孫受け”でもパソナのような大企業がやっていけるとなると、名前の出ている法人にとってこの事業は濡れ手に粟の事業だったのではないか、と疑いたくもなる。もしそうだとしたら、「救済事業に群がるハゲタカ」と言ってやりたいが、さて実態はどうなんだろう?

最後は、電子メールについてである。民間では、今回のコロナ禍で仕事のやり方が見直され始めている。テレワークが広まり、顔を合わせての打ち合わせも自粛して、テレビ会議や電子メールのやり取りで済ませるケースが増えた。東京都のFAX問題でも書いたが、(既にそうあるべきなのだが)これからは今以上に電子メールでの情報のやり取りが増えることは確実だ。スピード、情報量の多さ、痕跡を残せること、情報共有のやりやすさなど、手紙や電話にはない便利さがそこにはある。仕事、特に行政に携わる人たちは、情報のやり取りには電子メールが最早必需品であることを肝に銘じるべきだ。いつまでも、できない、苦手、では済まされない。

かつて連絡手段として使われていたポケベルやテレックスは、今ではすっかりスマートフォンや電子メールに取って代わられている。年賀状や季節の便りを除けば、手紙のやり取りも随分と減った。今はハンコ文化の見直しまで始まっている。いずれFAXが過去のものとなり、切手が消え、文字の伝達手段として電子メールだけが残る時代が来る、そうした未来予想図は意外と近いかもしれない。


【文責:知取気亭主人】


夏椿(沙羅の木(しゃらのき))
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