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知取気亭主人の四方山話
 

『窮屈な誕生会』

 

2020年7月29日

4連休となった25日の土曜日、久しぶりに金沢市内が賑わいを見せていた。東山茶屋街の近くを車で通った時のことだ。“コロナ前”とまではいかないものの、5月の大型連休の時には見られなかった多くの観光客が、久しぶりの旅行を満喫するかのように、楽し気に歩いていた。来る方も迎える方も恐らく“こわごわ”だとは思うが、和服姿で散策する人もいて、少しだけ金沢の日常が戻ってきたような感じがする。先週の22日から始まった「GO TOトラベル」キャンペーンによる人出なのはほぼ間違いない。

キャンペーンの影響は他の県内観光地にも表れていて、ネットニュースによれば、金沢市の近江町市場も輪島市の朝市も、移動自粛をしていたキャンペーン前より遥かに多くの人出となっていたらしい。大打撃を被っている観光を生業としている人たちにとっては、多少なりとも恵みの人出になったに違いない。ただ、そうした観光地で働く人たちも、感染拡大のリスクも承知していて、複雑な思いを持っていることも報じられている。偽らざる心境だと思う。「コロナは怖い、でもお客さんが来てくれないと生活が成り立たない」、そんな“痛し痒し”の複雑な思いが、観光地の本音だろう。

それは、里帰りを思い悩んでいる子供世代にも通じている。「帰りたい、でも新型コロナウイルスを持って行ってうつしてしまうかもしれない」や、逆に感染者数の多い地域への里帰りでは「ウイルスを持ち帰ってしまうかもしれない」の不安が、どうしても付きまとう。更に、施設に高齢者が入っている家族や、小さな子がいる家庭では、そんな不安や葛藤が一層強い。施設によっては面会できない所もあるとも聞いていて、端から行くに行けない人たちもいるのだ。しかし、親子の情はそんなコロナ禍でも断ち難く、無理をしてでも何とかしたい、と思い行動するものである。

我が家には7月生まれが3人いて、例年、まとめて誕生会を開いている。今年もそのつもりでいたのだが、「23日からの連休に帰省する」と言ってきた長女の電話で、1人増え4人を祝う誕生会に拡大することになった。長女夫婦の子供(私たち夫婦にとっては孫娘)が丁度連休中の25日に2歳の誕生日を迎えるから、「誕生会に混ぜてほしい」と言うのだ。暫く会っていないこともあり二つ返事でOKはしたものの、近くに住む次男家族も入れたら、大人数になってしまう。三密のうちの密閉は何とかなるとして、密集、密接は避けることはできそうもない。何しろ、大人が9人、小学生が2人と乳幼児が4人の、合わせて15人が一堂に会するのだから凄い。道中での感染リスクの不安もある。ただ、幸いなことに、集まる家族の親全員が、新型コロナに関する感染予防意識がかなり高い。次女を除けば、家族の中に必ず医療従事者がいるからだ。

同居している息子夫婦は二人とも、安曇野に住む長女家族では長女が、金沢に住む次男家族では嫁が、それぞれ医療従事者なのだ。当然、危機意識は高い。長女の話だと、勤めている病院では家族以外との会食は禁止されていて、同規模の他の病院ではそうした業務命令は出されていない病院もあるというから、危機管理はしっかりしている勤め先だと言える。そうした情報は当然相方にも伝えられ、危機感も一緒に伝わる筈である。加えて、婿殿は個人事業主ということもあって、時々話す電話口でもその意識の高さが伝わってくる。酒が飲めないから夜の街に出歩くこともなく、感染リスクは低い。

『携帯用の消毒液と除菌シートも用意して、トイレ休憩以外立ち寄らないようにするし、そのトイレ休憩もなるべく混み合っていない所を選びながら金沢に行く』と言ってきた。そして、『金沢駅も近江町市場も人出が多いだろうから行くつもりがないし、今回土産は買わない』とも言ってきた。感染したらどんな困難が待ち受けるか、ちゃんと想像できているのが伝わってくる。これなら迎える方も安心感がある。

ということで、参加人数15人による4人合同誕生会を、にぎにぎしく開催した。と言っても、4人のうち2人は大人だから、話題はもっぱら新型コロナに関する情報交換ばかりだ。自分たちの職場の状況や対応が中心だが、中には家内の実家近くで感染者が出た時の騒動など、とにかくコロナの話題は尽きない。手作りケーキが飾られプレゼントの交換があったのと、2歳の孫娘の愛らしい笑顔で、何とか今日が誕生会だということを思い出させてくれるが、そうでなければまるで井戸端会議である。

しかも、折角の4連休だというのに、前述の近江町市場や金沢駅は勿論、子供たちが喜ぶ動物園や水族館にも行かなかった。外食にも出ず、兼六園にも連れて行ってない。人混みを避けたのだ。結局出かけたのは、三密とは全く縁のない海岸と少しの買い物だけだった。リスク回避という面では上出来だったと思っているが、少々窮屈であったことは否めない。

自分の行動に制約を期すというのは、窮屈でそんなに続けられるものではない。特に、三密になり易い都会暮らしの人たちや忍従に縁遠い若者にとっては、結構きついと思う。そう考えると、このキャンペーンに賛否両論あることは承知しているが、自粛解禁も無理からぬことだったのかもしれない。ただ、感染者が増えることは覚悟しなければいけない。と言うよりは、今回は、増えることを承知の上でのキャンペーンなのではないだろうか。終息の予兆すらない世界の感染者状況を見ていると、そう思わざるを得ない。

いつものジョンズ・ホプキンス大学のまとめによると、日本時間の7月29日午前3時現在、世界の感染者数は1654万人を、死者数は65万人を超えた(NHK NEWS WEB)。このコロナ騒動は、世の中を変えるきっかけにはなっているのだろうが、余りにも代償が大きい。ワクチンや特効薬を手に入れるまで、私たちは窮屈な生活に耐えられるのだろうか?

【文責:知取気亭主人】


独占できた海岸での砂遊び
独占できた海岸での砂遊び

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