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知取気亭主人の四方山話
 

『破天荒』

 

2020年8月26日

毎週日曜日に届けられる新聞に、僅か8ページの薄い「日曜版」が一緒に入ってくる。その「日曜版」に、「間違い探し」や「数独」、「迷路」など、パズルだけのページがある。子供でも楽しめるものもあって、パズル好きな妻ばかりでなく、一番上の孫娘も毎週楽しみにしている。その数あるパズルの中に、定番の「クロスワードパズル」もあって、妻が大層気に入っている。“妻ご用達”と言って良いほど、毎週ハマっている。他のパズルに比べて、知識をフル動員する必要があり、楽しみも大きいということなのだろう。私はというと、私が手にする前に取り掛かってしまうため、ほぼ蚊帳の外である。

ただ、解答に自信が持てない時や、解答が思い付かない時だけの様だが、隣にいると突然振られることがある。そんな時は、ほぼ休眠状態の脳を一気にフル回転させなければならない。ところが、私の返答を期待している様ではあるのだが、錆びついた脳がフル回転できるまでに時間が掛かるのと、例え回転したとしても語彙の引き出しに鍵が掛かってしまっていることが多く、私が回答する前に殆ど自問自答してしまっている。だから、実のところは殆ど役に立っていないのだが、何故だか、「クロスワードパズル」にだけは時々参加させられている。23日の日曜版も、参加要請があったのだが…。

この四方山話を書くにあたって調べてみると、くだんの「クロスワードパズル」は、「タテノカギ」が16、「ヨコノカギ」が20の、ごく普通のパズルであった。そんなに複雑でもなさそうだ。ところが、私の隣で一心不乱に取り組んでいた妻が、何気なく、さり気なく、『ねぇ〜、“今まで誰もしなかったことをすること”って破天荒かな?』と聞いてきた。例によって、パズルへの誘いが始まった。私の理解している意味と違うので、『違うんじゃないかな』と答え、あれこれ語彙の引き出しにチャレンジしてみるのだが、適当なものが引き出せない。

そうこうしているうちに、他のワードとの組み合わせから辿り着いたのだろう、『やっぱり破天荒よ!』と、確信した口調で言ってきた。『そうかなぁ?』と言いながら、スマートフォンで調べてみた。するとどうだろう、私の理解していたのが間違いで、妻の解答の方が正解だったのだ。正確を期すため、手元にある『故事ことわざ慣用句辞典』(三省堂、1999)の説明文を転載してみる。

『今まで誰もやらなかったことをすること。「荒」は、作物のできない荒れ地。今まで人材が出たことがない地方から初めて人材が出た時。天荒を破ったと言われた。』(原文のまま)

「ヨコノカギ」の設問通りの説明だ。ところがこれまでの私は、「大胆不敵」とか「無茶なことをする」との意味合いに解釈していて、「破天荒な奴」だとか「破天荒な人生」などと使っていた。あまり良い意味としては理解していなかったのだ。こうした間違った使い方は私だけではないらしく、文化庁の『平成20年度 国語に関する世論調査』(以後、『世論調査』)によると、本来の意味の「誰も成し得なかったことをする」と答えた人は僅か約17%で、一方私と同じように「豪快で大胆な様子」と間違えて答えたのは約64%もいたという。
(https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/h20/)

64%もいたという仲間の多さに多少安堵の気持ちが無い訳ではないが、冷静に考えてみると、学んだと思われる高校ぐらいから今まで半世紀以上も間違った解釈をしていたことになるわけで、もう少しで鬼籍に入ろうかというこの歳まで知らなかったとは、何とも恥ずかしい限りである。ところが、『世論調査』をつぶさに読んでみると、勘違いしていたのはこの言葉ばかりではないことにも気付かされた。お蔭で、浅学菲才を思い知らされたのと同時に、新たな学びに喜びも感じている。

『世論調査』では、五つの言葉を挙げて,どの意味で使っているかを尋ね、その結果を報告している。「破天荒」の他には、「時を分かたず」「手をこまねく」「御の字」「敷居が高い」の4つである。どれも耳にしたことがある言葉ばかりである。さて、その気になる調査結果だが、五つの言葉すべてにおいて,本来の意味ではない方が多く選択されたという。私はというと、「さすがに大体わかるぞ」と思いながら読み進んでいくと、驚いたことに、私も「破天荒」の他にもう一つ、「時を分かたず」の意味を取り違えていたのに気が付いた。

本来の意味は、「いつも」だというのだが、私は「すぐに」と理解していた。本来の意味を知った後でよく考えれば、時間を分けない、言い換えれば“分断しない”のだから、「いつも」の意味が導かれるのが妥当だと分かる。しかし、私と同じように「すぐに」と答えた人が6割台半ばもいて、「いつも」と正答した人は僅か1割台半ばであったという。その数字を見て少々安堵したのだが、「分からない」と答えた人も多かったらしく、五つのうちで最も多い14.7%もあったという。そんな結果を知ると、「時を分かたず」は“絶滅危惧日本語表現”に分類されるのではないか、と心配になってくる。「いつも」とは少し違うニュアンスも含まれているような気がしているのだが…。

ところで、皆さんも気になるのではなかろうか。解答は上記のアドレスの『世論調査』で確認できるので、是非チャレンジしてみていただきたい。我慢我慢の自粛生活に少しは楽しみが増えますぞ!

さて、いつものジョンズ・ホプキンス大学の集計データだが、日本時間の8月26日午前3時現在、世界の感染者数は2372万人を、死者数は81万人を超えたという(NHK NEWS WEB)。「ピークは越えた」との声も聞こえ始めてはいるが…。

【文責:知取気亭主人】


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