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知取気亭主人の四方山話
 

『失われゆく季節感』

 

2020年9月9日

先週から今週の月曜日(7日)に掛けて、台風9号、台風10が立て続けに、沖縄や奄美など島嶼地域や九州地方を暴風域に巻き込んで北上し、これらの地域を中心に大きな被害が出ている。この二つの台風の特徴は、何といっても日本近海(フィリピンの東海域)で発生したことだろう。二つとも、これまで日本を襲った多くの台風の様に、遥か南方海域で発生して時間を掛けて日本に向け北上してくる、といった通常のパターンを取っていない。その原因は、ニュースでも度々報じられている様に、日本近海の海面水温が、台風を発生させ、その後もエネルギーを供給して成長させるほど、高温になっているからだ。

海水と大地とを比べると、海水の方が温まりにくく、冷めにくい。したがって、一旦海水が温まってしまうと、海に囲まれた日本の様な島国は、気温の高い状態が長く続くことになる。9月5日の日本経済新聞(以下、日経)によれば、日本近海の海面水温は30℃を超えているという。それを聞けば、これほど暑い日が連日続いても不思議はない。9月3日には、雪国のイメージが強い新潟県の三条市で40.0℃が観測され、驚きをもって伝えられた。9月としては日本国内で初めて40℃を記録したことになるらしい。台風9号に向かって吹き込む風によるフェーン現象らしいが、三条ばかりでなく、9月に入っても各地で記録的な暑さが続いている。「水温は9月下旬まで高い見通しだ」というからさもありなん、である。

「高い見通し記事」が掲載されていた9月2日の日経に、「東日本 最も暑い8月に」との記事が大きく載った。それによると、東日本の8月の平均気温は1946年の統計開始以降で最高を記録したという。記事は、日本を北日本、東日本、西日本、沖縄・奄美の4地域に大きく区分けした場合の情報だ。金沢もNHKの天気予報では東日本に含まれるから、恐らく似たような傾向にはなっているだろう、ということで気象庁のデータを調べてみた。それが表-1だ。これを見ると、確かに今年は平年値より1.9度も高いことが分かる。しかし、これだけでは過去最高だったかは分からない。そこでもう少し詳しく調べ、グラフにしたのが図-1だ。

元データをよく見てみると、金沢の場合、今から10年前の2010年に29.3℃の最高気温を記録していることが分かる。したがって、金沢においては、記事にあるように、今年の8月がこれまでで最も暑い平均気温だった訳ではない。また、1985年にも28.9℃と今年と同じ平均気温を記録している。ただ、だからと言って記事に難癖を付けているのではない。図-1を見ても明らかなように、8月の平均気温が近年上昇してきているのは疑いの余地がないことだ。恐らく、今すぐ地球温暖化防止対策に有効な手を打たなければ、気温は上がり続けることになり、金沢の夏の日平均気温は30℃を超し、日最高気温は連日40℃を超す、そんな地獄のような日が日常化するのもそんなに遠い話ではない、そんな風に思えてくる。だとすると、今でも私の季節感は既に狂い始めているのに、この先どうなってしまうのだろう。

暦の上では、後2週間もすると秋の彼岸がやってくる。「暑さ寒さも彼岸まで」と昔の人は、気象に関して生活感あふれる言葉を残している。しかし、こう暑いと、これからはそうした先人の知恵も役に立ちそうもない。子供の頃(半世紀以上も前の事だが)に肌で感じた季節感を、もう味わうことはできそうもない。季節感に大事な動植物のあり様も、この暑さで様変わりし始めている。子供の頃ならもうとっくに聞こえていい筈のヒグラシの鳴き声は、いまだに聞こえてこない。まだ夏だ、と判断しているのだろう。動物は敏感だ。

季節感と言えば、9月上旬から10月上旬にかけては、本来なら中秋の名月が楽しめる季節の到来だ(今年は10月1日が旧暦8月の十五夜)。縁側にお団子とススキを飾り、凛とした空気の中で満月を楽しむ、そんな風情のある景色を想像できるのも、秋らしい爽やかな風が体に心地良いからだ。しかし、熱帯夜が続いていては、秋の気配どころではない。「十三夜」「待宵」「十五夜」「十六夜」など、風情のある呼び名も季節感あってこそ、なのだが…。

さて、最後にジョンズ・ホプキンス大学集計による新型コロナウイルスの感染状況を記載しておく。日本時間9月9日午前3時の時点で、世界の感染者数は2,740万人を超え、死者数は89万人を超えた(NHK NEWS WEB)。進化の知恵なのだろうか、人間の持つ正常バイアスが働き始めたらしく、そんな数字にも驚かなくなってきている。そんな自分が恐ろしい。

【文責:知取気亭主人】


9月3日夕方(18時20分頃)の東の空
9月3日夕方(18時20分頃)の東の空
同日同時刻の西の空
同日同時刻の西の空

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