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知取気亭主人の四方山話
 

『はんこ文化は生き残るか』

 

2020年10月7日

皆さんは、10月1日が何の日かご存じだろうか。「雑学ネタ帳」なるサイトで調べたところによれば(https://zatsuneta.com/category/anniversary10.html)、あるわあるわ、「中秋の名月」から始まって、「国際高齢者デー」、「国際音楽の日」、「コーヒーの日」等々、数えてみると何と50を超す記念日が紹介されている。「裏ビックリマンの日」とか「まずい棒の日」など、何の記念日だかサッパリ分からないのもあるが、そんな中に交じって、「印章の日」というのがある。いわゆる「はんこの記念日」である。

「はんこ屋さん21」のホームページにある「はんこのなるほど歴史館」と名付けられたコンテンツ(https://www.hanko21.co.jp/mame_c_hanko/in_rekishi.html#:~:text)にも、10月1日は「印章記念日」である、と明記されている。そのホームページの内容を一部転用させてもらうと、明治6年10月1日に、明治新政府が書類の内容を認証する手段として「本人が自書して実印を押すべし。自書の出来ない者は代筆させても良いが本人の実印を押すべし。」と定めたことを記念して、10月1日を「印章記念日」としているのだという。

しかし、当該コンテンツを読んで驚いた。はんこのルーツはてっきり中国だと思っていたのに、印そのものはメソポタミアが発祥で、はんこを認証の手段として使う制度の始まりも中国ではなく西洋だという。日本に残っている最古の印だと思われる、「漢委奴国王」と刻まれた金印が、漢の光武帝から与えられたとされていることから、はんこはてっきり中国が発祥だと思っていたのだ。もう一つ驚いたことがある。メソポタミアにルーツを辿ることができる印だが、日本の縄文時代に当たる遥か昔、紀元前7000年も前から使用されていたというのだ。はんこは、2020年の今も日本では確固たる地位を保持していて、メソポタミアから数えれば都合9000年もの長い間、どこかの国で、何らかの形で使われ続けていることになる。その伝統ある“はんこ文化”が、今デジタル化の波に飲み込まれようとしている。

菅新政権の目玉政策である「行政機構のDX(Digital Transformation)」を推し進める上で、最初に俎上に上がって来た感があるのが、はんこの廃止である。日本全体を考えれば今は天文学的な数の書類にはんこが押されているが、その多くは、はんこでなくても別な認証手段で事足りるのではないか、と見られている。実際、河野太郎行政改革・規制改革相は、9月30日の自身のツイッターで、全府省に要請したはんこの廃止について、「大半は廃止できそうだ」と明らかにしたという。私もそう思う。

考えてみれば、我々の身の回りでも廃止できそうな書類はいっぱいある。三文判などの認印で済む書類は殆ど廃止できると思われるし、逆に認証方法を変えることによって、却ってなりすまし防止効果が高まる場合もあり得るような気もする。いずれにしても、法務局に登録している実印を必要とする書類以外は、さほど混乱することなくはんこ以外で代替することが可能だろう。銀行の預金通帳に使われている銀行印も、いずれ“廃止のうねり”が大きく湧き上がってくると思う。それは、意外と早くやってくるような気がしている。そうすると、懸念されるのが“はんこ文化”の存続である。今と比べて衰退することはやむを得ないとして、その文化が全く途絶えてしまうのは、何とももったいない気がする。どうすれば、生き残っていけるだろうか?はんこ素人の私ではあるが、僭越ながら考えてみた。

私には、義母が姓名判断をした上で買ってくれた実印、銀行印、認印の三点セットの他に、30年近く前に香港で彫ってもらった蔵書印がある。この蔵書印は、三点セットの様に、他人に「内容を確認しました」とか「この種類の記述に間違いはありません」などを認証するものではない。良く本を読んでいた時に、既読の覚えとして、裏表紙に押印していたものだ。正に印(しるし)として使っていた。結構味わいがあって、これはという本には今も押している。この蔵書印の様に、自分の持ち物だとか、自分の作品であることを表す印として、特徴あるはんこを持つことはありではないか、と思っている。

また、知り合いの外国人に、当て字の漢字を使ってはんこを作り、帰国の時に贈って喜ばれたことがある。恐らく、はんこ文化のない外国人ならば、はんこにこうした工芸品としての価値も見出だしてくれるのではないだろうか。この時、使用した漢字など日本語の意味と、全体としてこんな事を言い表しているなどの説明書きを書き加えれば、唯一無二の土産になって喜ばれること請け合いだ。加えて、朱肉もセットにして、朱の色の「めでたい色で魔よけの意味を持つ」などを書き添えれば、より購買意欲が湧くのではないだろうか。

こうして書いてくると、結局、以前この四方山話(第539話)で取り上げた篆刻(てんこく)印に行きついてしまう。篆刻印は乱暴に言うとサインの代わりとなるもので、我々が日常使っているはんことは趣を異にしているが、その特徴から、工芸品としても自分の所有物や作品の印としても、生き残っていける魅力があると思う。しかし、その一方で、日常使っている名字だけのはんこなどは、やがて使われなくなるだろう。そう考えると、はんこ文化としてはサインとしての篆刻印や一部の実印が残るのみ、となってしまうような気がしている。言い換えれば、伝統工芸として生き残る道だ。他の伝統工芸に見られるように先細りしないためにも、今のうちから、世界に打って出る、そんな広い視点が求められている。

さて、いつものジョンズ・ホプキンス大学集計による感染状況を記載しておく。日本時間10月7日午前3時の時点で、世界の感染者数は3,560万人を、死者数は104万人を超えた(NHK NEWS WEB)。感染拡大の勢いは全く衰えていないというのに、トランプ大統領のパフォーマンスには呆れてしまった。ここが踏ん張りどころだというのに…。

【文責:知取気亭主人】


ヤブラン
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