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知取気亭主人の四方山話
 

『似た名前なのに値段が!』

 

2020年12月9日

今のシーズン、本州の日本海側はズワイガニ漁の真っ盛りだ。金沢の台所と言われる近江町市場に行くと、ズワイガニがずらりと並び、戻りつつある多くの観光客や地元客が、足を止めて品定めをしている。このズワイガニ、地域によって呼び方を変えながら差別化に知恵を絞り、ブランド化に余念がない。山陰だと松葉ガニ、福井だと越前ガニ、石川も負けじと数年前から加能ガニと呼ぶようになり、基準を満たしたものには加能ガニのタグを付け販売している。こうしたタグの付いたカニは、大きくて立派なものばかりで、値段も高いものだと一杯1万円以上する。カニ大好きな妻もさすがに手が出ない。買い求める人の多くは観光客か、企業のお歳暮用なのだろう。

手が出せるとすれば、雌だ。金沢の地元では香箱ガニと呼んでいる(セコガニとかセイコガニと呼ぶ地域もある)。雄に比べて小さく、食べ出が無いように見える。ところが、小さな頃から食べつけている地元の人に言わせると、腹に抱えた外子(卵)や内子(卵巣らしい)が絶品で、『食べるんだったら雄ではなく香箱ガニ』と言ってはばからない。しかし、家内も私もズワイガニには縁遠い静岡出身だということもあり、これまでは見た目の大きさに惹かれ、『食べるんだったら雄』と決め込んでいた。50年以上金沢に住んでいるが、香箱ガニはついぞ食べた事が無かった。ところが、金沢おでんの「カニ面」が話題になり、雄では無理だが雌なら何とか手が出せる値段であることも手伝って、昨年初めて買い求めてみた。すると、意外と妻にも子供たちにも好評であった。

しかし、この香箱ガニでさえ、気軽には買えなくなってきている。海が荒れて漁が少ないこともあったらしいが、5日の土曜日の近江町市場では、脚がまともに揃い大きなやつだと、一杯で2千円以上もしている。家族が多い我が家では、買うには勇気がいる。漁が少ない上に、ブランド力も影響しているらしい。市場の店主が、『福井が強すぎて(恐らくブランド力があって)、福井に流れて仕舞い(福井に水揚げされて)、金沢には回ってこない』と、誰に言うでもなしに大きな声を張り上げていた。『もう入ってこない!』とも叫んでいた。やはり高値で取引される市場に回ってしまうらしい。結果的に金沢市場も品薄になって高値になってしまう、そんな悪循環に陥り高値になっているのだろうか。いずれにせよ、買うとすれば10杯近くになってしまう我が家には、脚が2、3本とれた訳ありガニが精々である。

カニの事ばかり書いたが、特にカニを買いに行ったわけではない。ただ、店先に並んでいるのを見ると、妻の大好物なだけに、ついつい目が行ってしまう。実は、近江町市場に行ったお目当は、煮炊き用のサワラのブロックだ。カニに目を奪われながら、そのサワラがないか何軒か見て回っていると、とある店で、妻が近江町市場ではめったに出回らない紅ズワイガニが売られているのに気が付いた。子供が小さかった頃、仕事帰りに富山県の朝日町でよく買ってきたカニだ。ズワイガニとよく似た姿形をしているのだが、“紅”と付くだけで値段は一桁違う。とにかく安いのだ。当時(昭和50年代後半〜60年代)は、5〜6百円でも結構食べ出のあるのが買えた。

静岡出身の我々には、“ズワイ”が付いているだけに同じように思えたものだが、富山出身の会社の仲間は、『別名“ズッポガニ”と呼ぶんだ』と言い、ズワイガニよりも格下に見ている風がある。確かに、ズワイガニに比べると水気が多く身の入りが少ないこともあって、脚の両端を折り、片方に口を付けて勢い良く吸うと、スポと身が口の中に飛び込んでくる。恐らくその状況を指しているのだろう。しかし、身入りは良くないが、甘い。恐らく“紅”が付いていないやつよりも甘い。しかも、殻が薄くズワイガニより簡単に折れて食べやすい。静岡出身の我々には、この紅ズワイガニで十分だ。近年は朝日町近くの「魚の駅生地」にも行ってみているのだが、昔買っていた時よりは2、3倍高くなったような気がしている。それでも、ズワイガニに比べれば懐には優しい値段だ。妻が目ざとく見つけた品の値札も、よくよく見ると一杯700円しない。脚が取れているものが多く、大きさも不揃いだが、妻の眼鏡には叶ったらしい。

しかし、似たような名前なのに、どうしてこんなに値段が違うのだろうか。紅が付く方がより深海に生息していて、漁の手間も掛かる筈なのに、安い。恐らく身の入り方の違いによる人気の低さだと思われるが、だとしても一桁も違うと、高い方のズワイガニは、いずれ庶民の食卓から消えてしまうのではないかとさえ思えてくる。私と同世代の地元の人に聞くと、子どもの頃はおやつ代わりに香箱ガニを食べていたという。バケツで売りに来ていたともいう。今は想像すらできない。漁獲量が減ったのだ。

石川県水産総合センターの「漁獲統計資料」のグラフからは、2010年頃には600トン近くあったものが、2019年には200トン近くまで激減していることが読み取れる。この先が恐ろしい(http://www.pref.ishikawa.jp/suisan/center/sigenbu.files/opendata/top.html)。もっとも、それは当然の結果でもある。漁の期間が短い(今年は11月6日〜12月29日)とはいえ、母ガニを取ってしまうのだから(雄は11月6日〜翌年の3月20日)。資源を回復させるには、2〜3年、香箱ガニを禁漁にするくらいの英断が必要なのではないだろうか。

最後に、いつものジョンズ・ホプキンス大学集計による感染状況を記載しておく。日本時間12月9日午前3時の時点で、感染者数は6,787万人を、死者数は155万人を超えた(NHK NEWS WEB)。

【文責:知取気亭主人】


ズワイガニ比べて紅い、裏返すと一目瞭然で違いが分かる
ズワイガニ比べて紅い、裏返すと一目瞭然で違いが分かる

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