2021年1月20日
前話(912話)で書いたように、9〜11日の三連休は、ここ金沢も大雪に見舞われ、雪を捨てる場所に大変苦労した。それは我が家周辺ばかりでなく、同じ市内でも比較的雪の少ない会社の辺りも同様で、11日の連休最後の日、「駐車場の2割ほどが除雪した雪で山となり使えなくなってしまったから、出来る人はテレワークするように」との連絡が入った。結局、私も12、13日とテレワークをすることにした。昨年の春にも経験しており、特段気掛かりはなかったのだが、いざやってみると、4月、5月の時との違いに驚かされてしまった。驚かされたのは、我が家の屋根の断熱性能の悪さである。
私のテレワーク場は二階の寝室にある。義父伝来の机にモニターを置き、ほぼ毎週の日、月、火の夜には、この四方山話を書くために机に向かっている。したがって、一年を通して室温の状態はよく承知していたつもりだ。エアコンを点ければ冬であっても寒さを感じることは滅多になかったのだが、今回のテレワークでは、屋根にたっぷりと雪が積もっていたせいか、エアコンを点けてもなかなか暖かくならない。今これを書き始めている17日の夕方のエアコンの効き方と全く違うのだ。17日現在、屋根に雪は全くない。大きな違いはそれだけだ。したがって、暖かくならないのは、恐らく屋根に積もった雪の冷気が部屋に伝わってきていたからだと思う。屋根の断熱性能の悪さから来ているのに違いない。
我が家の屋根はスレート葺で、瓦に比べて断熱効果に劣るとは聞いているが、屋根雪のあるなしでこんなに違うとは思わなかった。また、30年近く前に建てているから、屋根裏に施した断熱材の性能も劣っていたのかもしれない。いずれにしても、今回の大雪で、思わぬ形で、屋根の断熱性能の悪さを再確認させられてしまった。「もっと冬暖かくて夏涼しい屋根はないものか」と独り言を言いかけて、思い出したことがある。元旦の北陸中日新聞朝刊(以下、新聞)に載っていた茅葺き屋根の記事について調べた事だ。
その記事によれば、全国に三軒しか残っていないとされる“笹葺き”の古民家が、我が石川県の七尾市にあって、しかも三軒のうち人が住んでいるのは七尾市だけだという。その貴重な古民家の屋根のふき替えを2003年に行ったことだとか、ふき替えの技術を引き継いでいくために今年の夏にふき替えの体験講座を計画していることなどが、記事には書かれている。そうしたことにも興味はそそられたが、私が注目したのは、「笹葺き」という文言だ。
瓦やトタン、或いは我が家の様なスレート以外では、ワラや樹木の皮、木の板、それと茅、これらが屋根材として使われいることは知っていたが、笹で屋根を葺いていたとは、全く知らなかったからだ。暑い国ではバナナの葉を屋根材に使う地域もあるから、笹の利用もあり得ることだとは思うが、初めて聞いた。そしてもう一つ、身近な植物を使って屋根を葺くことを「茅葺き」と書いている事にも驚いた。“植物を使った屋根の総称”と言うのだ。てっきり、“茅”という植物で葺いた屋根を「茅葺」と呼ぶ、とばかり思っていたのだが、どうやら違うらしい。腑に落ちない。そこで、早速調べてみた。
『旺文社 国語辞典 第八版』(旺文社、1992)で「茅」を引くと、「ちがや・すすき・すげなどの総称」と書かれている。“茅”という植物が無いというのは、本当らしい。では、“茅葺”が指すのは新聞記事の通り、植物で葺いた屋根の総称なのだろうか。そこで、インターネットでも調べてみた。辿り着いたのは、茅葺のふき替え工事を専門とする、「かやぶき工舎」という会社のサイトだ(http://www.kayabuki.info/)。そこのコンテンツ「かやぶきの基礎知識」には、はっきりと「茅とは屋根を葺く草の総称のことで、茅という植物はありません」と書かれている(原文のまま)。そして、材料としては、すすき、よし、ちがや等のイネ科の“多年草”が使われると書いてある。“植物”とは書いていない。植物には樹木も含まれるから、新聞記事とは違う。前出の国語辞典にも、「かやで屋根をふくこと。また、その屋根」と書かれているから、新聞記事の方が勇み足だったのだろう。
ところで、二階の寒さを感じながら思い出したのは、この事ばかりではない。むしろ、茅葺きの優れた機能の方である。「かやぶきの基礎知識」の中の小項目「茅葺きのはたらき」には、その機能を次のように表現している。
『現代のあらゆる建築材料と技術をもってしても茅葺きの持つ断熱性・保温性・雨仕舞・通気性・吸音性を兼ね備えた屋根をつくりあげることは並大抵ではありません』(原文のまま)
つまり、高断熱性の屋根だということである。しかし、そんなに優れた屋根にも拘らず、今では古民家でしか見られなくなってしまった。燃えやすいという最大の弱点を克服できなかったからなのだろう。しかし、今の技術で難燃処理を施せば、再び日の目を見ることが出来るのではないだろうか。自然由来でSDGsの考え方にも合致する。また、静かだからか、茅葺屋根の家だと会話も弾み、団欒にはもってこいだ。40年ほど前に泊まった五箇山の民宿がそうだった。囲炉裏を囲んで飲んだ酒も、美味かったなぁ〜!
さて最後に、いつものジョンズ・ホプキンス大学による新型コロナウイルスの感染状況の集計結果を記載しておく。世界の感染状況は、日本時間1月20日午前3時の時点で、感染者数は9,577万人を超え、死者数は205万人に迫っている(NHK NEWS WEB)。今日(20日)は、二十四節季の一つ、大寒だという。今の寒さや雪に堪えたら春の到来と共に感染拡大は終息に向かう、そうなってくれれば良いのだが…。
【文責:知取気亭主人】
お隣の屋根だけど、積もった雪はこんな感じ
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